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連続体力学に基づいた物理計算の話 -7-

物理学では「質点」「剛体」「連続体」という3種類の物体の扱い方が存在します。

特に、連続体は物体の質量、運動(並進と回転)、そして形状変化(変形)を考慮します。質点や剛体はより扱い方を簡略化した存在と言えます。

こうした物体の変形を扱う学問として「連続体力学」があります。連続体力学は固体だけでなく、流体の分野にも適用可能な古典的学問でもあります。

前回は変形問題の記述方法について見ていきました。主な指標に「変形勾配テンソル」を仮定して、そこから変形や運動に準じた法則性を見出しました。

今回は変形勾配テンソルを起点にした「ひずみ」のテンソルを見ていきます。実際に構造解析で使われる「有限要素法」にも登場する「微小変形理論」の話題について触れていきます。


ひずみテンソル(有限ひずみ)

連続体力学における変形問題を支配する指標が「変形勾配テンソル」です。これは2階テンソルであり、本指標から回転の影響(成分)を差し引くことで、変形の程度を定量的に理解することが可能になります。

具体的には、基準配置から現在配置における、位置の微分表記(ベクトル)の長さの差分(変化量)の2乗値に着目します。

そのひとつに、前回の「ストレッチテンソル」を利用した「有限ひずみテンソル」があります。これは、コーシー・グリーンテンソルを導出してから、それぞれに対応した有限ひずみテンソルを定義します。

有限ひずみテンソルは、後述する「微小変形理論」と異なります。微小変形の仮定範囲外の変形です。広義的な意味のひずみテンソルという理解になります。

2種類の有限ひずみテンソルである「ラグランジュ・グリーンひずみテンソル」「オイラー・アルマンジひずみテンソル」は、それぞれ基準配置と現在配置を起点としたひずみの考え方と言えます。

微小変形理論によるひずみテンソル

基準配置から現在配置にかけて変形が起こるならば、自ずと変位ベクトルが存在します。ここでは、変位ベクトルが非ゼロであるとして、連続体の変形が十分に小さいものと仮定します。

これが「微小変形理論」の基本ですが、物質表示と空間表示の区別が基本的に不要になります。加えて、変位の勾配(2次以降の項)は無視できる程に小さいことを合わせて仮定します。

こうすることで「ラグランジュ・グリーンひずみテンソル」「オイラー・アルマンジひずみテンソル」は、変位の勾配に関して対称成分だけが残ります。

このように、変位の勾配の対称成分を抽出した形を「微小ひずみテンソル」と言います。一方で、変位の勾配の反対称成分を抽出した形を「微小回転テンソル」と言います。これは、任意の2階テンソルは対称テンソルと反対称テンソルに直交分解できることに由来します。

また、変位ベクトルの空間微分(物質微分と同様の扱いでもある)を「変位勾配テンソル」と言います。変位勾配テンソルは、微小ひずみテンソルと微小回転テンソルの和として表現されます。

おわりに

今回は変形勾配テンソルを応用して「ひずみ」に関するテンソル(指標)の導出を中心に進めました。

この辺の物理的指標は、実際に有限要素法の解析でも見かける機会がありましたので、今回改めて詳細を知れて良い時間になりました。

実際に微小変形理論を伴う場合とそうでない場合の区別は必要で、とりわけ「ひずみ」に関する選定を間違えれば、判断も自ずと間違えることになるので、非常に重要な話だと思います。

次回は変形における「速度」の話に着目して、より変形問題の詳細な深掘りしていきたいと思います。

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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事があなたの人生の新たな気づきになれたら幸いです。今後とも宜しくお願いいたします♪♪
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