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平和なのは今だけかもしれない

今日は、久しぶりの登校日。毎年夏休みの8月6日は登校日だ。

夏の日差しを浴びて真っ黒に日焼けしたクラスメートと久々に会える。

他愛のない会話を笑顔で交わすだけで、幸せモードになれる。学校はバスを乗り継いで、山の上にある。だから長期休暇に入ると、友達に会う機会が極端に減るのだ。

8月6日と言えば、広島に原子爆弾が投下されたひ。平和学習も兼ねていて、いつも戦争関連のアニメを見るのが恒例行事だった。

しかし、毎年の事だ。どことなくマンネリ化していた。

登校日に休む生徒もいる。その子たちは、今ごろ、家でクーラーの中でゲームをしてるんだろう。


戦争を知らない子供たちにも戦争を知らない教師は、ただ、学校の方針だからと言うだけで戦争関連のアニメを見せ感想文を書かせて、学級新聞に上手い感想文を乗せて、それで終わる。何の意味があるのだろうか?中学生の私は、とても退屈な時間の始まりを待つ。


その時、教室が光に包まれた。その瞬間、ドカンと、何かが学校の真上に堕ちたという感覚に恐怖する。

周りを見渡すが、みんな退屈そうに、席に座ったままだ。

隣の香織に、「なんか物凄い音しなかった?」と、尋ねるが、へっ?という不思議そうな顔をするだけだった。


私だけに聞こえるこえ。「たーすーけーて!」

それも1度だけでなく何度も……

私は、席を立ち上がった。一斉に私に視線を走らせる。教師に止められるが教室を飛び出した。そして、屋上への階段を駆け登る。

屋上へ続くドアを開けた瞬間、

そこは火の海だった。「助けてください。水をください。」

小人のような小さな世界の中で沢山の小さな人が虫けらのように蠢いていた。

「え〜何?」私は目を何度も瞬かせた。

私の足の先に小さな手が触れる。

「助けて!私の家の上にミサイルが堕ちた。それは巨大なエネルギーで私達は星の彼方に吹っ飛んだ。水をください。火を消して!」

私は言われるがまま、階下の水道の水をバケツ2つ分持って、屋上に戻った。そして、ザバーンと火の海めがけて水をぶっかけた。

瞬きをすると、いつもの暑いコンクリートの屋上に戻っていた。


幻だったのだろうか?しかし、コンクリートの上をくまなく見て回ったら、熱!太陽の光のは異なる熱さが残っていた。


地球は、まだ平和なのだと、私は目を何度も瞬かせた。

ふわふわと、動く物体が私に近づく。先程私に助けを求めた小さな人だった。

「先程は、ありがとうございました。あなたがぶっかけた水のおかげで、どうにか難を逃れました。私どもは地球のはるか彼方の星で平和に暮らしいました。ところが、突然、ミサイルが小さな星に堕ちたんです。どこかの星で発射実験をしていると聞いていました。しかし、まさか自分が住む星に堕ちるとは思いもしなかった。この星は、平和で、羨ましい。どうか平和を守り続けて欲しい。私どもはまた、別の星に移住せざるを得なくなった。宇宙の旅人になってしまった。私たちのような悲しみを味わって欲しくない。忘れないで、平和の意味を!」


私の耳に木霊する。ふと気がつくと、クラスメートの香織が横にいた。

「先生めちゃくちゃ怒ってるよ。早く教室に戻ろう!」

青一色の空を飛行機雲が走っていた。




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今はまだ修行中の身ですが、いつの日か本にしたいという夢を持っています。まだまだ未熟な文章ですがサポートして頂けたら嬉しいです。