ベクトル解析から力場を理解すること -2-
計算力学を扱う上で必ず通ることになる「解析学」の話題から、ベクトルを併用した「ベクトル解析」に関する連載記事です。
ベクトルの話は高校から登場しますが、関数(任意の独立変数に従い数値の変動を起こすもの)という視点からベクトルを扱います。ベクトル場やスカラー場と呼ばれる「場」が多岐に渡り登場します。
前回は基本事項の話題として「ベクトル関数」の意味と様々な「場」の用途について扱いました。
今回はベクトル解析の主要事項と言える「勾配」と「発散」と「回転」について、詳細を書くことにします(凡例:Aはスカラー場・Bはベクトル場)。
物理学の領域に繋げることを考えると、一般論は3次元空間を対象にしていることが多いので、ここでも3次元空間を前提として扱います。
スカラー場の変換(勾配)について
先に記した「勾配」と「発散」と「勾配」について、下記のノートにまとめました。上記の書き方の他に、偏微分の指示記号であるハミルトンの演算子(ナブラ)を使います。
勾配はスカラーをベクトルに、発散はベクトルをスカラーに、回転はベクトルを別のベクトルに変換します。両者がひとつの式に混在することはありません。ここは注意が必要です。
勾配とは、スカラー(A)の傾き(変化の割合)を各軸方向に分解したものです。大雑把には1変数関数の微分を3次元に拡張したものと考えてください。勾配を求めることで、各方向における変化の度合いを知ることができます。
なお、スカラー(A)はあくまで分布に過ぎません。上記のノート内では分布内の各点のうち定数(c)となる点を線で繋ぐことで曲面を形成します(スカラーの等位面と呼ばれます)。
ベクトル場の変換(発散・回転)について
続いて発散について。発散はハミルトンの演算子(ナブラ)とベクトル(B)の内積で求められます。
$${div(B)=\nabla{\cdot}B}$$
発散はその符号(正負)で意味が変わります。正であれば、その点においてベクトルが発生していることを表します。負であれば、その点においてベクトルが収束していることを表します。
例えば、磁石が発する磁場を考えてみると分かりやすいです。発散は下記のように分布として描きますので、これはスカラーの性質に対応します。つまり、発散はベクトルの流れを表現するパラメータと言えます。
続いて回転について。回転はハミルトンの演算子(ナブラ)とベクトル(B)の外積で求められます。
$${rot(B)=\nabla{\times}B}$$
回転はベクトルの流れ(回転)の様子を表します。外積はベクトルなので方向が必要になりますが、これは「右ねじの法則」に従うものとします。また、回転から得られるベクトルがゼロである場合は、回転は一切発生しません。
この磁界(ベクトル)の回転は「右ねじの法則」から考えて、正であることが分かります。
勾配・発散・回転に関する演習問題
最後に実際の計算例(演習)を記しておきます。勾配に関しては合成関数の微分法の応用を使います(凡例:Aはスカラー場・Bはベクトル場)。
$${\nabla{f(A)}=f'(A)\nabla{A}}$$
また、発散と回転はスカラーとベクトルの合成関数に関する対応を使います。
$${\nabla{\cdot}AB=(\nabla{A}){\cdot}B+A(\nabla{\cdot}{B})}$$
$${\nabla{\times}AB=(\nabla{A}){\times}B+A(\nabla{\times}{B})}$$
上記公式を踏まえて、演習問題に取り組みました。
ベクトル解析では、ベクトル場とスカラー場の使い分けが重要なポイントです。
先ほども書いた通り、両者がひとつの式に混在することはありません。入力にベクトルとスカラーのどちらが使われるか、出力はどうなるか。そこを意識するだけでも理解度に違いが生まれると思います。
おわりに
今回はベクトル関数を踏まえて、勾配と発散と回転の扱いを開設しました。実際の計算(演習問題)にも取り組みました。
それぞれの性質は物理的なイメージを掴むことがポイントになると思います。今回の計算方法は電磁気学や流体力学で多く登場するので、後々で避けて通れない重要事項になります。
今回で紹介した3つの方法を応用した諸定理もありますので、後々で紹介していければと思います。
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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事があなたの人生の新たな気づきになれたら幸いです。今後とも宜しくお願いいたします♪♪
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