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暗闇で私を支えてくれたものー「覚悟を決める」

病気が確定するまではほぼ毎晩、一人になる瞬間を見つけては不安で声を上げて泣いていました。どこかに助けを求めたい!専門的な知識を持つ人に、あれこれ相談したい。でも主治医とはゆっくり話せない。どこに、誰に頼ればいいの…!!

そんなとき、ふと頭をよぎったのは「マギーズ東京」の存在です。東京・豊洲にある、がん患者や家族、医療関係者らが集える場所です。専門知識を持つ看護師や心理士の方と友人のような距離感でお話でき、ただふらりと訪れることも可能です。

以前、雑誌で紹介されていた記事をたまたま保存していました。その記事は、マギーズ東京の共同代表である鈴木美穂さんが20代で乳がんを経験し、その後マギーズを立ち上げるに至った経緯を紹介したものでした。読んだときはまだ私の病気が判明する前でしたが、「私もいずれ、このような状況になるかもしれない。その時に必要になるかも」と何かしら予感のようなものを感じて、保存してあったのです。

今がその時だ!直接、行ってみよう…

訪れた時はちょうど、訪問自由な「オープンデイ」がマギーズで開催されていました。到着したのは終了時間ぎりぎりでしたが、道端の案内板を片づけようとしていた男性の方が「まだ大丈夫ですよ、どうぞどうぞ」と駅からの道のりを優しく案内してくださいました。

行く前の私は、がんじゃないけど行ってもいいのか、門前払いされないだろうか、どんな風に話せばいいのか門前払いされないかと、ものすごく緊張していました。ですが、その方の温かな対応で心がすっとほぐれました。


マギーズ東京の内部(マギーズ東京のウエブサイトよりお借りしました)

マギーズは窓の外には木立や川を眺めることができる、開放的な空間です。室内は木材を使ったナチュラルなインテリアにカラフルなクッションがアクセントになっています。おしゃれだけど居心地の良いカフェに来たような、または高原にある知り合いのおうちに遊びに来たような…そんなくつろげる雰囲気の中、気持ちもほどけるのを感じソファにゆっくりと身を沈めました。

スタッフの方がついてくれて、お茶を飲みながらお話しました。ここでは話したくなければ自分の説明も何も話さなくてよいのです。でも、静かにほほ笑むスタッフの方を見ていたら、堰を切ったように言葉が飛び出しました。「私はがんではない、別の病気です。私にとってはわけがわからない病気で理解できず、どうしたらよいかわからなくて、途方に暮れてます。治療法も医師が決められず、右往左往しているんです」。誰にも言えず喉元まで膨れ上がっていた不安や不満が、とつとつと口からこぼれます。

スタッフの方は穏やかな笑みを浮かべながら、静かに話を聞いてくれます。「どんな状態になれば手術が必要なのか、それがわかるとよいですね」。冷静に論理的に、でもさりげなく今後の指針を示してくれて、私の心も徐々に落ち着いてきました。何よりも、素敵な環境のマギーズにいるだけでとても癒された気がしました。

病気になっても、病院に行くのは日常のほんの一瞬。その時以外に膨大に広がる「日常」の中で、病気とどのように付き合えばよいのか、日常をどう生きていけばよいのか。病院に行くだけでは解決できない大きな課題です。でもマギーズに来たことで、持て余していた不安や不満も何かしら解決につながる道筋が見えてくるような気がしました。

「何かあれば、この場所があるから大丈夫」。そんな思いが、ちょっと私の心持ちを強くしてくれました。

また、マギーズとは別に心の支えになったのは、イモトアヤコさんでした笑

何気なくテレビ番組「世界の果てまでイッテQ!」を見ていたときのこと。イモトさんが海外で、空中ブランコか何かに挑戦する回だったと思います。何度練習しても恐怖でうまくいかず、途中で「もういやだ~」と号泣してしまいました。世界各地で猛獣と対峙し、名峰登山に何度も挑戦しているイモトですら、不安や恐怖に屈するときもあるんだなあ、と私も一緒にもらい泣きしていました。

そうだよね、人間だもん、弱い部分もあるよね。泣いて、撤退するのもありだよね。

でも、イモトはひとしきり泣いた後、おもむろに「また、やる」と再び練習を再開したのです。本番では残念ながら成功しませんでしたが、そこに至るまでの一連のイモトの姿を見て、私はとても勇気づけられました。

泣きじゃくりながら弱音を吐くもろい部分を吐露した後、再び挑戦する覚悟を決めて強さも見せてくれたイモト。どちらも真のイモト、そして人間の姿。その姿は、たとえ打撃を受けてもまた挑戦することはできるし、その先には新しい可能性が広がっているんだと教えてくれました。だからこそ人間って愛おしい、素晴らしいんだな。結果がどうであれ、そこに至るまでの紆余曲折や起伏があるからこそ、より豊かな人生になるんだな、きっと。

私もわんわん泣くこともあるけれど、病気がわかった以上、覚悟を決めてこの病気と向き合うしかない。完治しないのなら、共存する方法を模索すればいい。疲れたらいったん撤退するなり休むなりして、また改めてできることを考えればいいんだな。そんな心境に達しました。

イモトアヤコも、毎回そこまで考えて試練に挑戦してるわけではないと思いますが笑

どんな病気であれ、この先どんな状態になるのであれ、しぶとく生きてやる。みっともなくても、はいつくばってでも、絶対に楽しんで最後まで生きてやる!なんとなく、そんな決心を勝手に固めました。

また、歩き出そう。

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