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ミュージカル HIU版 クリスマスキャロル ドキュメント 第七話「浅慮」
そして稽古は回を重ねていく。
相変わらず稽古の段取りには難が有った。
演者の皆に不安を与える事は避けなければならない。俺は稽古スケジュールと稽古場の予約も率先して行う様になった。
演じる事や演技の指導をする事には長けていても、どうやら王子はスケジュールの管理や段取り等には全く不能らしい。
誰にでも不得意分野は有るものだ。
そうしている内に、スタッフ希望としては、りほ(上原 里穂)、キャストとしては、のんちゃん(Yuta Nozaki)、マッキー(Makiyo Kashima)、なほ(阿守 奈保)、いぶき、たっちゃん(佐々木 達也)と、ポツリポツリとキャスト、スタッフ候補が増えていった。
彼らは、会計関係の会社の従業員だったり、主婦だったり、鍼灸師だったりと立場は様々だ。やはり演技の経験は無いに等しい。
初めは取り敢えず見学だけ・・・と、言っていたにも拘らず、結局すっぽり参加した口はRyo Tanaka、なほ、たっちゃんと少なくない。
しかも、なほに至っては2月2日の本番当日が結婚記念日なので・・・と言っていたのが、数日後には何と翻って参加を決めてしまった。いや、決めていただけました。
何と言う事だ。
時には王子と二人っきりしか稽古場に集まらず、仕方が無いので想いを打ち明け合った日も有った事から比べたら嘘の様だ。
それでも、配役を決められる程迄に人が揃うには時間を要した。
まぁその内何とかなるだろう〜と、そんな事とは無関係に俺は青年スクルージを演じる事に専念していった。
前にも記述した通り、俺は俺なりにスクルージを演じてみようと思っていた。
金の事を除けば、若い頃の俺は丁度こんな奴だった。
人当たりが下手くそ。何でも勝負事と捉え、勝ちに拘泥する。癒しやクリスマス、人並みの生活への興味や願望が薄い。目付きが悪い。
どうも俺には、平穏で安らいだ日々なんてモノがやって来るなど、全く想像が出来ない。このまま行けば孤独死一直線だが、様々な選択肢の度に面倒くさそうな方ばかりを選んで来た結果だ。
何と言ったってガキの時分のココロの師匠が松田 優作にブルース・リー。目指していたのは漫画家かアウトローだ。碌な人間になる筈がない。
余談は終了。
要するに、青年スクルージさんは、まぁまぁ地でイケると俺は踏んだ訳だ。
年齢的に言って、あんまりバタバタと演じてもみっとも良くはあるまい。読み合わせに際し、基本的な演技プランはクールでいこうと定めた。
だが、俺はコメディ基調の裏に隠された「人間スクルージ」を理解していなかったことにやがて気付かされる事となる。
(続く)
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