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【ASDって何?】


ASDとは?


・自閉スペクトラム症と言って、英語でAutism(自閉症)Spectrum(スペクトラム) Disorder(障害)の略です。

・コミュニケーション、対人関係の困難があり、強いこだわりや限られた興味を持つ特徴があります。

・スペクトラムとは、連続しているという意味で、ASDには、自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群などが含まれます。

・ASDは、注意欠如、多動症のADHDと同じく、子供の頃から症状が現れるが、最近では大人になってから診断を受けるケースが増えています。

・子供の頃から症状があっても、言語障害がないので、知的能力も平均以上の場合が多く、逆に普通の子供より優秀だと評価を受けて育つことが多いのが特徴。

・そのため、大人になってから周囲と馴染めず、健全なコミュニケーションが困難になり診断を受けて発覚するケースが多いです。

ASDのコミュニケーションの特徴


・ASDの人のコミュニケーションの特徴は「相手の立場に立って考えることが苦手」です。

・相手との距離感が掴めず、不用意な発言をすることで、誤解や困難を招きやすい。

・ASDの人は「言葉を文字通り解釈する」「想像力が乏しい」という特徴があるので、言葉のニュアンスや相手の表情から状況を察することが難しく、社交辞令や冗談が通じない。

・「適当に」「もう少し」「多めに」など、日常や仕事でよく使われる、幅のある曖昧な表現を受けての判断や対応が難しい。

・ASDの人は「あと30分以内」「15部印刷」など、はっきりとした表現や数字がないと理解ができない傾向があります。

強いこだわりによる困難


・ASDの特徴である「強いこだわり」「限られた興味」からトラブルが多く発生します。

・興味の対象が限定的で、好きなことには仕事を忘れて没頭するという特徴があるのでゲームに熱中すると仕事をしなくなる人もいます。

・強いこだわりから、臨機応変に対応できず「融通が効かない」と思われることもあります。

ASDの二次的な症状


・引きこもり
・うつ病
・パニック障害
・対人恐怖症

ASDの人は、その特性から、周りに「配慮がない」「空気が読めない」と思われてしまうことがあります。

結果として、職場などで孤立してしまうことが多く、それが原因で二次的な症状を伴うこともあります。

伴いやすい症状として、人間関係で孤立する状況などから、「引きこもり」や「うつ病」につながることがあります。

また、ASDの人は不安や恐怖に敏感なため、強いストレスを受けやすく、「パニック障害」や「対人恐怖症」などを伴うことがあります。

ASDとADHDを併せ持つケース


・ASDとADHDを併せ持つというケースもよくあります。

・ADHDの「注意欠如・多動」という特徴は、ASDとはかなり違うものに見えますが、実際の診療の場面においては、ADHDとASDの症状が似ていることがあります。

・例えば、感情のコントロールが難しいことや衝動性などが、似ている特徴として挙げられます。

・また、アメリカの研究では、成人のASDの59%がADHDの診断基準を満たすという結果もあります。

・両者の区分が難しいケースもありますが、適切に対応するためには、慎重に区分し、見極めることが大切です。

ASDが輝ける場所は必ず見つかる


・ASDの治療に有効とされる薬は、現時点ではありません。そのため、本人の思考や行動パターンを変え、行動を改善することが治療の中心になります。

・特に、社会の中で生きていくためのソーシャルスキルの習得などが重要です。

・そのため、これから就職を目指す人や、既に仕事をしている人のために、それぞれの目標に合った専門のグループケアなどを行っている医療機関などもあります。

・また、全国のハローワークや、障害者職業センター、発達障害者支援センターなどでは、発達障害の特性に合った職業相談・就職支援を行っています。

・自分の特性をよく理解し、不得手な場面での対処法を身につけることで、ASDの「こだわり」や「興味のあることに打ち込む」という面がプラスに働くこともあります。

・ルールやマニュアルがしっかりしている職種(経理・法務など)、または数字や論理で対応できる職種(プログラマーなど)は、ASDの特性にフィットする可能性が高い仕事です。

・自分の得手・不得手なことを見極め、就きたい職業を具体的に検討してみてください。

ASDを改善するには?


