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【エッセイ】すき

 好きがどこかに行ってしまった。
 何が好き?どこが好き? そんな簡単なことも答えられない。
 嫌わないようにしていたら、好きもわからなくなってしまったみたい。つまらないというか、さみしいというか、情けない。
 何を選ぶにも、感性でなく値段とか大きさとか栄養で選ぶ。だからべつに特別な思い入れもないし、好きでも嫌いでもない。それほど楽しくもない。
 そういうとこだぞ、と自分に言ってみる。
 何が食べたい?どこに行きたい?何が着たい? 問われるのは苦手だ。答えられないからだ。でも、答えが出なくても自分だけは根気よく問い続けなければならないだろう。そして、自分に好きなものを与えよう。
 好きがわからないままでは、世界が止まっているのと同じだ。
 子どものころ、面白おかしく生きたいと願っていたことを思い出した。喪った好きを取り戻すことができればそれに少しだけ近付ける気がする。

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