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人生色々

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2020年7月の記事一覧

たった1gの価値

たった1gの価値

1gのアルミニウム。

道端に落ちていた。

これで何も出来ないから、みんな知らぬ顔で通り過ぎる。価値観なんてそんなもの。

小さな手が、1gのアルミニウムを拾って、交番に届けた。

駐在さんは笑って

「それは君にあげるよ!困った時のために」と小さな掌に乗せた。

その翌日、母親と、手を繋ぐ小さな手。

スーパーのレジ前、店員が困惑している。

「あと一円足りません!」

母親は、好物のプリンを

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青い糸

青い糸

「聞こえますか?」

「聞こえてるよ」」3m先のあたしの声を必死に捉えてくれたカズ。

あれはまだ小3の頃だった。澄み切った青い空。

お酒好きな父親は、酔うと私を、殴る。

母は、そんな父の言いなりで子供が酷い目にあっている中、見て見ぬふり。

私は父が酔う前に外に出るのが習慣になった。

上を見上げれば青一色の空。海岸沿いに歩き、テトラポットが並ぶ場所に行くと、いつもカズが、その上に座ってリコ

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夜の向日葵

夜の向日葵

「お月様が笑ってるよ。」

空を見上げ、彼が言う。今年の夏は、イベントが何も無くて、ただ、夜空を見上げるだけになった。

しかし、私の右手を繋いで歩く彼は、

今日は、君を離さないぞ!という無言のメッセージを手の温もりともに、私に送って来る。

街灯の少ない港を歩く。静かな波音だけが囁くように耳に伝わった。

港の端に灯台が見えた。

漁を終えた船が、錨を下ろして何層も泊まっていた。

彼は、私の

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向日葵の咲く丘に

向日葵の咲く丘に

君はもう忘れちゃっただろうか?お互いが、落ち着いたら一緒に暮らそうと話した事を。

俺は今、そんな状態ではない。しかし、ふと思い出したのだ。

キミは微笑んで、

「私の宝物が私のものでなくなったらね。」と言った。

宝物とは、ひとり娘の事だ。

風の噂で、好青年と幸せに暮らしていると聞いた。君の宝物が輝かしい未来へ旅立った。

君はもう君自身の人生を歩む権利を得る。

しかし、俺は余命半年の宣告

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平和なのは今だけかもしれない

平和なのは今だけかもしれない

今日は、久しぶりの登校日。毎年夏休みの8月6日は登校日だ。

夏の日差しを浴びて真っ黒に日焼けしたクラスメートと久々に会える。

他愛のない会話を笑顔で交わすだけで、幸せモードになれる。学校はバスを乗り継いで、山の上にある。だから長期休暇に入ると、友達に会う機会が極端に減るのだ。

8月6日と言えば、広島に原子爆弾が投下されたひ。平和学習も兼ねていて、いつも戦争関連のアニメを見るのが恒例行事だった

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生きる権利があるなら死ぬ権利もあってもいい?

生きる権利があるなら死ぬ権利もあってもいい?

星の数だけ人間がいて、星の数だけ様々な生き方がある。涙で滲むあなたの生き方は、間違っていない。

どん底に堕ちた天使は、笑ってもうこれ以上堕ちないと喜んだ。

星空を見上げ、死んでしまえばお星様になるって言うのは、迷信よ。と、呟く。

生と死の狭間で、君は何を考える?

苦しみは、ずっと続くなら殺される方がいい?自分の涙が、枯れた時、命の重さを測る手だてを見失う。

何故死を急ぐのか?

何故殺さ

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