・ASD(自閉スペクトラム症)の子どもから大人まで、どの世代でも有効なのが環境調整です。

・環境調整とは、その人の特性に合わせた物理的な工夫や周囲の協力によって、家や職場で困りごとが生じにくくなるように環境を整えることです

・見通しがつきやすくする
・視覚的にわかりやすくする
・苦手な刺激を減らす

・苦手な状況を減らしたり、スムーズに行動しやすいように環境を整えたり、困りごとや症状が出にくいよう工夫することが大切です。

・ASDの症状や困りごとにはカウンセリングや心理療法も用いられます。

・成人期に合併しやすい二次障害(うつ・不安障害、不安症など)には、認知行動療法が特に有効だと言われています。

・自分の考え方や行動のくせを把握し、それを整えることで仕事や生活でのストレスを減らしていく方法です。

ASDの症状と治療、対処法


人間関係やコミュニケーションでの困りごと

ASD(自閉スペクトラム症)の人の中には、コミュニケーションや人間関係が苦手で、それが生活や仕事に影響する人もいます。

ひとくちに人間関係やコミュニケーションの困りごとと言っても、その内容は一人ひとり違います。そのため診療やカウンセリングでは、まず詳しい状況を伝えます。

そのうえで一人ひとりの特性や状況に合わせた環境調整、自分の人間関係やコミュニケーションについての考え方や行動のくせを整える認知行動療法、ロールプレイ等で望ましいふるまいを学ぶソーシャルスキルトレーニングなどの改善方法を検討します。

具体的な困りごと

・話しが止まらず長時間話し続ける
・話している時に相手の目を見るのが苦手
・口頭での指示だと理解にズレが生じる
・頻繁に確認し過ぎて「なぜ何度も聞くのか」と言われる

対処法

・具体的な困りごとが出たら、どうすればうまくいくかを考えてみましょう。

・ポイントは無理をせず、できる範囲の小さな工夫や環境調整からスタートすることです。

・そうやって練習しながら成功体験を積むと、不安も少なくなっていくはずです。

自分でできる対処の例

・相手の目ではなく首元あたりを見るようにする
・口頭でのやり取りではなく、メールやチャットなど文字でのやり取りを増やす
・何度も聞かなくても確認できるようにメモを取る

また周りの人に自分の特性や苦手なことを伝え、うまくいく方法を共有したり協力を依頼したりすることも重要です。

特にASD(自閉スペクトラム症)の特性は「変わった人」「コミュニケーションが取りづらい」という印象を持たれる可能性もあるため、正しく理解してもらうことが重要なのです。

周囲の人への伝え方の例

「あやふやなことがあると不安なので、こまめに確認させてください」

「具体的な指示をいただけると理解にズレがなく仕事が進めやすいです」

「話が長引いていることに気づきづらいので、遠慮なく声をかけてください」

こだわりに関する困りごと

ASD(自閉スペクトラム症)の人の多くは、決まった手順を守ることが得意な一方で変化が苦手な面があります。

その特性が困りごとに繋がっているなら、環境を調整したり、認知行動療法などで考え方や行動のくせを見直し、うまくいく方法を練習します。

変化によって強い不安やパニックが起きるなら医師に伝えましょう。和らげる薬が処方される場合があります。

具体的な困りごと

・作業の進行がマイペースで、求められるペースに合わない
・自分のやり方や価値観にこだわって業務に影響が出る
・新しいことに取り組むのが苦手
・作業の優先順位をつけるのが苦手
・急な予定変更に臨機応変な対応ができず、パニックになる

対処法

ASD(自閉スペクトラム症)の人は、物事の全体像を客観的に把握してから作業の優先順位を決め、段取りを行うことが苦手な場合が多いと言えます。

また臨機応変な対応や相手に合わせたスピードが求められる作業が苦手なこともあります。

相手には求められていない自分なりのこだわりが作業スピードに影響することもあります。

仕事の場面では自分での工夫はもちろん、可能な範囲で同僚や上司に自分の特性や得意不得意を伝え、環境や業務の調整、解決方法の検討などのサポートを得ることも効果的です。

・作業をリストアップしてパターン化する
・優先順位をつける(自分で付けられない場合は他人につけてもらう)
・期日までに間に合いそうになければ、前もって相談する
・変更はできるだけ早めに伝えてもらい、予定を組み直す時間をもらう
・何をしていいかわからない時に相談できる人を見つけておく

環境に関する困りごと

ASD(自閉スペクトラム症)の症状の一つとして見られる感覚過敏や感覚鈍麻も、職場や日常生活での困りごとを引き起こしがちです。

ほとんどの人には問題ない蛍光灯の光やBGM、環境音、匂いなどが、感覚過敏のある人には耐えがたいほどの苦痛に感じられることもあるのです。

感覚が非常に過敏な人はストレスから頭痛などの身体症状が現れることもあるので、刺激を軽減する工夫をしましょう。

具体的な困りごと

・職場の照明が眩しすぎる
・職場の匂いで体調が悪くなる
・周りの音が気になって集中できない
・触覚過敏によって、声かけで肩を叩かれるなどで強い不快感が生じる

対処法

まずは苦手な刺激を避けたり減らしたりする環境調整を試しましょう。

感覚の過敏性について専門家に相談して一緒に方法や環境を整えていく方法もあります。

感覚の特性は多くの人には理解しづらいものです。

理解と協力を依頼するためにもきちんと説明するといいでしょう。

・イヤーマフやノイズキャンセリングイヤホン、サングラスなど苦手な刺激を減らす道具を使う(職場などでの装着の許可を得る)

