演劇界に存在するチケットノルマはおかしいのか?
こんにちは、演劇を中心にエンタメ分野に「ビジネス」を絡めて情報発信しているAsakawaです。
今回はエンタメ×ビジネスというのであればいずれは触れておいた方が良いと思い、この界隈に存在する「チケットノルマ」をテーマに記事を書いていこうと思います。この記事を読むことによってこの世界で収益を得ることはどれだけ大変なことのかを理解できるようになりますので是非、最後まで読んでいってほしいと思います。
演劇、エンタメ分野におけるチケットノルマとは?
まずはここを簡単に説明しましょう。大体この記事にアクセスしてくれた方であれば察しがついていると思いますが出演者が最低、何枚はチケットを売ってくださいとイベント企画者側から提示されるノルマです。
私が聞いた限りでは3、4千円ほどするチケットを一人20枚から30枚くらい背負わされるといったところですね。
これは演劇のみならず音楽、主にバンドマンやお笑い芸人の界隈でもあります。
で、もしも本番が終わってもそのノルマが達成されなかったら?
その足りない分は出演者自身が払うことを要求されます・・・。(チケットノルマ20枚で3千円のチケットを10枚しか売れなかった場合は3万円の自己負担になります)
俳優活動をしていた私はこのシステムを初めて知った時には真っ先に「おかしい」と思いました。
特に俳優を目指している人であれば、俳優というのは作品に出演して素晴らしい演技をした対価として金銭的報酬を得ている認識のはずなので、なんで逆にこっちがお金を払わないといけないの?と心情的には思ってしまいます。
が、なぜこんなことになっているのか?その疑問も「ビジネス」視点で見えばある意味、仕方がないとは思えてくる事情があります。
そもそも仕事の数が少なすぎる
私の情報発信の内容を読んでくれた方であればこれだけは押さえてほしい、知っておいてほしいのが演劇やエンタメ関連の仕事というのは他の業種と比べてあまりにも少なすぎるということです。
ちょっと有り得ない例えになりますが分かりやすく言い表すと・・・、
コンビニで働きたいと思っているが、自分の住む県にはコンビニは一軒しかなく既にその店には十分に働き手がいるため働くことができない・・・といった具合です。
俳優をやりたいと思っている人数に対して働ける場所が少なすぎる、この実態を受け入れてしまうとどうなるかと言いますと、いくら俳優を目指して演技の勉強に励んでも、いくらその人が優秀な可能性を感じさせる人材であったとしても出演機会は一生訪れないままただ時が過ぎていくだけというなんとも恐ろしい事態が待っています・・・😭
・・・仕事の数は少ないけど演じたい、ステージに立ちたいという人はたくさんいる・・・ならタダ働きでもいいならやる?
状況としてはこんな流れになってもおかしくはないのです・・・😓
商品の価値というのは需要と供給のバランスで決まります。当然、需要に対して数が少ないのであれば値段は高くなりますし、逆に供給できる数は多いのに欲しい人が少ないのであれば値段は下がります。
飲食店なら欲しい従業員の人数に対して供給が追いついていないので最近はさらに時給が上がっていますが、俳優は残念ながら異常な供給過多のため0円どころか、チケットノルマを達成しなければその分は自腹と考えればマイナススタートというなんとも悲しい扱い・・・すなわち作品出演をしたかったら逆に演者自身がお金を払ってくださいと言われているのです。
まだ無名の俳優は自分のこの市場での価値は「ゼロorマイナス」スタートというのを受け入れなければならない
個人的にはこれが俳優など芸能の世界は非常に厳しいと言われるゆえんだと思います。いくらやっとの思いで作品に出演してもかけた時間、労力に見合った報酬を得ることができないという意味で。だから殆どの人が体力的にも精神的にも持たずやがて諦めていくのだと思います。
チケットノルマの存在も含めてこの事情を予め知った上で目指すのであれば良いですが、現状はそうとは知らず無邪気に目指してしまう若者も少なくないので場合によっては人生を踏み外すきっかけになるのでご注意を・・・。
私はこの点をいつかの記事ではこの世界の問題点として挙げました。しかし、そういう厳しい現実があるもののビジネス視点で見れば最初は赤字なんていうのは当たり前です。
新しい事業を始めたとして、いきなり初年度から黒字になることなんてそうそうありません。ある程度、長い年月をかけて黒字に持っていくのです。ましてやビジネス初心者であれば。
そう考えれば、最初は作品出演のために出演者自らお金を払うという行為も決して的外れなことをしているとは言えないのですね。
例えばですけど・・・、
深夜帯に地上波で放送されるテレビドラマのレギュラー枠を1枠、200万円で売りますと持ちかけられたら正直、悪い話ではないかも・・・なんて思ったりしませんかね?
