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【今週の1冊】2020年10月②『武器になる哲学』山口周(KADOKAWA)

 皆さんは哲学についてどんなイメージを持っているだろうか?「文系」「高尚なもの」「長い歴史がある」などのイメージを持つ人は多いのではないかと思う。だが一方で、学んだとして一体「何の役に立つのかわからない」とも思うのではないか?本書では、コンサルティング業界で活躍してきた著者が、仕事をする中で役立った哲学についてわかりやすく解説している。

 本書の特徴として、様々な哲学(や心理学などその他の学問)を私たちが生きていく中で題名の通り”武器になる”という基準で取り上げているということがある。そのため、単に哲学の知識を解説するだけでなく、それを私たちがどのように活かせるかを具体例とともに解説しており、上で述べた「何の役に立つのか?」という疑問を解決するのに役立つ。

 現代を生きる私たちが哲学を生活に活かそうとするときには、思考のプロセスに注目することが大切だという。つまり、哲学者たちが何について考えたかよりも、彼らがどのように考えたかに注目することが重要だということだ。例えば本書で挙げられている例を挙げると、デカルトが「我思う、ゆえに我在り」と考えたこと自体よりも、限界まで当たり前を疑ったそのプロセスが、私たちにとってためになるということだ。

 本書で取り上げられているもののうち、私が特に印象に残っているものをとして、エーリッヒ・フロムの「自由からの逃走」がある。簡単に言うと、自由というのは一見素晴らしいもののように思えるが、それには大きな責任と孤独が伴うため、結果的には多くの人が手放してしまうというものだ。フロムがどのようなことを考えた結果このような考察に至ったかはぜひ本書やその他関連書籍を読んでみてほしい。

 考えてみると、私たちが自由から逃走していると言えそうな例が思い浮かぶ。とりあえず偏差値の高い大学に進学しようとする高校生、就活でとりあえず大企業を目指す大学生、上司に忖度する会社員、「自分が行ってもどうせ何も変わらない」と選挙に行かない人々…。たしかに「自由にやってください」と言われると一人で決断するのに勇気がいるし、様々な事情によりその決断に責任が伴うこともあるだろう。しかしそこで自由を放棄してマジョリティに迎合することは、自分の人生を生きることを放棄することと同義ではないか?一度しかない人生、納得のいく自分だけの人生にするために自由を手放さないでいたいものだ。 

 本書にはほかにも非常にためになる哲学が満載なので、教養として非常におすすめだ。また上で述べたように哲学の活かし方を知りたい人には特におすすめの一冊である。

 

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