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『3001年終局への旅』 作者: アーサー・C・クラーク

1968年発表の『2001年宇宙の旅』、1982年の『2010年宇宙の旅』に、1987年の『2061年宇宙の旅』ときて、1997年には本作を発表。とうとう一作目から1000年が経ってしまった。
どこまで行く気なの? と思ったら、これがシリーズ完結篇である。
それにしても、『終局への旅』とは不吉なタイトルだ。因みに、原題は『3001: The Final Odyssey』である。

『2001年』で、機密を帯びて木星に向かう途中、アメリカ合衆国宇宙船ディスカバリー号に搭載されたコンピューター HAL9000の反抗により、宇宙へ放り出された船長代理並びに専任士官フランク・プールが、海王星付近で漂流しているところを発見され、回収された。
超低温の仮死状態であった彼は、地球の軌道上で蘇生され目覚めた。

1000年、というか実執筆年間ですら29年間も放っておかれたプール。恐らく世界中からすっかり忘れ去られていた筈の彼を物語の主人公に復活させるとは、なるほど考えたなと思わされる。確かにそれならば続編が成立する訳だ。
物語は当初、目覚めたプールが目の当たりにする1000年後の世界の驚異を描いていく。
次第に順応していったプールは、やがて、再び宇宙の旅を試みる。
2001年の最初の旅で行方不明となった、宇宙船ディスカバリー号の船長デイビット・ボーマンは、エネルギー生命体と化してその後幾度か人類に姿を現していた。そして彼がエウロパに居るのはほぼ確実だった。
2010年に於いて、謎の存在である超生命体から地球人類に寄せられたメッセージ。
「これらの世界はすべて、あなたたちのものだ。ただしエウロパは除く。決して着陸してはならない」
木星の衛星エウロパは、かくして地球人類にとって禁制の地となっていたのだが、プールは自分ならばボーマンは訪問を許すのではないかと考えたのだった。
プールは果たして、1000年振りにエウロパに降り立つ人類になり得るのか。

本作は、これまでの三作に比べれば、やや頁数は少ない。しかし、宇宙航法技術が格段に上がっているのだ。他の天体への移動時間が大幅に短縮されているのだから、描写するべき事柄がそもそも乏しい訳で、それも当然のことか。
それにしても、本作は御歳80歳手前で執筆された作品である。SFとはイマジネーションだ。これ程までにクラークの想像力が留まらないのは、なかなか凄いことだと思う。
流石は、最も多くの未来予測を成したSF作家と言われるだけのことはある。


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