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今日も明日も英文解釈日和

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完璧な英文解釈などといったものは存在しない。完璧な誤訳が存在しないようにね。 (英文解釈の魅力を紹介している記事や、大修館書店発行の月刊『英語教育』に掲載されている、「英文解釈…
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#英語教育

おーい磯野、英文解釈しようぜ。 〜英文解釈(演習室)の魅力〜

英文解釈には癒しがある。 私を優しく赦す希望の光がある。 まず初めに、これはアスクの狼さんの以下のnote記事 https://note.com/askpub/n/nd750f52447c8 ブチギレチワワさんのブログ記事 https://anokoro-yokatta.hatenablog.com/entry/2022/01/30/155905 を受けての記事です。 大修館書店「英語教育」偶数月号に連載されている「英文解釈演習室」がアツい。課題文をそれぞれに訳し

英文解釈演習室2023年6月号

【訳文】ペンネーム I am a cat.  ジョー・バイデンには喪服が似合う。先日ベストセラーとなった自伝『約束してくれないか、父さん』で彼は次のように述べている。「何年も前から気がついていました。私自身もつらい記憶が生々しく蘇ります。それでも私がそばにいると、予期せぬ形で大切な人を突然亡くし悲しみに打ちひしがれている方々は、必ずといってよいほどほっとされます。……私が遺族のみなさんにおかけする言葉は、私たちに共通する経験から語っているのだとわかってくださるのです」バイデ

「英文解釈(演習室)」の魅力

「英文解釈演習室」とは大修館書店『英語教育』誌の偶数号には、筒井正明先生ご担当の「英文解釈演習室」というコーナーがある。筒井先生による「お題」が出され、その全訳を提出すると、次次号(次の偶数号)で番付表に乗せてもらえるというもの。最優秀と思しき投稿訳は、「お手本」として冒頭に載せていただくという栄誉に浴することとなる。なお、「デビュー間もない者が初のA+を取った」場合には、それが優先的に「お手本」扱いになるという意見もあり、必ずしも「お手本」が「横綱」ではないのかもしれない。

英文解釈演習室2023年4月号

【訳文】ペンネーム I am a cat.  その朝、小賢しいけれど深い洞察力には欠けるジム・サムスが、いやな感じの夢から目が覚めて気がつくと、巨大な化け物に変身してしまっていた。ずいぶん長いあいだ(あまり好きではない)仰向けの姿勢のまま、遠くの足、欠損した手足を愕然と見つめた。たったの4本――当然だ――しかも自由に動かない。すでに郷愁を感じつつある本来の褐色の短い脚であれば、先が見えないながらも空中で陽気に踊っていただろうに。じたばたするなよ、気を引き締めてジムはじっと横

英文解釈演習室2023年2月号

【訳文】ペンネーム I am a cat.  今とにかく何かが(たとえ何であれ)起こっているのは、まことに奇妙である。はじめは無の状態から、まずビッグバンが起き、そして今我々はみなここに存在する。なんと不可思議なことか!  シェリングの提起した由々しき問題「なぜ無ではなく有が存在しているのか?」に対しては以前からずっと、大きくわけて二つの答えがある。一つは言わば「あっ」の哲学だ。森羅万象はただ生じるのみで、裏で糸を引くものもなく、つまるところはすべて偶然や無作為で、ただ存在し

オンラインフェス英文解釈2

【訳文】ペンネーム I am a cat.  ある日ジェイソンが教会にひとり座っていたとき、ふと頭をよぎったのは、いま自分が神の逆鱗に触れているということだ。その理由は彼の気質にあり、ここ教会にいながらも自分の関心事で頭がいっぱいだったのだ。はじめに浮かんだこの恐ろしい考えは、平然と無謀な挑戦をする態度へと変わり、彼は目を閉じて待ちかまえた。その間に大胆にも反抗心が高まって、ついには無我夢中のうちに確信にいたった。ひたすらつぶやいていたのは、彼の知る不道徳で汚い言葉、人をけ

英文解釈演習室2022年12月号

【訳文】ペンネーム I am a cat.  現場で語学を教える人たちにとっては、取り組んでいる活動についての何らかのわかりやすい見取り図が不可欠である。もっと上手く仕事に対処できないかと殊勝な努力をするなかで、教師やコーチはあまり深く考えずに最新理論の知見に飛びついてしまうかもしれない(あるいは新しい方から2番目や3番目の知見に)。ところがこうした知見は、ときには不当なほど厚かましく喧伝され、語学教育をめぐる混迷した状況を乗り切るいかにも簡単そうな道筋を示すことがある。い

英文解釈演習室2022年10月号

【訳文】ペンネーム I am a cat. ※( )内はルビです。  キャサリン・マンスフィールドは亡くなる前に書き遺しています。 「私の汽車は止まりました。いづれの驛(えき)からも離れた田苑(でんえん)地帶で汽車が止まつてしまふと、乘客はみな窻(まど)から身を乘りだして何事が起こつたのだらうと確かめるものです」 人生という旅にこれはつきもので、なぜかはわかりませんが、列車は決まって過去の来歴も将来の展望も見渡せない地点で止まってしまいます。その二つのせいで、この地点つまり

英文解釈ブームへの考察

 英文解釈が熱い。2021年は、英文解釈の年だったといっても過言ではないだろう。著作においては、Mr. BIG先生こと北村一真先生の「英文解体新書2」を皮切りに、倉林秀男先生の「英文解釈のテオリア」、そして薬袋善郎先生の「基本文法から学ぶ英語リーデイング教本」など数々の話題作が生まれた。また、北村先生の「英語の読み方」は多くのメディアで取り上げられ、6刷まで重版が決まっている(おめでとうございます!)。しかし、盛り上がっているのは著作だけではないのは、ご存じだろうか。「読む」