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ベクトル解析から力場を理解すること -3-

計算力学を扱う上で必ず通ることになる「解析学」の話題から、ベクトルを併用した「ベクトル解析」に関する連載記事です。

ベクトルの話は高校から登場しますが、関数(任意の独立変数に従い数値の変動を起こすもの)という視点からベクトルを扱います。ベクトル場やスカラー場と呼ばれる「場」が多岐に渡り登場します。

前回はベクトル解析の主要事項と言える「勾配」「発散」「回転」について解説しました。

今回はベクトル解析の応用と言える定理のひとつ「発散定理」について解説します。発散定理とは閉曲面Sと閉曲面により形成される体積Vをベクトル場Aと積分で繋げた定理です。

$${\int_{V}div(A){\,}dV=\int_{S}A{\cdot}n{\,}dS}$$

ここで、左辺の積分内の記述はハミルトンの演算子(前回参照)とベクトル場Aの内積を意味します。今回は発散定理の導出過程の話を中心に、ノートに別途でまとめました。


発散定理の導出過程

発散定理の定式化は先ほど書いた通りです。導出過程では閉曲面をふたつの曲面に分けてから、体積分の場合と面積分の場合でそれぞれ計算を進めることで、発散定理の両辺の整合性を取ります。

両辺が数式として一致することを証明したことで、発散定理が現実のものとなりました。証明の後は簡単な計算問題も用意しました。

発散定理を物理的な観点から見てみます。ベクトル場は物理の流れだと考えてください。ここでは簡単に水の流れとします。

ベクトルの発散は物理量の湧き出しや吸い込みを意味します。そして、発散定理の左辺の意味は「領域全体の物理の流れの増減」を表します。湧き出しや吸い込みが無いとすると、領域全体の流入出も存在しないので、左辺はゼロになります。

一方で、発散定理の右辺は「領域の表面からのベクトルに関する法線方向成分」と言えます。つまり、領域の表面全域で物理量が通過する総量になります。

領域全体の物理量の増減=領域表面の物理量の出入差

上記が発散定理を直感的に表した表現になります。次に発散定理の経験から何ができるかを見ていきます。

発散定理の応用例

発散定理を利用して球体の体積(公式)を導き出してみます。ここで、球体の表面積は既知であるとします。

 球体表面を指すベクトルrの成分を三角関数を駆使して表現しています。具体的な計算過程は省きますが、三角関数の公式(次式)を多用します。

$${sin^2x+cos^2x=1}$$

単位法線ベクトルはベクトル関数を変数(uとv)で偏微分します。ここから外積を求めることで、何とか目標を達成できます。

発散定理を用いることで、体積分と面積分を繋げることができ、最後は表面積の情報を基盤に体積(公式)を求めます。

おわりに

今回は発散定理の話を中心に進めました。物理的なイメージを付けやすい話題でしたので、数式だけでは難しい場合には、何かの助けになればと思います。

他にもベクトル解析をベースにした定理があります。次回はベクトル場による面積分と線積分を繋げる「ストークスの定理」について話を進めます。

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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事があなたの人生の新たな気づきになれたら幸いです。今後とも宜しくお願いいたします♪♪
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