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【エッセイ】失言

 失言というか、やっちまったというか。

 とにかくすっかり忘れていた。
 5分前になって、人と会う約束を思い出した。
 わたしは勢いよく席から立ち上がり
「忘れてたでや!」
 となかなかに大きな声で言ってしまった。
 視線を感じてふと我に返る。
 職場のおじさんたちが苦笑いしながらこちらを見ていた。
 やっちまった。つい、出ちまった。
 念入りにかぶったネコ(あるいはウサギ)の着ぐるみがずるりとはがれそうだ。背中のファスナーはもう開いているに違いない。
 大きな声出してすみませんと言うと、勇ましいな、と笑われてしまった。
 ちなみに、語尾にでやとつけるのは方言みたいなもので、主におじさんが使う。農家とか漁師のおじさんたちが多いと思う。

 ああ、「忘れてた」までにしとけば良かったのに。「でや」までつけてしまった。反省会をしても、言葉は取り消せない。
 そんな金曜日の午後。今日はハードだったから仕方ない、と自分をなぐさめる。
 あとでおいしいものでも食べようじゃないか。


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