『火星のタイム・スリップ』 作者: フィリップ・K・ディック
大昔のSF小説では、近未来には火星くらいには地球人も到達していて、植民地にしているだろうというのがいかにも当たり前的だった。
1964年発表の本作の舞台も火星であり、どうやって環境を整備したかは語られはしないが、普通に人類が大気の下に暮らしている世界だ。
優れたアイデア作家であるディックらしく、その設定は突飛というか、精神分裂病患者の中には、健常者とは異なる時間の進行の中で生きている者がおり、さらにその中には過去や未来を行き来できる者がいるとする学説がある、という前提が作品を