【推し本】植物の知性に学べる本たち
「数学する身体」などで有名な、森田真生さんのブックライブトークは毎回とても刺激的で、表参道の青山ブックセンターでライブトークがあるときは何を差し置いても行くのですが、本当に素晴らしいトークなんです。
いつも、森田さんが紹介する書籍たちがずらっと並べられていて(その量も半端ないです)、いろいろ眺めていた時に、これ面白いですよと森田さんにお薦めされた「植物は<知性>をもっている」。そりゃ買うでしょ。
通常、ヒトを頂点とする生物ピラミッドに含まれない植物が、
実に地球上の多細胞生物の99.7%を占めている、
植物がないと動物はやっていけない、
動かないし知性もないと思われているが、
植物は五感どころかもっと多い感覚を持ち、
コミュニケーションもできる!
これで知性がないと言えるのか!!
と著者ステファノ・マンクーゾは植物の地位向上を熱く訴えています(笑)。
またどこかが切り離されても致命的にならないように、分散型システムとなってもいます。まさにインターネットと同じ。
それを知性と呼ぶかはともかく、植物の生存戦略の奥深さには驚かされます。
森田さんの解説で補足するならば、少なくともヒトや動物のようなスピードでは動けない植物だからこそ、全ての細胞で周囲に感覚全てを開いて周囲の様子を探ることがとても重要で、そのためのセンサーがヒトや動物の五感よりももっとある、ということなんですね。
森田さんが、これからの社会を考える時に植物にもっと学んだ方がいいと考えるのも、地球規模の気候変動からはもはや誰も逃げられないという意味で、動けない植物と同じ発想が必要と考えるからです。
マンクーゾさんの植物愛が溢れて、やや肩入れしすぎ感はあるのですが、併読するとより理解が深まるのはペーター・ヴォールレーベンの「樹木たちの知られざる生活」です。
ドイツの森林管理をしてきた著者の深い観察眼は、人間社会やSDGsを考える上でも大いにヒントとなることでしょう。
木は一本だけ生き残っても森にはなれず、樹木の幸せはコミュニティの幸せと直接的に結びついている、と著者は言います。
ヨーロッパの整然とした街路樹などは、仲間から離され、本当は木にとっては幸せではないんですね。
森では、樹木が動物や害虫に襲われたら仲間の樹木に知らせ(実際には警報となるエチレンガスを発生させたり、地中の菌糸がコミュニケーターとなる)、弱った木には周りの木が栄養をあげることで森の環境を維持しているのです。
当然、種の多様性も重要です。
いろいろな会社でダイバーシティとかサステナビリティとか言ってますが、樹木の知恵から考えてみるのもよいかもしれません。
森の生態を熟知した著者の、優しく哲学的な言葉が沁みます。
ところで、この「樹木たちの知られざる生活」は、上橋菜穂子の「香君」にもインスピレーションを与えています。
ザ・上橋菜穂子ワールド、という感じで、雄大なユーラシア大陸を思わせるような架空の国々を舞台に、オアレ稲という吉凶もたらす稲に依存する民や国家の権力争いや、自然との戦いが描かれています。
香君は、普通の人には感知できない匂いを感じることができ、植物の痛み、苦しみ、叫び、虫を呼ぶ声まで聞き取ります。
まさに「樹木たちの知られざる生活」に出てくる、樹木間のコミュニケーションですね。
「香君」の副読本としてもおすすめです。
我が家のベランダのミニバラにいつのまにやらアブラムシがつくのも、アブラムシを食べるテントウムシが来るのも、ミニバラが何かを呼んでいるのかしら、と想像したくなります。
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