・光や音、匂いなどが気にならないようデスクの配置を変えたりパーテーションや衝立を活用したりする

・可能な範囲で照明の種類を変える、明るさを調整する

・周囲に急に体に触らないよう伝える

精神的な症状がある場合

二次障害としての精神疾患が合併している、抑うつが強い、イライラする、不安を感じやすくパニックになるなどの症状には、それぞれに応じた薬が処方されることもあります。

またカウンセリングや認知行動療法などでイライラやパニックになるパターンを考えて、きっかけとなる場面や刺激を減らす、イライラやパニックへの対処法を試すなどの方法もあります。

ASD(自閉スペクトラム症)のコミュニケーションやこだわりの特性は仕事に影響することもあるため、悩んでいる人も少なくありません。

しかし本人や周囲の人がASD(自閉スペクトラム症)の特性を理解して工夫や支援をすることで、困りごとを減らしつつ長所を生かして働くことも可能です。

ASDに合った働き方


自分に合った働き方を考える

長く働き続けるには、自分に適した職種や働き方を選ぶことが大切です。

まずは「得意」「苦手」といった自分の特性をよく知る必要があります。

自分の得意や興味関心を生かせる職種を選ぶと働きやすくなるでしょう。

また「強みを生かせる環境」「困りごとが生じない環境」も大切です。

合わない環境で無理を続けると、不安症やうつなどの二次障害のリスクが高まります。

また感覚過敏や疲れやすさ、過集中がある人は、職場の環境や勤務時間の長さ、十分な休憩が取れるかなどにも着目しましょう。

工夫を重ねてもうまくいかない、周囲の協力が得られない・得ても解決できないこともあります。

もしそういう状況で働くことが辛いなら、仕事の内容や働き方が自分に合っているか、一度立ち止まって考えてもいいかもしれません。

配慮や理解の得られやすい環境で働く

一緒に働く人に自分の特性や症状を伝えることで、働きやすくなったり困難が軽減されたりすることもあります。

障害について職場に伝える働き方をオープン就労、伝えない働き方をクローズ就労と言います。

それぞれにメリット・デメリットがあるので、自分がどう働きたいかをよく考えて伝えるかどうかを決めると良いでしょう。

職場にASD(自閉スペクトラム症)を伝えるときは、伝える範囲や内容、伝え方をよく検討しましょう。

障害者雇用制度を利用して働く

ASD(自閉スペクトラム症)の人が障害者手帳を取得すると、障害者雇用制度も利用できます。

障害への理解を得やすい職場を探しやすくなる、特性への配慮を受けながら働きやすくなる場合も多いようです。

特例子会社など求人自体の選択肢が増えることもあります。

障害者雇用の求人はハローワークで探せるほか、障害者雇用専門の求人紹介サービスもあります。

自分の合う求人の紹介や就職活動のサポートが期待できるので、選択肢の一つとして検討してみましょう。

就労支援制度を活用する

働くためのスキルが不安という場合には、就労支援の活用を検討してみましょう。

障害者手帳がなくても、ASD(自閉スペクトラム症)の診断や自立支援医療の受給などで申請できます。

多くの事業所では事前相談や見学、体験利用が可能です。

全国の就労支援事業所はLITALICO仕事ナビから検索できます。

就労移行支援

2年以内の期間で就職までの一連の流れをサポートします。

ビジネスマナーや職業スキルだけでなく、自分の特性の理解、人間関係やコミュニケーションのスキル獲得、一人ひとりのASD(自閉スペクトラム症)の特性にあった求人選び、面接や履歴書対策といった就職活動のサポート、就職後の相談などが受けられます。

事業所によって様々な特色があるので、一度足を運んでみると良いでしょう。

就労継続支援

一般就労が難しい方や、就労移行支援を利用したものの就職に結びつかなかった方が利用できる福祉的就労サービスです。

事業所での職業訓練や企業から受託された作業活動などを通じ、働くために必要な知識や能力を高めて一般就労をめざします。

事業所で行われた生産作業に対しては報酬も支払われます。就労移行支援と比べると、長い時間をかけて働く準備ができます。

就労継続支援事業所にはA型とB型の2種類があり、事業所によって作業内容は異なります。

ASDの特性を理解し、困りごとを減らす


ASD(自閉スペクトラム症)は特性の組み合わせや強さ、合併症の有無などによって症状や困りごとの現れ方に個人差があります。

現在のところASD(自閉スペクトラム症)自体の治療法はありませんが、症状や困りごとを減らすことはできます。

自分の特性をよく理解し、自分に合った環境を作ったり苦手をカバーする対処法を見つけましょう。

大人になってから仕事などで課題に直面し、対処に悩んで診断に至る方も少なくなくありません。

一人では解決が難しい場合には、周囲の人の協力や専門家のサポートを得ることも重要です。

困ったらぜひ医療機関、発達障害者支援センターや就労支援などの支援機関に相談してみてください。

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