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二次創作

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pixivでも掲載していた、二次小説集です。 noteに同時掲載、移行しています。ジャンルば雑多です。
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#小説

廃屋の怪談 ②

どこからここの情報を嗅ぎ付けたのか。

今日の夕方頃にいきなり「超直感と度胸をつける修行だぞ」なんて、語尾にハートが付きそうな言い方をするもんだから正直イラっとした。

宿題も終わり夕御飯前にテレビを見ながら人が微睡んでいてもお構い無しなんだよあいつは。

とはいえ、それに逆らえば容赦ない教育的指導という名の暴力が飛んでくるんだから、たまったもんじゃない。

妥協するしか、ないのだ。

夕御飯のク

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廃屋の怪談 ①

ある日の事。

町外れに、大きく古めかしい木造の廃屋がある。洋館みたいだけど和の雰囲気もあって、こういうのを和モダンっていうのかな。だけどそれが元々誰かの邸宅だったものなのか、どういう類いの建物だったのかは知られていない。

(まあ、別に知りたくもないんだけどさ)

周りの木々は化物みたいに生い茂り、蔦や苔が所々に深く侵食しているその様は、どう見ても妖怪屋敷である。実際、そういう噂もたくさんある。

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笑う案山子

※死ネタを含みます。

 読み手を選ぶ内容だと思われますので、苦手な方はご注意下さい。

風がひとつ吹きました。

強くもなく弱くもない……、優しく頬を撫でるような風です。

今日は不思議な日差しです。

暑くはないけどそれなりに暖かく、寒くはないけどそこそこ涼しげな。

私は、お婆ちゃんです。

今年の誕生日で89才になる、れっきとしたお婆ちゃんです。

そんなお婆ちゃんの私にとって、この不思議

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君が眠れるように瞼にキスをする

※家庭教師ヒットマンREBORN二次創作
高校生位の雲雀と綱吉。

BL的な表現があります、苦手な方はご注意下さい。

突き放しているようで、それでも雲雀なりに綱吉を大切にしていて。

だけど肝心の綱吉には、まるで伝わっていない話。

雲雀の大切にしたいは、永久に伝わらなくて。

拒絶されたと思い込む綱吉は、とことん傷付く。

うわぁ、意味が解らない。

※匂わす程度ですが、BL的表現が含まれます

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雨の日

ぱららん。

ぱら、ぱら。

ぱららん。

傘に落ちる雨の粒が、音をたてて消えていく。

「恵みの雨とは、よく言うね」

「何がですか?」

じめじめと肌に触れる不快感に舌打ちをしながら、雲雀は眉間に皺を寄せる。

彼は毎年、梅雨という時期になると機嫌が悪くなる。

身体に貼り付くような蒸し暑さが、ねっとり絡み付く息苦しさが嫌いだった。

「苛々する」

「梅雨なんてあっという間ですよ」

隣を歩

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7月7日

一年に一度、とある所の男女が出会えると言うその日は、生憎の曇天だった。応接室の窓から空を見つめていた琥珀色の瞳は、黒髪に紅茶を勧められる。

「どうでもいいけど、何なのこれ」

「お団子ですよ。みたらしと三色とあんこ」

「そんなの見れば解るよ。僕が聞きたいのは、どういう風の吹き回しかって事」

「だって今日は七夕ですよ?」

「だから?」

「七夕の日には、夜空を見ながらお団子を食べるんじゃなか

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貴方は何を望む

「消えてしまいたい」

「は?」

「って思う事、ありませんか?」

夕暮れ時の屋上には何もない。沈みかけた太陽の赤と、遠く侵食してくる夜の黒が交じるだけ。心地好い静寂と、少し不気味な閑散とした空気に包まれる。

「僕にあると思う?」

「雲雀さんには無いか」

「自殺願望でもあるの?」

「いいえ」

困ったように眉を八の字にした彼は、それでも「へらり」と笑っていた。笑っているけど、泣いているふ

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独りと紅茶

雲雀さんは、俺が群れても。あまり怒らなくなりましたね。

大人になった綱吉は、アールグレイを片手にへらりと笑った。ここ数年で彼は相変わらず小柄で、相変わらずどん臭くて。だけどシワが増えた。笑うと目尻に目立つそれが、最近は余計に目立つから。僕達はだいぶ歳を召したんだなと実感する。