金額からして安い買い物ではないのになぜ惹かれてしまうのか?それはこの出演が自分にとってキャリアアップのきっかけ、良い宣伝になるからと思えるからではないでしょうか?
ビジネスを新しく始めたら最初にやることの一つに己の存在、ビジネスを世に知らしめるために宣伝・広告があります。CMを流したり電車、新聞の広告欄に出稿したり、雑誌で取り上げてもらったりとメディア露出をとにかく増やすのです。
同じように俳優だってなんで作品出演に躍起になるのかと言われたら、そうしないと自分の存在が世の中に知れ渡らないからのはずです。そう、つまり俳優にとって舞台なり映画、ドラマに出演して観客、大衆の前に出るというのは仕事としての位置付けのみならず自身の宣伝という意味も含まれているのです。
そういう風に捉えたら作品出演のためにお金を払うという行為は=広告費にお金をかけたとなりますので間違ったことはしていないと言うことができます。
そのような行為を繰り返していくうちに徐々に自分の認知度が高まり、もちろんこの人は素晴らしいパフォーマンスを約束してくれると評価も上がりやがてはこちらが待っていても出演オファーが来る状態になることを目指すのです。
そしていずれは出演するだけでも報酬が入るようになって、売れている俳優の仲間入りを果たすと・・・。
「まだ無名、実績の無い内は作品出演はお金を払わないと得ることはできない」とここまでを読めばなんとなくでも理解できたと思います。
しかし、ここでもう一つの問題があります。もしかしたらこの問題があるから俳優達もチケットノルマ制に反感を持っている節すらあります。それが・・・、
こちらがお金を払ってまで出演する価値のある作品ってどのくらいあるの?
という問題・・・😓
はい、正直多くはないとは断言できます💦
この出演者がチケット代、自己負担という名の「広告費」を払って自分を舞台に立たせてもらう、この構図はインターネット上でサイト運営して広告収入を得るに近いものがあります。
例えばブログを書いて広告収入で稼ぐ場合はどうすれば良いかと言われたら、まずは自分が運営するブログのアクセス数を増やさなければいけません。それで見事に一日のアクセス数が最低でも100万はいくブログが出来ましたとなれば、非常に価値あるブログと見なされて「おたくのブログにうちの広告を貼らせてもらえませんか?」とどんどん広告が集まるわけですね。
「ここは広告費を払う価値のある媒体か?」その判断基準に当然、その場所に普段どれだけの人が集まって来るのかは大きな要素です。世界的に有名な渋谷駅に広告を出すのと、地元の人しか知らないような知名度の低い駅に広告を出すのとでは全然価値は異なるのと一緒です。
これを演劇の舞台に置き換えれば、その舞台ってどのくらい集客が見込めるの?という話になるわけですが・・・、そもそも俳優にチケットノルマを課す=集客は任せたと丸投げしている所もあると聞くので、そうなってくるとそれは「おかしい」となると私は思います。
ビシネスは双方がウィンウィンなのが基本です。
俳優は自身の宣伝になることを期待して出演機会をお金で買う、なら企画者はその期待に応えて素晴らしい舞台、映画、ドラマなりを制作しなければならないわけですが、俳優だけが損をしている場合が散見されます。
なぜチケットノルマを出演者に課すのか?
その実際の意図として企画者側が損をしない、赤字を出さないための予防線だというのが一般的だと言われています。
劇団であれば次回も舞台を上演するための資金を確保する、最悪の所だとはなからクリアできないであろうチケットノルマを設定して俳優からお金を巻き上げるのが目的の舞台もあります。
要は俳優の宣伝、ステップアップのきっかけという点については知ったこっちゃないとコンテンツ企画者は思っているわけですね。
なんのために作品を作っているのか?
