7月7日

一年に一度、とある所の男女が出会えると言うその日は、生憎の曇天だった。応接室の窓から空を見つめていた琥珀色の瞳は、黒髪に紅茶を勧められる。


「どうでもいいけど、何なのこれ」

「お団子ですよ。みたらしと三色とあんこ」

「そんなの見れば解るよ。僕が聞きたいのは、どういう風の吹き回しかって事」

「だって今日は七夕ですよ?」

「だから?」

「七夕の日には、夜空を見ながらお団子を食べるんじゃなかったでしたっけ?」

「それは、お月見じゃない。七夕は笹の葉と短冊。君、盛大に勘違いしてるでしょ」

「……えっ」


琥珀色のその人は、どうやら本気でそうと信じていたようで、大きな瞳をまん丸にした。黒髪の彼は心底呆れましたとばかりに、深い溜め息。だけど「まあ、君らしいね」と、とても小さく吹き出した。

そのまま俯いて小刻みに肩を揺らし、片手のひらで、自身の顔を覆ってしまう。琥珀色のその人は、気恥ずかしさから頬を赤く染め。「そんなに笑う事ないじゃないですか‼️」と叫んだ。

しかしそれでも「いやいや、普通は間違えないよ」と、黒髪の彼の爆笑は、なかなか止まらなかった。


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紅茶と団子が意外と合う事に、黒髪の彼は「君と居ると常識が覆される」と感心し。琥珀色の彼は(歩く非常識が何を言ってんだ)と呆れた顔をします。だけど馬鹿正直に顔に出し過ぎたので「生意気」と、黒髪さんに容赦ないデコピンを頂いてしまう。「ぐわわ‼️」とソファの上でのけ反る琥珀色に「バカだねぇ」と黒髪はまた笑った。

とても珍しい彼の笑顔だけど、琥珀色はお馬鹿さんだから気づかない。

気付かれないと解っていたから、黒髪は琥珀色の前で笑えたのかも知れない。


何故、笑えたのか?


だけどその意味を、ふたり共に気づいていない。


まだ。


気づいていない。



暫くして、曇天は夕焼け空。

橙の光が満ちた一室では、二人の少年の姿。


夜は雨らしいね。


残念です。


そんな会話が聴こえます。


7月7日は、

今年も雨です。


また、来年。


※家庭教師ヒットマンREBORN二次創作
雲雀と綱吉。


七夕は雨の日が多いと聞いたので。だけど雨の日でも、なんか笑っちゃう時もあるよねと。私の書く雲雀さんは、笑いの沸点が低くて狭い人です。

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