【エッセイ】かまぼこ
正月の朝ごはんのあと、姉が「ちょっと、かまぼこちょうだい」と言うので、紅白をふた切れずつ渡した。
それを持って外に行ったあと、姉から動画が送られてきた。
馬小屋の廊下で、ねこは姉の姿を見ると背中を見せて小走りに逃げる。ちょっかいを出されるのが嫌なのだ。
そのねこを、呼び止める姉。ねこは止まらない。半ば強引に鼻先にかまぼこを突きつけてやっとこちらを向いた。
ひと嗅ぎふた嗅ぎ、はっと気づいたように、ねこはかまぼこを食べはじめた。姉はわざと端をつまんだまま食いちぎらせて、少しずつ食べさせる。
ねこはかまぼこを気に入ったようで、姉はかまぼこを食べるねこを気に入ったようだ。私に「動画見た?」と嬉々として聞く。
その後、私もかまぼこをふた切れ持ってねこの元に行った。ねこは警戒した様子で渋々こちらを見上げたが、かまぼこを認めるとにゃあと鳴いた。あとは姉と同じようにかまぼこの端を持っているだけで勝手に食べていく。
私はかまぼこがけっこう好きなのだが、これからは少しねこのために残さなくてはなるまい。たぶん姉も何食わぬ顔でかまぼこを少し残すだろう。そのかまぼこのゆくえは、私たちとねこのみぞ知る。
日向でうずくまる丸っこいねこの姿を見て、姉が言う。「あいつ、見た目もかまぼこだな」
かくして、ねこのことを「かまぼこ」と呼ぶ今日このごろである。
そういえば、うちのペットの名前の最後には「こ」をつける慣例があったっけ。ますますふさわしい名前だ。
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