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【ASIBAレポート】『ウォーカブルを科学する』

3/18に行われた,一般社団法人ASIBAと吉村有司氏(東京大学先端科学技術研究センター特任准教授)共催のアーバンサイエンス・ワークショップ『ウォーカブルを科学する』の開催報告です.本イベントは,東京大学駒場第二キャンパスにて行われました.当日は建築都市の分野に限らず,多くの方にお越しいただき,イベントは大盛況となりました.参加してくださった皆様,本当にありがとうございました.

本ワークショップでは,レクチャーとアイデアソンを通じて,以下の3つの問いを探求していきました.

・科学的なアプローチによって都市の作り方はどのように変化するのか
・ウォーカブル化は都市にどのような影響をもたらすのか
・都市計画を市民に対して開くにはどのようなコミュニケーションが必要なのか


第一章:レクチャー 都市×データ革命

まずは,アーバンサイエンスについての研究をされている吉村先生によるレクチャーが行われました.ウォーカブルが積極的に推進されているバルセロナを例に,都市データを基とする街づくりについて解説していただきました.バルセロナはデータを用いた街づくりが活発で,スーパーブロック政策による歩行者空間化が行われています.グラシア地区から始まった計画がバルセロナ全体へと広がり,歩行者中心のまちづくりが推進されました.また,その歩行者空間化による交通網の再整備や,小売店の売り上げとの関係性についてもご説明をいただきました.データを用いてウォーカブルという抽象的な概念の有用性や多側面との関連性が示されていくことはとても学びのあるものでした.

吉村先生の基調講演の様子

次に,街づくりと健康の可能性について研究をされている古賀先生からもレクチャーをいただきました.健康には,生活リズムや遺伝的要素といった個人的要因に加え,その人を取り巻く環境的要因がが強く依存してきます.地域環境の整備など個人の努力に依存しない予防の仕方を「0次予防」といい,その予防を推進するにあたってウォーカブル化が有用であるということを,研究データを用いて説明していただきました.ウォーカブルな地域と認知症割合との関係性,緑地割合とうつの関連性などとても興味深い内容でした.

古賀先生のショートレクチャーの様子

最後に,生成AIを用いた都市の作られ方の変革を目指すNESSの森原さんより,レクチャーをいただきました.人々が都市に抱いている主体的な意見や意思を画像として生成AIを用いて出力することで,人々の意思もデータとして可視化し,議論に反映することができます.実際に京島LoRAプロジェクトでは,地域芸術祭で生成AIを用いて出力した画像を展示し,住民のリアルな反応や意見を収集することができました.また,赤羽再開発プロジェクトにおいても,生成画像を介して,赤羽エリアの未来を想像する市民参加型のディスカッションが行われました.画像生成AIが意思や意見を具現化する新たなツールとして使われていく可能性が示唆されました.

第二章:アイデアソン
「データによるウォーカブル化の効果測定」

アイデアソン①(グループワーク)

都市計画,街づくりとデータという科学的なアプローチの紐づけを大きな問いとして,アイデアソンを行いました.都市のウォーカブル化を推進するにあたって,その効果をどう測定していくのか,その有用性をどのように可視化していくのかについて議論をすることを目指しました.

3つのグループにわかれ,与えられた3つの都市の候補から各班ごとに取り組む都市について模索を行いました.都市の選定後,その都市の特徴について付箋を使い,ブレーンストーミングの形で模造紙に書き出していきました.その特徴を踏まえ,下記の3つをキークエスチョンとして設定し,各班で議論を交わしながらアイデアソンを実施しました.

・ウォーカブルにはどんな効果があるのか
・利用したいデータは何か
・どのようにウォーカブルの効果を可視化し,伝えていくのか

3グループに分かれ,話し合う様子

中間発表・エスキス

各班での議論が白熱してきたところで,先生方を含め順に各班の考えの方針をお互いに発表しました.同じエリアを選んでいても,班によってどのようにウォーカブルとデータを結びつけていくのか,都市の中のどの要素に着目するのかなど,異なる視点を持っていました.お互いの考えを客観的に捉えるとともに,より深い考えになるように率直な意見を出し合う機会となりました.

中間発表・エスキスの様子

アイデアソン②(グループワーク)

中間発表では,先生方,ほかの班の仲間たちの意見を得ることができました.それを踏まえ,最終発表に向けて自分たちの案の再考と深堀りを行いました.ウォーカブルの効果に対してデータを使ってどうアプローチしていくのか,その良さをどのように伝えていくのか,たくさんの意見が飛び交い,素晴らしい議論が繰り広げられました.

提案の再考の様子

最終発表・講評・クロージング

最後に各グループによる発表が行われ、講評者から、実現可能性、発展性などについてフィードバックがありました。

講評の様子

グループ1
場所:池袋エリア
テーマ:緑化
内容:バイオフィリア的な観点より,人は緑が多い道があれば意識的にその道を選択すると仮定する.街路をエッジとノードでモデル化したうえで,エッジごとに緑化率を出力し,緑化率と経路選択の相互性から,ウォーカブル化を考える.

グループ2
場所:池袋エリア
テーマ:池袋を訪れた人の回遊する範囲を変える
内容:幹線道路をウォーカブル空間として変更し,池袋駅の東口と西口をつなぐ.観光客の多い東口から,少ない西口へと人流を流すとともに,エリアごとに用途の種類が異なる池袋駅周辺の人の移動をデータとして取り,場所性を考える.

グループ3
場所:東京駅,八重洲エリア
テーマ:東京駅周辺,特に八重洲エリアの活性化
内容:東京の中でのエリア間競争に対抗するべく,八重洲地下街と地上をウォーカブルにつなぐことで八重洲エリアの活性化を実現する.

分野の異なる参加者一人一人が異なる視点からウォーカブルという概念をみつめ,お互いに議論しあうことで,一人で考えだけでは思いつかないような素晴らしい提案が生まれました.近頃,謳われるウォーカブルについて,データという切り口から見直す良い機会にもなりました.ワークショップで出会ったメンバーで勉強会が始まったとも聞いています。今後も本ワークショップで出会った問いをそれぞれの形で探求していってほしいです!
(文:臼井元彬)

ご参加ありがとうございました!

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次回ワークショップの告知です!

【生成AIアイデアソン】作られ方の脱構築
~まだ見ぬAIの価値を、建築と都市から~

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