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【#11】材料力学の強化書 〜材料力学で扱う単位系〜

今回のトップ画像は高知城です。昔は「材料力学」という学問などは存在しませんでした。そんな時代の最中でも、こうして頑丈なお城を建築していたのです。

経験則や肌感覚というところかもしれませんが、どのようなバックグランド(背景)を駆使して設計していたのか、興味が湧いてきます。

さて、材料力学の話に戻りましょう。

前回は簡単なトラス構造について扱いました。トラスに関する計算の詳細は「構造力学」という分野の話になりますが、ここではトラスの微小変形を計算する方法について話を進めました。

今回は少し寄り道をしまして、単位系の話をしようと思います。これまで「応力」「ひずみ」をはじめ、様々な材料力学の用語が登場してきましたが、基本的に文字式という形で話を進めていました。

実際の設計では数値に落とし込む必要があります。その際に単位系の扱いを間違えると、見当外れな答えを出してしまいます。ここで単位系(単位換算)をきちんと理解し、実用時に備えることにしましょう。

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SI単位系とは

物体の長さ、重さ、時間などは世界中どこで測定しても同じ値になることが原則です。それらを表す単位が「国際単位系(SI単位系)」です。

SI単位系は「基本単位」と「組立単位」の2種類に分けられます。基本単位は次の6項目です。

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組立単位は基本単位を組み合わせて、乗法や除法の数学記号を用いて表す単位です。

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組立単位には、固有の名称をもつものもあります。例えば、力はニュートン(N)ですし、エネルギーはジュール(J)です。いずれも基本単位から作られます。応力もこの固有の名称をもつ単位に含まれます。

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接頭語に注意

SI単位の10の整数乗倍を示す文字を「接頭語」と呼びます。工学ではよく使われるものです。

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専門書では、読者はこの辺を理解していると想定しているので、いきなり接頭語が出現することがあります。最初は覚えることが大変かもしれませんが、次第に慣れてくる部分でもあるので、日頃から常に意識するようにしましょう。

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応力とひずみの単位

物体内部で変形に抵抗する力(内力)を単位面積当たりに換算した値を「応力」と定義しました。つまり、単位的には力を面積で割るということですね。

$${[N]}$$/ 面積$${[m^2]}$$=$${[N/m^2]}$$

そして、上記の組立単位をパスカル(Pa)とします。気圧(つまりは圧力)でよく聞く単位ですね。

$${[N/m^2]}$$=$${[Pa]}$$

一方、ひずみは変形量(長さ)を元々の変形方向の長さで割ります。同じ「長さ」で割るため、単位は存在しません。このような量を「無次元量」と呼びます。

その他には、縦弾性係数(ヤング率)や横弾性係数はフックの法則の式から見ても分かるように、

$${{\sigma}=E{\epsilon}}$$

であり、ひずみ(ε)は無次元量ですので、結果的に応力(σ)と同じ単位になります。

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実際の数値計算を見てみる

実際に数値を用いて計算の流れを追ってみます。

例題:長さ1mで断面積1㎠の鉄棒に、引張力1kNが与えられたときのひずみと伸びを求めましょう。

鉄棒に関しては、ここでは下記表の圧延鋼とします。

材料力学_#06_02

実際にフックの法則からひずみを求めてみます(まずは文字式を使います)。

$${{\epsilon}=\frac{\sigma}{E}=\frac{P}{AE}}$$

ここで、断面積(A)と引張力(P)とヤング率(E)を問題文で与えられた数値として代入します。接頭語の換算に注意します。

$${{\epsilon}=\frac{1.0×10^3}{(1.0×10^{-4})*(2.05×10^{11})}=0.488×10^{-4}}$$

また、伸び(λ)はひずみから算出できます。元々の長さ(l)を問題文で与えられた数値として代入します。

$${{\lambda}={\epsilon}l=48.8×10^{-6}[m]=48.8[{\mu}m]}$$

こうして答えの数値に辿り着きました。こうして現実的な値を見ることで、感覚が次第に身につきます。ぜひ他の書籍にも当たりながら、数値的な感覚を磨き続けてください。

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おわりに

今回は単位系の話について触れました。実際に数値を用いて解いてみると、大雑把ながらも数値的な感覚が身についていきます。

実際の設計の現場では避けて通れない道です。接頭語など覚えることが多いかもしれませんが、経験的に修得するようにしましょう。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。実際は非定期ですが、毎日更新する気持ちで取り組んでいます。あなたの人生の新たな1ページに添えるように頑張ります。何卒よろしくお願いいたします。

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