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ミュージカル HIU版 クリスマスキャロル ドキュメント 第十四話「不具」

こう書いていると、順調に物事が進んでいる様に思えるかもしれない。
しかし、実際にはギリギリの進行だ。

王子のスケジュールの都合で、10日間余りも稽古日が空いてしまうことも有った。
その際には、ここで空白期間を置くよりはと、その間に自主練の場を設け、少しでも練度を高めることや、メンバーの熱量が下がらない様に努めることとした。

冬場のスキー場での泊まり込みのバイトを取り止めての参加を表明したにも拘らず、寝落ちによる”来る来る詐欺”を重ねていたカイトが、この頃から逆に眼を見張るほど積極的な参加をしてくれた天佑は有った。

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が、いかんせん未だキャストが足りていない。稽古に人が集まらない。シーン稽古が完了していない。舞台監督、照明、音響等が決まらない・・・。
それが本番迄あと一週間ちょっとの時点での、予断を許さぬ我々の姿だ。

俺にしてみても、青年スクルージにとって一番ナイーブな場面と言えるあすみん演じるケイトとのシーン稽古が、この段階で殆どこなせていなかったのは、かなりの不安材料となっていた。

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最も稽古への参加率が高かった俺とあすみんとの稽古が不足していたのは謎と言えたが、事実そうだったのだ。
しかも、孤児達を交えたケイトとのシーンに至っては、稽古最終日が初合わせと言う具合だったのが実のところだ。

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一名を除いて演者が揃い、初めて通し稽古をやれたのは1月25日、稽古残り四回目の日であった。

終わった途端に緊張感が増していた。
そこには、「やっと通せた!」と言う安堵感などカケラも無かった。
台詞が出て来ない、役が入っていない、ダンスが追い付けていない、最悪なのは自分事になっていない事だ。
自分の役の出番のタイミングや、台詞と動きのきっかけ、場面毎に於ける己の役割などが頭に入っていない。この段に至って、まだそんな状態でいるのは致命的だ。

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すっかり座長の様な存在になっていた俺としては、王子に次いで物語全体を把握していた積もりでいたので、「何故なのか?」と、理解し得ないものの、そんな状況であることだけは判った。

判かりはしたが、そこからどうするかは、結局は個々に委ねるしか無いのだ。
(続く)

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