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ドラマ撮影
むか〜し、昔。私がまだ、若くて若くてどうしようもなく、脳みそが明後日に向かってしまい、なにを血迷ったのか、役者なんぞをやっていた頃のお話。
「次はNHKです。よろしく」と、マネージャーさんから台本を手渡され、一路大阪城のほとりにあったNHKへ意気揚々ドラマの収録に行ったのでした。
当時目つきの悪さを事務所の社長に買われ、ヤクザ役やサラ金の取り立て屋なんて役しか回ってこなかったのですが、まぁ一応台詞付き、役名付きでギャラもそこそこ、バイト代程度にはなっておりました。
その時もやはり、ヤクザの手下の役。台本をパラパラと読んで、まぁ、取り立ててなんて事ない役でした。普通にやれば、NGなんて出るはずのない役回り。
しかし・・・そうは問屋が下ろさなかったのでごぜーます。
NHKの関係者通用門から事務所の名前と行き先を書いて、控室に入る。
衣裳部屋に行き「おっちゃん、俺の衣装どれ?」と、衣装さんと大物俳優さんのマネージャーさんを間違えて聞いちまった。
「俺違うぞ」と、自分の親父ほどのお年の熟練マネージャーに冷ややかな視線を浴びせかけられた。
これが、けちのつきはじめだったような気がする。なんだか嫌な予感。
さてさて、衣装や小道具をつけていざ撮影。主人公(大物俳優OEさん)のアパートにヤクザの事務所まで連れてくるヤクザの子分。これが私の役どころ。
セットのアパートのドアを叩き、
私 「すんません」
ドアが開く。主人公が訝しげに顔だけ出す。
私、ずいと主人公に顔を近づけニヤリと不敵な笑みを浮かべて、
「事務所まで来てもらえませんやろか」
主人公と一緒にアパートを出る。
なんてイージーな役。チョチョイノチョイでOK。
・・・のはずだったのだが・・・
マイクで監督からスタジオいっぱいに広がる声で「ちょっと、チンピラ役ちゃんとやってくれる!」と、お叱りのお言葉。
あれ?お気に召しませんでしたか?
では。とばかりにテイク2の演技プランを思案。
セットのアパートのドアを叩き、
私 「すんません」
ドアが開く。主人公が訝しげに顔だけ出す。
私、ずいと主人公に顔を近づけ当時、実の親からも定評のあったガラの悪い目つきで睨みつける。
「事務所まで来てもらえませんやろか」
主人公と一緒にアパートを出る。
よしこれで行こう。こっちだね監督さん。と演技プランをかため、ばっちこい!と意気込んでいると、主人公の大物俳優さんが私に耳打ちするように
「ヤクザってのは意外にへらへらしてるもんなんだよ。それでやってみな」
と、アドバイスしてくれた。
元来私は人の意見をとってもよく取り入れるたちなので。すぐさま演技プラン変更。
テイク2
セットのアパートのドアを叩き、
私 「すんません」
ドアが開く。主人公が訝しげに顔だけ出す。
私はへらへらと手もみでもしそうな愛想のいい笑顔で
「事務所まで来てもらえませんやろか」
主人公と一緒にアパートを出る。
「おい!チンピラ!!もういいよ!!帰れ!!」
と、監督から本気の怒声。超怒られた。そのとき大物俳優OEと言えば、知らぬ存ぜぬと言った風にセットの台所で食器をいじっていた。
あ〜!!だってあいつが!!と指差すわけにもいかず、私はすごすごとNHKを後にしたのだった。
後日テレビ放映を見てみると。
ドアをノックする私の手と声だけが採用されていた。後はすべてカット。
はぁ〜。落胆。
許すまじO・E!!
今でもこの俳優さんがテレビに出ていると「俺はこいつに潰されたのだ」と、若かりし頃の未熟極まりない芝居を思いっきり棚に上げて、ちょっと盛り気味に話題のネタにさせていただいている。
ご指導、いい思い出をありがとう。奥〇瑛〇さん!!
m(_ _"m)ペコリ.
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