「星」を見て、あなたは何を連想する?子どもの発想力を心底羨ましいと思ったハナシ
突然だが、夜空に煌めく“星”を見て、あなたなら何を連想する?
天の川?
流れ星?
宇宙人?
プラネタリウム?
夏の大三角?
オリオン座?
……ある程度年齢を重ねた大人が“星”と聞いて思い浮かべる言葉は、当然のことながら“星にまつわる何か”に限定されてしまう。
ところがどうだ、先日5歳の長男と一緒に、夕暮れ時に犬の散歩に出かけたときのこと。うっすらと暗くなってきた空に、申し訳ない程度にちらちらと輝く星を見て、息子はこう言ったのだ。
「おかあさん、あのお星さま、コロッケの味だったらいいねえ」
私は息子のこの言葉を聞いて、子どもの自由な発想力にひどく感心した。
“星”と“コロッケ”。がっっっちがちに凝り固まった私の思考力と発想力では、星とコロッケは何をどう転んでも、絶対に結びつかない。というかそもそも、“星を喰らう”という発想を展開することが無理だ。恐らく私だけではなく、多くの大人がそうなのではないだろうか?
そして息子は続けて私にこう問いかけた。
「おかあさんは、お星さまがどんな味だったらうれしい?」
(お、いいパスがきたぞ。私だって言葉を扱うライターとして、何年も仕事をしているのだ。息子に負けないくらい“いい感じ”の答えを出して、息子を盛り上げてやるぞ。えーと、えーと、星……星の味……えーと……)
脳内でそんなことをぐるぐると考えながら、私が捻り出した答えはこうだ。
「お母さんは、お星さまが唐揚げの味だったら嬉しいかなあ」
……いけない。完全に、コロッケにつられている。自分の発想力を信じたかったが、どう考えても揚げ物繋がりで導き出された答えだ。何のオリジナリティもない、つまらない回答。
息子の問いに答えてすぐ、1人でこっそり始まるプチ反省会。
そして息子は続けてこう言う。
「からあげもいいねえ!ぼくはねえ、あとはお星さまが、いちごとかめろんとか、いろんな味のあめだったらいいなあ。おかあさんもそう思わない?」
(!!!次は飴と来たか……!確かに、お星様って何か小粒で飴みたいに見えなくもない。また息子がナイスパスがくれたから、今度こそ母ちゃんもイケてるお返事するよ!見てて息子!!)
「おー!飴!!いいね!!確かにお星様って、金平糖と形似てるし、飴っぽいよね!!」
……今思い返しても、驚くほどイケてない回答をしてしまった。息子の何でもありの柔軟な発想力から導き出された“飴”というワードを、私は結局星の形に関連づけて“金平糖っぽい”なんて、“星”と”飴”に無駄な繋がりを見出してしまった。
私のバチくそにイマイチな回答を耳にしても、息子は「なんじゃそれえ〜〜」なんてケタケタ笑っていたけれど、この一連のやりとりをして、私は子どもの豊かで自由すぎる発想力を心底羨ましいと思った。
というのも、最近ではライターとして比較的自由度の高い記事を書かさせていただく機会が増えてきたが、"常識"やら”当たり前"に囚われ過ぎな私の頭は「もっといい表現がしたい」「もっと斬新な言葉で、この魅力を伝えたい」と思っても、”コレ!!”という言葉がなかなか出てこないのだ。
人を惹き込むような魅力的な文章は、やはり書き手の豊かな感性や思考がしっかりと反映されているものが多い。だから私も、最近ではそんな文章を書けるよう、日々試行錯誤を重ねている最中なのだ。
しかし、今回の息子とのやりとりを通して、私は自分の発想力や思考力の凝り固まり具合をひどく痛感することとなった。
「自由な発想に触れたい」「オリジナリティのある表現を勉強したい」そう感じたときは、1人で謎のプチ反省会をするよりも、子どもとたくさん会話をした方がよさそうだ。
息子と一緒に愛犬のうんこを拾いながら、何だかとっても大切なことに気がつけた、そんな散歩時間だった。
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