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ソーシャルワーカー向けの小説紹介


今回は、ソーシャルワーカー(社会福祉士、精神保健福祉士)として働いていらっしゃる方々におすすめの小説をいくつか紹介したいと思います。
ジャンルを横断して4冊、ピックアップしてみました。
あくまで私的なおすすめですが、ご参考までにどうぞ。
なお、別にソーシャルワーカーではない方が読んでもなんら差し支えはありません。おもしろいよ!


深沢潮『足りないくらし』(徳間文庫)

とある女性専用シェアハウスに集まる彼女たちの背景にあるのは、DV、ネグレクト、外国人技能実習制度、生活保護へのバッシング。最後に明かされる、格安シェアハウスの実態含め、まさに現代の社会問題を扱った小説です。
テーマは重いですが、本自体は薄く、読みやすいと思うので、ふだん小説をあまり読まない方にもおすすめです。


山崎ナオコーラ『美しい距離』(文春文庫)

物語は男性会社員の視点で進みます。彼の妻は40代でがんを患い、入院しています。
「若くして闘病中の妻とその夫」に対して、社会が安易に押し付ける理想や物語。それに対する違和感や怒りに、主人公は静かに向き合い、その理由を考えるのです。

私たちもふだん無意識のうちに、どこかで聞いた物語を相手に当てはめてしまっていないだろうか。
そんなことを考えさせられる小説です。
福祉のほか、医療や介護に携わっている方にも、ぜひ読んでもらいたい。

人物の固有名詞がまったく出てこないのがまたミソ。ここに出てくる彼や彼女は、あなたの周りのあの人、かの人かもしれません。


山本弘『アイの物語』(角川文庫)

次いで変わり種、ジャンルはSFより。本書自体は7つの短編でひとつの大きな物語をつくっていますが、今回はその中の、第6話「詩音が来た日」を取り上げたい。
この話に出てくる、人はみな認知症、というセリフが秀逸です。

唯一絶対の世界の見方なんて存在しない、人ひとりひとりがこの世の中を見たいようにしか見ていないのだ、ということをひしひしと考えさせられます。


冲方丁『十二人の死にたいこどもたち』(文春文庫)

最後はミステリから。こちら、2019年に映画化したのでご存じの方も多いかも。

集団安楽死をするため、廃病院に集まった少年少女たち。
読むと、子どもにとって世界・社会の中で、親や学校の占める割合がどれほど大きいか、また子どもゆえの思考の純粋さがよくわかります。

ちなみに映画と原作だと、特にアンリ(映画キャストは杉咲花)の動機が全く違います。個人的には原作のほうが好きなので、映画を観たことあるという方もよろしければぜひ原作を読んでみてくださいませ。

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