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熱力学から熱のエネルギーの変換を学ぶ

機械工学系の大学(学部)に進学すると必ず通ることになる、通称「4力学」について。機械力学・熱力学・流体力学・材料力学の4科目を指します。

前回はその4力学から「流体力学」について紹介しました。液体や気体の流れに関する法則から、流体の挙動から生まれる力について整理しました。

今回は「熱力学」について紹介します。熱力学は目に見えない現象を扱う学問であるため、直観的に理解しにくいかもしれません。熱によるエネルギーから力を生み出す(変換する)ことを考える学問です。

蒸気機関車が好例として取り上げられることが多いですが、実際にどのように動いているのか、早速見ていきましょう。

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熱力学の全体像

恒例として蒸気機関車を取り上げながら、熱力学の意味について説明します。

熱力学とは「熱が力学的な仕事を行うこと」について考察する学問です。蒸気機関車は、石炭や重油の燃焼により水を沸騰させ蒸気をつくります。そして、蒸気が生み出す力を利用して動力をつくります。

つまり、熱が持つエネルギーにより、蒸気機関車は仕事を行います。これは自動車も同様で、ガソリンが燃焼する際に発生する熱でエンジン内のピストンが往復運動を行います。

このことから、熱は仕事を行うためのエネルギーであることが理解できます。

この現象をもう少しミクロなレベルで見てみます。蒸気機関車や自動車は燃料を燃やすことで力学的エネルギーを生み出します。しかし、熱が直接ピストンを動かしているわけではありません。

ピストンを動かすためには、空気を高温に熱して膨張させます。温度は原子や分子の運動の激しさのことを表します。つまり、熱は空気(気体)を介することで、運動エネルギーに変換されるのです。空気(気体)の温度が上がると、空気を構成する原子や分子の熱運動が激しくなり、結果として空気が膨張するのです。

一方で、熱を与えずにピストンを手で押して内部の空気を圧縮してみます。すると、シリンダー内部の原子や分子の運動が激しくなり、温度が上がります。逆にピストンを引張ると、原子や分子の運動が遅くなり、温度が下がります。

このことから、原子や分子の運動の激しさと温度の間には、一定の関係性があることが理解できます。

熱力学の法則

熱力学における自然法則が4つ存在します。それぞれを簡単に解説します。

第零法則:系Aと系Bおよび系Bと系Cの間に熱の移動が無いならば、系Aと系Cの間でも熱の移動は無い(熱平衡の法則)

各系の間で温度差がゼロならば、熱の移動は存在しないため、各系における熱力学的な現象も発生しないということです。

第一法則:外界から与えられた熱と仕事の総和は、系の内部エネルギーの増加分に等しい

ここで、内部のエネルギーとは「分子の運動によるエネルギー」「分子間で働く力によるエネルギー」の合算です。図で表現すると、下記の通りになります。

第二法則:熱は自然に高温の物体から低温の物体に移動し、仕事は自然に熱に変換される

温度(熱)について、基本的に高温から低温に移動することは、容易に想像できると思います。逆に低温から高温に移動することはありません。これは「不可逆の方向性」とも言います。

仕事に関しても同じです。例えば、ピストンを押し込む仕事をする場合、シリンダー内部は高温になります。このとき、仕事は100%の割合で熱エネルギーに変換されます。

一方で、シリンダーの内部の圧力を増加させて体積を膨張させる場合(熱から仕事への変換)、熱エネルギーの100%を仕事へ変換することはできません。熱が空気中やシリンダー外へ逃げてしまい、仕事に結びつかない熱エネルギーが生じてしまうためです。

つまり「仕事から熱エネルギーへの変換」と「熱エネルギーから仕事への変換」には、どうしても乖離が生じてしまうのです。これも「不可逆の方向性」に当てはまります。

第三法則:絶対零度で完全結晶のエントロピーは全て等しくなる

エントロピーとは、物質(気体)を構成する原子や分子の分布が各種混合して偏在しているか、分布同士の差異が小さいか(安定しているか)に関係する数値です。

どんな物質(気体)のエントロピーも絶対零度下では等しくなる。つまり、物質内部の原子や分子の分布は同じであるという意味です。

おわりに

今回は熱力学について説明しました。目に見えない現象を扱うことから、直感的な理解はなかなか難しい。図的なイメージで理解することがだいじだと思います。

最後に、熱力学に関して参考にした書籍を2冊ほど紹介しておきます。

いずれも専門書よりはフランクな内容です。はじめての方も、より詳しく学んでみたいという方も、お薦めできます。

今回で「4力学」に関するお話は終わりです。機械工学の範囲の中でも重要視される学問ですので、いま学習中の方も、学び直してみたい方も、ぜひ参考にしてみてください。

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