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【働く場を考える】人が集まる場所がある意味って何だろうか?

STAY HOME週間が延長され、私が住んでいる地方都市では、
多少自粛が緩和された空気を感じるも、
引き続き、在宅勤務やテイクアウトなど、「新しい生活様式」が推奨されている。

私は設計者であり、住宅や医療福祉分野の設計ではなく、
非住宅分野=人が集まる場所を設計していた。

「新しい生活様式」では、
・会社へ出勤するのではなく、在宅でのリモートワーク。
・外食は、店舗での飲食ではなく、テイクアウトで自宅で。
・買い物は、オンラインショッピング。サンプルへの接触は控えめに。
といったことなどが推奨されている。


これらを細部を省略し極端に解釈すると、私が設計してきた、
「人が集まる場」の利用は最小限に、と言われているのだ。
自分の仕事が減る可能性を感じて、考え込まざるを得なかった。

オンラインでのコミュニケーションが可能になった現代社会で、
あれっ??そもそも、「人が集まる場」って、必要なんだっけ?
ということを、多くの人が考えているのではないだろうか?
昔は、オンラインの手段がなかったから、物理的な場所が必要だったけれど、と。

場所を所有したり賃貸するには、多額の費用がかかる。
土地取得費、建設費、賃料、光熱費、保守費、移動に伴う通勤・交通費。
それらの多額の費用を上回るメリットってあるのか、
少なくない経営者たちが、損得勘定しているのではなかろうか。

私のような建設関係者だけでなく、飲食店、商品販売分野などで働く人たちも、
同じようなモヤモヤした気持ちを抱えているのではないかと想像する。


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例えば、飲食店の経営者。

提供価値が「多くの人に美味しいハンバーガーを提供する」の場合、
テイクアウトでも、その価値は減ることなく提供することができる。

一方、「食事を通して楽しいコミュニケーションの時間を提供する」ことが、
提供価値の場合、テイクアウトでは達成できない。

楽しい時間の中には、お店の雰囲気、盛付、店員さんとの会話
などが含まれているし、同じ空気の中でのコミュニケーションと、
オンラインでは、同じ価値があるとは言いづらい。
店舗という空間で食事をすることに価値があると考えることができる。

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オフィスの場合はどうだろうか。
「当たり前」だと思っていた価値観は、
「当たり前ではない」ということを知った後、どう変わるだろうか。

企業の勤務制度はすぐには変わらないかもしれない。
けれど、毎日満員電車で、オフィスへ通う必要は感じていないし、
少し体調が悪い日は、無理して通勤せず、家でラフな服装で働きたい。
台風や雪の日は、身の安全を確保し、交通機関の混乱を避けたい。
今まで顕在化していなかった潜在的欲求が、ひょっこりと現れてしまった。

表面上、毎日の生活は変わらなかったとしても、
2020年3月以前の生活の価値観には戻れない。

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オフィスに集まって働くことの価値は何か?

私が思い浮かる価値は、
1.色々な人の仕事状況を眺めることで、自然な情報共有が起こりやすい
2.同じ空間で過ごす雑談含めたコミュニケーションにより、
  メンバーの信頼関係が育みやすい
3.対面でのコミュニケーションにより、新人や転勤者が、組織に馴染みやすい
       新しいメンバーの業務スキルや対人的な特性を把握しやすい。
4.人材育成として、立ち振る舞いや言葉遣いなど細かな指導がしやすい。
5.やや複雑な議論を、図面やフロー図などを指しながら共有しやすい。
6.新たなアイデアを出すブレストで議論が活発化しやすい。
7.対応者が不明な突発的な問題でも、相談・対応できる人を見つけやすい。
8.オフィスという意思をもって構築された場と、各人の働く姿勢の共有により
  組織の哲学・文化が共有しやすい。

実質的な業務である、提案書作成・見積作成・契約・進捗管理・メールなどは、
場所に関わりなくできるだろうと考える。

一方で、業務を円滑に進めるためのベースづくり(組織風土の共有、信頼関係)や
クリエイティブな発想が必要な業務の推進というのは、
人が同じ場所を共有することで、成り立っていたということに気づかされる。
それは、業務フロー・制度・ツール面では、不完全な状態が、
人間関係や対面でのコミュニケーションによりカバーされてきた、
とも言い換えることもできる。

今後、オンライン/オンラインですべきことが、企業毎に分別されていき、
企業文化や変化への対応力により、働き方の多様性は高まるだろう。

「新しい生活様式」に対応するための新しい制度やツールの導入など、
トライアルを通して、本当にハッピーな働き方ってなんだろうか?
ということを経営者は、真剣に議論するだろう。

同時に、個人レベルでも、在宅勤務/フレックスタイムなどにより、
より自立した、自発的な働き方に変わっていけば、私はうれしいなあと思う。

その中で、個人のスキルやメンタルを高めるフォローがあったり、
組織にいるからこそ得られる経験や哲学を共有することができる場が、
オフィスということになるのかなあと、ぼんやりと、考えている。

具体的に、それがどのような「場のかたち」となるのか、
今はまだ分からないけれど、今よりも快適で創造的な環境になってるといいな。


「人が集まる場」の本質的な価値って何か?
すぐには終わりが見えない、STAY HOME週間を機会と捉え、
原点に立ち戻って、じっくりと考えていけたらなあと思う。



<参考>






<余談>
喫煙所の運営はどうなるんだろうか。
私は以前、喫煙室でのコミュニケーション「タバコミュニケーション」が、
オフィスでのインフォーマルなコミュニケーションとして、
記事を書いたことがあるが、タバコミュニケーションのような3密の場は、
どうなっていくんだろうか・・・例えば、時間制限?人数制限?個室とか?


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