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もう、ぼ、ぼくは、耐えられない!その時彼女は…

渋滞で、暇つぶしにとでも思ったのだろうか、男は滔々と語り始めた。
時は、ルミナリエ当日。元町。きらびやかに彩られたイルミネーションが町を覆い尽くしている。


恋人たちや子供連れの家族が、芋を洗うようにイルミネーションのトンネルを行き交っていた。


男はデート中だというのに肛門括約筋をひくつかせて、脂汗をかいていた。
強烈な便意が男を襲っていたのだ。


少しでも気が緩むと、大参事になってしまう。


年の離れた若い彼女が、楽しそうに話している。彼女はかぐわしいシャンプーの匂いをなびかせて、男の腕に凭れるようにして歩いていた。


ウンコを漏らすわけにはいかん。


彼女の笑い声も、もはや、耳には入ってこない。脳裏にはウ・ン・コの三文字だけがこだましていた。


必死にウンコを堪えて、苦痛とこの先起こる恐怖をない交ぜにした笑顔を返す。


プツン。


ほんの数滴、肛門からなんらかしかの液体がでた。と思った次の瞬間、ダムが決壊するように、ウンコがパンツに溢れ出た。


天国のひと時である。天使が男の頭上でラッパを吹きながら羽を広げて回旋している。


「きゃーー」


彼女の奇声と共に現世に呼び戻された。


イモ洗い状態の道も男を避けるように、心なしか空洞ができている。男は、人目をしのぐように、閉店した銀行の入り口の奥まったところに体をひそめ、パンツを銀行の前に投げ捨てた。


Tシャツを脱いで、穴を拭き、ズボンに付着したウンコを拭って、その場に捨てた。


フルチンでズボンをはいて、駅の便所に急いで、ズボンを洗い、それをまたまた履いて、電車に乗り帰途に就いたのだという。


そんな男を振りもしないで、その後も付き合いは続いたのだと男は自慢げに豪語していた。


「ウンコを漏らしても俺はモテるんだぞ、がははは。銀行のやつら次の日びっくりしてただろうなぁ。がははは」


と武勇伝さながらにウンコ自慢をする親父。帰省中の車内で、しれっと、浮気の告白をオカンの前でしているのに全く気付いていない親父。こんなのが私の父・・・なんともはやである。


恐る恐る、オカンに目をやると、浮気話に全く気付いていないのか、オヤジの話を全く聞いていないのか、オカンはミカンを食べながら、


「昼ごはん、せっかくだから、サハチにする?須崎の貝ご飯も捨てがたいよね〜。そうだ、お父さん、高知市内の割烹のお店、ほら、お父さんの同級生がやってる、あそこ、あそこにする?どこにしようか〜♪♪」


昼飯の計画に胸を躍らせていた。


母も母である。こんなんだから、半世紀以上も夫婦やってられるんだろうな〜。メオトって奥が深い。


. "ノ(-______-;)ウゥーム・・

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