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10.08 爆弾の雨

「死んでしまいそう」
友達からDMがきました。

「僕もそうだ、一緒だね。」と返しました。
大丈夫だよなんて言えなかった。  

最近はなんだか忙しくて、
夜更かしな僕が夜更かしさえもできず、
脳みそを停止させたまま目の前のことを片付けていくそんな毎日でした。

家で自分の作ったものを食べていても全然お腹がいっぱいにならなくて、仕事終わりにインドカレー屋に逃げ込みました。

時計は22時を過ぎた頃で、客は僕一人でした。

ラストオーダー直前にもかかわらず、微笑みながらお水やらお手拭きやらラッシーを運んでくれるお店の人。

バターたっぷりのカレーとナンを夢中で食べてお店を出たら、数時間前の僕とは何か違っていて、生き返ったようでした。

久しぶりに心からお腹がいっぱいだと感じました。

カレーの香りがまだ髪に残る帰り道、
スパイスの香りのするあのバンドの曲を聴いて帰りました。

「何もかも満たされた夜ほど眠れなくなる」

まさにその言葉の通りで、僕は久しぶりに夜更かしをしました。いつもの僕に戻りました。


僕は最近ずっとあのアルバムを聴いています。

このあいだのスーパーの帰り道、
手荷物の一番上に乗せた真っ赤な豚肉を見ていたら、僕はこうして他の命を食べてまで生きている意味はあるのだろうかとふと思いました。

僕はあのアルバムが好きです。
とても気持ちが良よくなります。
けれど、たまにあちら側にひっぱられてしまうのです。

「生きてる意味のかけらさえも見出せない」

彼はこのアルバムを発表した数日後に、河に飛び降りました。

今日、ベッドの上で彼のライブ配信を観ました。

あれから7年経った今日も彼はどうにか生きています。

まだあのウィルスが現れる直前のことです。
僕は初めてブルーライトに遮られずに彼を目にしました。

あんなにキラキラした人を僕は観たことがありませんでした。

僕は最近思うのです。

自分の闇をちゃんと知っている人は綺麗だと。

僕に死んでしまいそうだと言った彼女は美しいです。

あいつらのために死ぬくらないなら、自分のために生きようと僕は彼女に言いました。

得体の知れないあいつらは、いつも僕たちを襲います。

「爆弾の雨は降る」

戦場にいたって、家の隅で静かに体育座りをしていたって、爆弾の雨は降りそそぐのです。


僕の友達が死にたいと呟いた。
僕の好きなそのバンドのその人が死を試みた。
僕の家のテレビがあの人が死んだと知らせた。
僕の手の中のこの本が死に方を教えた。


爆弾の雨が降り注ぐこの世界で、
それでもこうして僕たちは意味もわからないまま今夜もまた明日のために眠りにつくのです。




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