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原発事故ドラマ 『THE DAYS』 全8話を観終えて

1月に情報を知ってからずっと待ち遠しかった本作、
昨日17時ごろに配信が開始され
帰宅して19時辺りから度々休憩を挟みつつ
全8話視聴。


【 レビュー 】

本ドラマは「吉田調書」「福島原子力事故調査報告書」「死の淵を見た男」をもとに
あの日、あの場所に居合わせることになった人々の
葛藤、恐怖、重責を出来る限り忠実に描くことを命題に
事象および人物の整理と脚色を行い、物語として構築した

THE DAYS エピソード8:日本崩壊のシナリオ より


地震→大津波→事故発生から7日間を
原発関係者、政府、運転員の家族の視点から緊迫感たっぷりに
過去の事故(チェルノブイリ、東海村JCO臨界事故)を織り混ぜながら生々しく描かれており、
後日談を含んだ 視聴者に問いかけるような役所広司さんのナレーションによるドキュメントパートもあって
非常にボリューミーな内容だった。


〈 当事者の目線 〉

まず第1話は観ているだけで思わず息が苦しくなるような、
激しい津波描写に胸が痛んだ

閉じ込められた所に とんでもない高さの津波が迫ってくるのを目撃しながら
逃げることもできずに ただ身体に波を受けるのを諦めるしかないシーンは恐怖でしかなかった

どうやらこのシーンに限らず
運転員たちが決死の覚悟でベントを行う場面でも感じたけれど
当事者の目線を大事にしている演出を所々で見受けられた
なので追体験しているような感覚が生々しさを加速させていたと思う

ある程度ドライな気持ちで視聴しないと
感受性が豊かなタイプは気持ちを持っていかれて、気分が沈んで引きずる可能性があるように思った。


〈 原発と向き合い続けた運転員、関係者達 〉

役所広司さん演じる吉田所長
本店と官邸の板挟みになりながら
どうにか状況を悪化させない為に不眠不休で部下たちにも気を回しながら
暴走する原発と向き合い続けたこと、
改めて本当に凄いなと思った

光石研さん演じる本店の 東央電力 副社長
最初なんでそんな偉そうに高圧的に指示してくるのかと観ていてこちらも苛ついてくるような人物だったけれど、
回を追うごとに個人としての本音がポロッと溢れたり(政府への苦言)
吉田所長を労うセリフも少しあって
ただのパワハラ気質ではない面も垣間見えた

竹野内豊さん演じる 1、2号機 当直長
吉田所長の指示のもと、どうしたら原発の暴走を止められるか、運転員たちの命をどう守っていくのか…
電気がつかず暗い中で決断を迫られる苦悩が伝わってきた


当直長の指示でベントに向かうベテラン運転員を演じた小林薫さん、六平直政さんの年長者としての余裕や思いやりも良かったし、

音尾琢真さん演じる5号機副長が
吉田所長と共に状況整理したり同じ気持ちを共有する場面はグッとくるものがあったり、

山中崇さん・中野英樹さん演じる運転員が
ベントできずに悔し涙を流す場面も印象的だったし
その後 除染の為 全身裸になり
お湯が出ないので冷水で体を洗う場面は
被爆の恐怖が合わさって二重に震える描写だった。


〈 首相 〉

小日向文世さん演じる首相、
予告の段階から描かれ方に注目していた

ほぼ終始 感情に任せて場を引っ掻き回すだけで
部下にも原発関係者にも陰でコソコソヘイトを集めるだけの存在に描かれていた

現場で懸命に従事する人々に対して、ではなく
日本の為というよりは 何かあったら自分に責任が降りかかることに対して常に目が向いていて、
思いやる気持ちが皆無な自己中心的にも程があるリーダーだった。


〈 1999年のあの事故 〉

劇中では度々、チェルノブイリや広島の原爆に例えたセリフが散りばめられていたが
中でも1999年に起こった“東海村JCO臨界事故”のことについては
エピソード4で数分生々しく描写されていた
(ただし明確に名指し説明はされていない)

病室で被爆により全身の皮膚が激しくただれ
身体の設計図である染色体が断ち切られて新しい細胞が作られない為、
皮膚の表層がなく下層がむき出しの状態で
どんどん体液が滲むのをガーゼでケアしている様は本当に胸が痛むし、
取材をして報告書を作った登場人物がPTSDになったというのも頷ける

HBOで制作された ドラマ『チェルノブイリ』も視聴済みだけど、少し描写がそれに近いなと思った。


〈 二名の若い犠牲者、その家族 〉

津波が到達した時間帯に地下で水漏れ点検を行っていた20代の社員二名が波にのまれて犠牲になっていたことを初めて知った

そのうちの一人を鈴鹿央士さんが演じており、
遠藤憲一さん・石田ゆり子さん演じる父と母や兄妹たちが
現場が混乱しているため 息子・兄の安否情報がなかなか掴めずに 連絡を待つことしかできない苦しみが描かれていた

あの日 大切な人を津波で亡くした方々が大勢いたことを改めて感じるパートだった。


【 おわりに 】

エピソード8の役所さんナレによるドキュメントパート、
3.11が起こったのは14歳の時だったけれど
原発がどういうものなのか?については事故が起こるまで全く存在すら知らなかったし
日本のエネルギーに対してもとことん無知だった

でもその後 関心を持って調べたり、本を読んだり、NHKの番組などを複数観て
少しずつ原発のこと、事故のこと、環境、未来のエネルギーについて学んでいる最中


調べたり、本を読む行為は自分で追っていかなきゃならないので人によっては労力がいるかもしれないけど
このドラマのように映像だと比較的知るきっかけとして入っていきやすい内容なのではないかなと感じた。



ノーカットトーク、
5年の歳月をかけて配信が実現したとのこと。
またエンケンさんが場を和ませる天才だなと思った動画👏


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