「へらり」と笑いつつ、シワのせいで「くしゃり」にも見える。あまり知らないが、数回見かけた彼の父親に似ていると思う。綱吉

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幸福な記憶

実の母の記憶は薄い。あの頃はまだ幼かったし、彼女を母として意識して見ていなかったから。だから仕方がない。

しかし、微かに記憶に残る温かさだけは消えない。

「……凄いね、獄寺君」

「さすが十代目!デカくて旨そうな桃が手に入ったんですよ‼️」

「いや、桃じゃなくてね?」

「はい?」

「獄寺君のこと」

全身びしょ濡れじゃない。

十代目はそう苦笑いすると、タオルで俺の頭をごしごし拭きだした

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貴方にさえ出会わなければ

雨が降ればいいのに

君にさえ

出逢わなければ良かったのに

「荒れてんな、雲雀」

声をかけられた青年は、血塗れの中にいる。

どす黒い、赤。赤。赤。

その中で狂ったようにトンファーを振り回す癖に、青年の肌は真っ白で綺麗なものだから不気味だった。

「…山本、武」

「よっ。久しぶりだな」

やっとこちらを振り向いた青年の瞳は、獲物を狩る肉食獣のように鋭く。だけど同時に死んでいた。彼は何も見

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それを滑稽だと君は笑うか

「こんな事は馬鹿げてる……時々もしかするとそうなのかもなって笑えるんです」

ぼやけた視界の中で、霧のように隣の彼は揺らいで見えた。ふらふらゆらゆら。ずっと見ていると酔ってしまいそうな感じがしたので、俺は視線を逃げるように逸らす。

「自分でも滑稽に見えてしまうのだから。きっと他人の目からみたらより、滑稽に映っているんでしょうね」

「そうじゃない奴だっているんじゃないかな」

「例えば、貴方とか

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嫌いな顔

「おかえり」

霧に身を包み、いきなり現れても彼は驚いたりしなくなった。相変わらず小柄で華奢な癖に、いつのまにやら立派な青年に。あの頃の臆病な子供は、もういない。

「普通にドアを使えばいいのに」

「………」

穏やかな物腰が何となく腹ただしい。無言で書類を執務机に放ってやる。投げつけたりはしない。僕ももう子供ではないのだから。

アンティークの滑らかな木目に、ゆらっと落ちた紙の束。彼は特に気に

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焼き芋日和

響く銃声と怒鳴り声が耳を貫いて、うるさい。

不愉快だな咬み殺しに行こうかななんて考えていたら、いきなり名前を呼ばれた。自分よりも確かひとつ下の彼は。青年と呼ばれる歳になっても、まるて変声期を無視したかのようにチンチクリンのままだった。

要するに変わらない。

「雲雀さん、お久しぶりですね」

「こんな所で何してるの?」

「焼き芋を買いに行ってたんですよ。日本のスーパーは優秀ですよね」

「仕

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溶けた影の先に

時は19時を過ぎた頃。

影が夜に吸収されるころ、その人の右手にて。たゆんたゆん揺れるのは、小さな小さな金魚が二匹。

「お祭りなんて、久しぶりだぁ」

「楽しかったですか?」

「うん」

「それはそれは」

 

隣を歩くオッドアイの彼は、少し呆れたように笑った。

人通りの少ない路上。後ろから遠くに聞こえてくる祭りばやし。黒のスーツ姿のその人に対して、彼は白の半袖に薄手の紺色カーディガンとジ

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