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【エッセイ】ぼっこの「こ」

 子どものころ、姉と外で遊ぶときにはたいてい「ぼっこ」を持ってあるいた。自分の背丈ほどのヨモギの茎を根元から折り、枝葉を取り除けば、長いぼっこの出来上がりである。
 ぼっこは時に剣となり、魔法の杖となり、水辺をつつく道具となった。

 学生になって方言の域を出て生活したとき、ぼっこが何か伝わらず、他にどう言い表して良いかわからずにしばらく考え、やっとわかった。
 ぼっこの標準語は棒で、ぼっこを漢字で表現すると「棒っこ」だったのだ。え、ぼっこってみんなが使ってるんじゃないのと言葉に関しては最大のカルチャーショックを受けた。
 地元では、ぼっこの意味がわからない人なんてひとりもいなかった。

 ほかに「こ」をつけて呼ぶものというと、カンコくらいである。缶のなかでも、せんべいやお菓子が入っているような大きな缶をカンコと呼んでいた。
 漢字では「缶こ」と書くのだろう。漢字で書くなんて、考えたこともなかった。
 そういえば、動物の子どもをこっことも言う。子っこと書く。

 地元で生活する今、ふだんは方言全開でしゃべるので、もちろんぼっこも使い放題である。お年寄りと話す場合などは、方言を使ったほうが伝わりやすいことも多い。
 ときどき「こ」って何だ?と考えるときがあるが、こはこである。誰が何と言おうと、この辺りではぼっこはぼっこで、カンコはカンコなのである。

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