人間にとって個性とは何か?生命の進化とは何か?【感想】東京大学教授小林武彦「東京新聞 サンデー版」の解説

 9月19日の東京新聞サンデー版に、東京大学定量生命科学研究所ゲノム再生研究分野教授の小林武彦先生が生命の進化と人間の個性について書かれた解説が掲載されています。

 小林教授は、死なな生き物はいないと断言された上で、それは「全ての生物は進化の結果誕生し、その進化は、生まれて死ぬことの繰り返しで、引き起こされてきた」からだと指摘されています。

 それでは、進化とは何なのでしょうか?小林教授によれば、「進化は『変化と選択』によって長い時間をかけて起こ」るものだというのです。

 「『変化』は親とは違う多様な個体が生まれてくること、そして『選択』はその多様性の中から、たまたま生き残る個体が現れることです」とおっしゃっています。

 そして、なんと「この進化の原動力『変化と選択』は、もちろんヒトにも働いてい」るというのです。

 「ヒトでは、多様性を『個性』と言い換えてもいいかもしれません。」と先生は続けます。

 そして、この「個性を実現するために、親や学校、社会などによる教育が重要な役割を担います。ただ、難しいのは、『これがいい個性』みたな正解を誰も知らないということです。」

 もちろん、いい個性とは何かについて正解がないからといって、好き勝手に行動していいわけではありません。

「ヒトは社会性の生き物で、その中でしか生きていけません。なので、他人と協力することやルールを守ることの大切さは、しっかりと教える必要があります。それ以外でできることは、他人と違うことを肯定的に捉え、その人らしく生きられる環境を整えることです。実はこの、何が個性かわからないことが、多様性の一番の強みであり、予測不可能な未来を生きる大切な力なのです」と小林教授は文章を結んでいます。

 いい個性が何かについては正解がなく、むしろ、その正解のなさが多様性の一番の強みであり、予測不可能な未来を生きる上での大切な力となるという先生の主張は、今の社会を考える上で、実に多くのヒントを与えてくれているのではないでしょうか?

 いい個性とは何かについて正解はないのです。その人がその人らしく生きることをお互いに認め合い、敬い合う寛容な社会が、生物としてのヒトの生きる力を最大限、高めるのではないだろうか。

 ヒトがお互いの個性を認め合いその上で敬い合う社会は、自分とは違う他者を攻撃したり排除したりする社会よりも、ヒトの生きる力を高めてくれるのではないでしょうか。

 いい個性とは何かについて誰も正解を知らないのですから、どの個性が優れているか競い合ったり序列化したりしても仕方がないことなのです。それよりも、お互いの個性を認め合う多様性を誇りとする寛容な社会が、生物としてのヒトには必要なのではないでしょうか。

 いい個性とは何かについて誰も正解を知らないということが多様性の一番の強みであるという小林教授の主張には、目から鱗が落ちる思いでした。

 生命科学の視点で社会を見ることの大切さを教えていただきました。

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