小説・成熟までの呟き 50歳・1

題名:「50歳・1」
 2040年5月10日、美穂は50歳になった。その記念に、所有している農園に机と椅子を置いて、同級生で親友の結衣と2人きりで会話をした。「結衣、久しぶりー!」「美穂もー!この大尾島にも久しぶりに来たなあ!」というやり取りから始まった。「結衣、最近どう?」に対して美穂は「この前子供にあったんだけど、もう私より背が高くなっていて驚いたなあ。」結衣は、「息子は製菓学校に通ってる。美味しい洋菓子を作りたいんだって。娘は今年高校に入学したんだけど、将来は新幹線のパーサーになりたいんだって。子供の成長ってはやいよね。」美穂は、「そうだね。結衣はさー、母親になれてよかった?」結衣は、「私は最初の頃、自分みたいな弱い人間が母親になれるのかなあって思っていた。でも夫の修治をはじめいろいろな人達が支えてくれたから、なんとかやってこられたのかなあ。」美穂は、「そっかー、私もそんな感じだったかなあ。ところでさ、前から気になっていたんだけど、結衣が育った都会ってどんな所なの?私は今一歩、慣れなくて・・。」結衣は、「周りは家や人ばかりで窮屈だったなあ。私は毎日のように習い事をしていた。今思えばよくやっていたなあ。」美穂は、「凄ーい!さすがだね!」結衣は、「ありがとう。でも、まだ小学生だった頃に周りの人が「どうせ地方の子は遊び呆けているから。」みたいなことを言ってて、驚いたなあ。今思えばなんでそんなレッテルを貼るんだろうって。私は中学入試をしたので、その時はそんなに気にしなかったんだけど、その言葉にはずっと違和感があったかなあ。私が進学した中学校や高校って街中にあったんだけど、何かそのあたりにいると自分達は都会にいるから凄いんだっていう優越感にやたらと浸る人がやたらといて違和感があったなあ。だからかなあ、そういう声に反発している自分がいたんだ。それにどんな習い事よりもペットの犬と触れ合っている時間の方が楽しかった。「私の進路は周りと違うものにするんだ!」っていう考えを持つ基盤になっていたのかなあ。今は動物に関する仕事はしていないけど、家にいる犬と接する時間が楽しいなあ。」と言った。美穂は、「結衣がそんな経験をしていたなんて嬉しかった。私がその言葉を聞いていたら頭に来ていただろうなあ。でも私結衣と出会えてよかった。結衣のような育ちのいい人でも、自然や生き物に対して優しく考える人で・・。私ってさあ、山浜市っていう結衣に比べれば田舎の場所に生まれ育ったけど、田圃や畑の近くにいると虫の鳴き声が聞こえたんだ。自然に生きる中での音に敏感に反応すると、感受性が豊かになるのかもなあ。子供もこの島で育ったけど、良い影響を与えたのかなあって思う。そういえば、結衣の髪ってずいぶん伸びたね!」と言った。結衣は髪の長さは、前は顎あたりだったのだがいつの間にか胸の下までになっていた。結衣は、「前はやたらと短くしたがっていたけれど、なんか飽きてきたから髪を伸ばすようになったんだ。するとこの前、息子に「お母さんって、綺麗だね。」って言われたんだ。この年でそんなことを言われるなんて思ってなくて、とても嬉しかったなあ。でも、美穂がそんな生き物に囲まれた環境で育ったなんて、羨ましいなあ。美穂ってさあ、周りの人を明るくする要素を持っているよね。私にはそれが羨ましかった。」と言った。美穂は、「えっ、そうなの?私はどんな仕草でも品があるように振る舞える結衣がずっと羨ましかったよ。私にはとてもそれほどにはできないから・・。これからもこうやって話し合える時があるといいね!」と言った。結衣は、「うん、これからもよろしくね!」と言った。

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