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理学療法士って何ができるの?

知り合いの介護支援専門員に素朴~~な感じで聞かれた。

「生活上で利用者が困っていることは多いんだけど、理学療法士に頼んだらどうなるの?何ができるの?」

と、別にケンカを売っている風でもなく、ただただ頭上に?マークを浮かべているような感じで聞かれた。

ほほう。なるほどいい質問だ。と思い。それじゃぁ。メニューを書いてみよう。

メニュー
① 行為・動作の構築

基本動作の構築
・寝返り
・起き上がり
・ベッド上の移動・動作
・立ち上がり
・立位動作
・立位保持

日常生活動作の構築
・歩行
・移乗
・食事動作
・お風呂動作
・階段動作
・排泄コントロール
・整容動作
・トイレ動作

日常生活平行動作の構築
・投薬管理
・洗濯
・炊事
・掃除
・車の運転
・自転車の運転
・電車・バス等の公共交通機関の利用
・電話の受け答え、携帯電話の利用
・車への乗り降り
等々

② 機能の向上
・心臓リハビリテーション
・呼吸リハビリテーション
・糖尿病リハビリテーション

③ 各動作・行為を阻害している原因の除去
・認知機能・精神機能の改善(認知症の中でも訓練次第で改善するやつもある。むろん、しないやつもある。精神機能に関しては、心が動かなければ、体は動かない。ゆえに心を動かす。)
・除痛(特殊なアロディニアやカウザルギー等は取れないが、取れるものも多い)
・バランス機能・反射・反応の賦活
・筋・骨の強化

④ 代償動作・依存的自立の構築
・複合した疾病による障害に対して適切な装具や道具を選定して日常生活や行いたい行  
 為・動作を可能にする

・使える筋を用いて動作・行為の構築

・エンパワーメントの表在化を行い、依存先(道具、環境、友人や家族・店の店員、電車の駅員等人的依存の組み立て)

・患者・利用者の強味の引き出し。(職業が大工さんとか自治会長やってたとか、友達100人いるとか、その人の持つ強み)

御用のある方はベルを鳴らして注文してください。

まぁざっとこんなもんだろうか?

しかし、メニューを書いては見たが、これが欲しいと言ってもらえるものではない。

なぜなら、メニューに書いたのは、例えるならば、お薬の名前を羅列したにすぎない。

患者が医者に行って「この薬をくれ」と言っているようなものである。

まず、患者さんは「仕事がしたいので、できるようにして」とか、「グランドゴルフに行きたいので、いけるようにして」と言うように、〇〇がしたいので、と注文したほうがいい。

ただ単に「膝が痛いので直してください」と言われれば、「あなたの膝は変形しているので、お医者さんに相談してください」となる。

しかし、「畑仕事をしたいのでできるようにしてくれ、膝が痛くて出来ねぇーんだ」とオーダーを出せば、「なるほど、それでは、膝の痛みがなく畑仕事ができるようにしましょう」という事になる。

何が違うんだ?

と思う方も多いと思いますので、解説してみましょう。

「膝が痛いので治してください」

これは、膝の変形そのものを治さなければ痛みは取れない。ゆえに医師の仕事になる。

しかし、「膝が痛いので畑仕事ができない」これは、言い換えれば「膝が痛くなければ畑仕事ができる」という事になる。

膝が痛くないように動作パターン、畑の環境や作物を作る方法を変えればいいのだ。必要なら、筋骨に対して多少アプローチすれば済む。

どう変えれば膝が痛くないかを調査・評価し、方法論が決まればスキル向上のための訓練が始まる。

つまり、膝が痛くない方法・体作りを練習して体得し、目的とする行為・動作を行えるようにするという事ですね。

しかし、なんか直してもらっているような気がしない。そんなんだったら、自分でやるわ。と思った方も多いでしょう。

だから、日本は寝たきりが多いのです。車やテレビが壊れて、自分で分解して修理する人は少ない。でも、ひとたび障害に対しては自分でやろうとするから寝たきりになる。

私のところの病院に寝たきり状態で来られた患者さんのほとんどがこのパターン。自分で何とかしようとしちゃった人たち。この手の自分でやっちゃった系の人たちで一念発起する人は、ちゃんと理学療法を受ければ、まぁまぁ、復活する人が多い。

(ちょっと愚痴だが、我がリハビリテーション部は介護度5・4を要介護1とか要支援にしちゃうので、売り上げを考えてください!!!!と経営者からいつも怒られている。介護保険は治すと売り上げが下がる。利用限度額が下がるので患者の家族に烈火のごとく怒られる。いつか首になっちゃうなぁ。まぁ患者さんが喜んでいるのでよしとしますか(笑))

ちゃんと、餅は餅屋に聞きましょうね~。勝手にメニューの項目をオーダーメイドで注文しちゃったら、「あんたが注文したのだから、寝たきりになっても私は知らないよ」「ケアプラン通りやったんだから、寝たきりなってもケアマネかあなたのせいでしょ」と療法士たちに言われちゃいますよ~。(現にそんな療法士もいる。なんだかなぁ~である。)

上記に描いた理学療法は厳密には理学療法等である作業療法や言語療法分野も入っている。しかし、世界基準ではおかしいが日本基準と言うのがある。日本では理学療法も作業療法も言語療法も明確な区分がない。全て名称独占免許であり、なんでもいいから、お前らやっとけ的な扱いを受けているので、理学療法士だから精神や日常生活応用動作は診れませんなんて言っていたら、仕事にならない。また逆に作業療法士が私は作業療法士なのでシーティングや基本動作は分かりませんなんて言っていたら、これまた、仕事にならない。なので、療法士の専門性の区分があいまいになり、専門性が年々希薄なものになりつつある。日本で求められているのは、専門的なプロフェッショナルよりも広く浅い知識でそこそこできるジェネラリストなのである。ただジェネラリストはプログラムの組み合わせが天文学的数字になるので、個人に合わせた組み合わせをプログラムできる訓練が必要。

なので私は理学療法士だが、畑やタケノコ山に長靴を履いて動作分析に出る毎日です。おかげで、イチジク栽培の方法や害獣除けの網の張り方等々やたら詳しくなっちゃいましたよ。高齢者で言えばそんな感じだが、こどもリハの世界では、もっと幅がえらいことになる日常生活動作だけでとどまらないのである。縄跳び飛べるようにして欲しいから普通の小学校に行けるようにして欲しい。こだわりをもう少し和らげて欲しい。てな感じ。

明日もがんばろうっと。(笑)

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