ノルウェーでじわじわと広がる、酒と寿司ブーム
【記事の内容と登場人物】
●オスロの寿司屋「おまかせ」、ノルウェーのマイクロブリュワリー「ヌグネ・オー」社、ノルウェー工芸会。この3社のコラボイベントに潜入
●「ワールド寿司カップ」の昨年のチャンピオン、ヴラジミール・パクさん
●酒ソムリエである石井香織さん
●ノルウェー在住、日本人陶芸家、高橋美千子さん
●オスロの寿司屋は、なぜ秋田県のお米「あきたこまち」に惚れたのか
●ノルウェーでの酒ブームの変化
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「ノルウェーの飲食業界で、和食だけではなく、いろいろなものにお酒をあわせる気風が高まってきている」。
そう語るのは、酒ソムリエの教育者である石井香織さん。
5日、オスロにある高級寿司屋「おまかせ」で、酒・陶器・寿司を一緒に楽しむイベントが開催された。
日本で例年開催される「ワールド寿司カップ」の昨年のチャンピオンは、オスロ在住のロシア国籍ヴラジミール・パクさん。
パクさんは、板前として「おまかせ」のメニューを担当する。
「秋田県の米『あきたこまち』を使っています」と言いながら、私たち報道陣の前で寿司を握っていたパクさん。
「今、『あきたこまち』って言いました?」。
秋田県出身の筆者は、驚いて聞き返してしまった。
「3月からの新しいメニューを考えていた時に、日本米を使いたいと思ったんです。どの米にしようか数種類を試してみて、私が気に入ったのが、上質なあきたこまちでした」と話すパクさん。
他店の寿司屋は、カリフォルニア産の「錦」(ニシキ)などを使用している。「おまかせ」では、全ての寿司に、あきたこまちを使用とのこと。
しっかりとしたプロの寿司屋の中で、あきたこまちを使用しているのは、オスロではこの店だけだそうだ。
秋田出身としては、嬉しくてニヤリとしてしまう。
食器と食を共に楽しむ
写真上の陶器はノルウェー人Geir Tokle(ゲイル・トクレ)さん作。
今回のイベントでは、デザイン性の高い陶器、こだわって作られた寿司と酒を組み合わせるという試みが行われた。
筆者の両隣に座っていたのは、地元の新聞社ダーグブラーデ紙のグルメ記者と、有名なフードジャーナリスト。
今回は日本人とノルウェー人の陶芸家によって作られた、美しい陶器と寿司をセットで堪能した。
寿司に寄り添うのは、ノルウェーのマイクロブリュワリー「ヌグネ・オー」社によって作られた、「欧州発の日本酒」。ヌグネの日本酒は、日本のメディアでも、これまで度々取り上げられてきた。
欧州初の酒蔵を持つヌグネ・オーは、北海道の酒米「吟風」を使用し、昔ながらの手法「山廃仕込」で酒を製造している。
酒ソムリエである石井香織さんは、教育者としてレッスンを開催する傍ら、ヌグネの酒のテーストプロモーターとしても活動中。
もっと気楽に、ノルウェーの人にお酒を楽しんでもらいたい
ノルウェーは、酒の飲み方において、政府や政治家が市民生活を厳しく取り締まる国だ。酒の広告は禁止され、度数の強いアルコールの販売時間も規制されている。
簡単にまとめてしまうと、「酒の宣伝が日本のようにできない+酒がまだまだ食卓に浸透していない=酒を市民の食卓に浸透させるのに時間がかかる」。
最近のノルウェーでの酒ブームについて、「食に酒をあわせる文化が、少しずつ広まってきた」と、石井さんは話す。
写真上:石井さんと、ヌグネ・オーの「裸島 こもれび」。こもれびは、昨年11月から発売が開始された、欧州発の本格的な焼酎だ。手前の瓶は、同社の「裸島」酒シリーズ。
ノルウェーでは、新しいものが日常生活になじむまでに、日本以上に時間がかかることがある。酒も、そのひとつといえるだろう。
「どう楽しんでいいのか、わからない」、「飲み方がわからない」というのが、考えられる理由のひとつ。
外で雪がチラチラと降る中、寿司屋「おまかせ」では、「寿司と酒の楽しみ方」が見事に実現されていた。この楽しみを、もっとノルウェーの人に、知ってもらいたい!
アジア人が経営する寿司屋は、オスロには至る所にある。「しっかりとした」寿司とは言い難いが、寿司をテイクアウトして楽しむ文化は着実に広まっている。
その流れにうまく乗ることができれば、酒、わさび、醤油、陶器にもこだわる人が、きっと少しずつ増えていくのではないだろうか。
そのためには、石井さんのような、楽しみ方を伝える伝道師・ガイド役が、ノルウェーにはもっと必要とされてくるだろう。
高橋美千子さん(写真下2枚目右)は、ノルウェー在住・数少ない日本人陶芸家だ。
高橋さんの美しいお皿が、ヌグネの純米酒と共に、登場した。
ノルウェー人と日本人の陶芸家によって作られた、次々とでてくる美しい食器に、私たちゲストは魅了された。
ジャーナリスト3人の私たちは、写真撮影に夢中になっていた。
おいしいお酒、下の上でとろけそうな寿司(米はあきたこまち)、美しい皿。
日本とノルウェーの、グルメとアート。
雪降るオスロの街で、両国の文化が、上品に交錯しあっていた。
公式HP
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