別に舞台、コンテンツ制作サイドが俳優の将来のことを気にする必要はないと思います。ただ個人的には素晴らしい、上質なコンテンツ、舞台をお客さんに届けるという情熱は当たり前のように持つべきだと思います。
「出演者は無名だけども面白い作品になっています!」
このような気持ちで作品を作り上げたのであれば一番集客に力を入れるべきなのは出演者よりもコンテンツ企画者ではないでしょうか?
その想いが結果的に出演した俳優の価値も同時に上がるに繋がるはずです。
俳優というのは基本的に素晴らしい作品、ヒットした作品に出演しないと知名度も価値も上がりませんので制作サイドはとにかく観客の心をうつ作品を作ることだけに専念すればいいのです。
それが無いのであればそれはお金を払ってまで出演する価値のない作品となるわけです。
つまらなすぎた、時間の無駄、チケット代を返してほしい、とたまに知り合いの俳優と話すと最近観た舞台、映画のクオリティの低さに不満を言い合うことはよくありました。
集客の話をする以前に多くの劇団、団体で素晴らしい作品を作り上げていることができていないのが現状だと思います。
と、先ずは大前提である素晴らしい作品を作っている劇団、団体と関わるべきだということになります。
ここまでをまとめると・・・
演劇界を始めとするエンタメ業界に存在する「チケットノルマ」
ノルマを達成しなかったら出演者自身が自腹というのはおかしいか?という切り口でここまで書いてきましたが、ここで出す結論としては俳優の需要と供給のバランスの問題で仕方がない面もあるとなります。
ただし、それは俳優が出演機会をお金を払って得ることによってそれなりの宣伝効果が見込めることが条件になります。
お金、広告費を払ったのに全然その額に見合った宣伝効果が期待できないのであればビジネスの観点からみれば「おかしい、理不尽だ」と言えます。
ご自身がチケットノルマが課せられる舞台に出演する時にはこのような基準のもと価値があるのか、ないのか?判断するのが良いと思います。
しかし、そのような宣伝効果が見込める舞台自体が少ないという問題もあるので、先ずは集客力があるのか、ないのか?よりも素晴らしい作品を作り上げることにひたむきに努力している所なのかを見ていきましょう。
終わりに〜チケットノルマがある所ばかりではない〜
無名のうちは出演者がお金を払って出演機会を得ている現実がある、しかもそのコストを払っただけの宣伝効果も見込める舞台、作品も少ない・・・そんな感じで話を締めることになるのでどれだけこの世界で稼ぎを得るのが難しいのか身にしみたかと思います。
ただそんなチケットノルマが課せられる舞台ばかりではありません。最近だとそんなの売れ残った恵方巻、クリスマスケーキをアルバイトに買い取らせるブラック企業となんら変わりがないと批判もあり減っているとも聞きます。
現に私もチケットノルマが無い上に外部からの出演者ということで一枚目からチケット代の数十パーセントを還元してもらったこともあり、比較的に待遇の良い劇団、団体もあるはずです。
他にもチケットの売り上げ枚数によって変動があるが出演者、個人がどれだけ売ったかに関わらずギャラが支払われる舞台もありました。
こういう待遇の舞台というのは企画者側から出演依頼があった場合で多いんですよね。さすがに向こうから頼んでおいて、こちらも身を切ってくださいというのは道理としておかしいので当たり前といえば当たり前です。
酷い話も聞く中で自分は明らかに大損をした経験がなかったのも、素晴らしい作品、コンテンツを作ることに情熱を注いでいた人だけと関わったからだと思います。
気持ちの良い俳優活動の一歩としては自分がこの劇団、この人が携わる作品に自分も関わりたい思える場所を探すことだと私は思います。
では、今回は以上になります。最後までお読みいただきありがとうございました。
このように演劇、エンタメの分野に「ビジネス」視点を加えて新しい見方で情報発信していますので他の記事を宜しければ目を通してみてくださいませ。
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また、今回の記事に関連する記事だとなぜ演劇、特に舞台は儲からないのか?その理由を需要と供給のバランス以外の視点から詳しく解説した記事がこちらになります↓
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