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my select50 vol.6「Charvet」

my select 50の第6弾はネクタイです。
年を追うごとに着用率が下り、このままいくとスーツ族は絶滅危惧種に指定されてるのではないかと心配されているスーツの必須アイテム「ネクタイ」

今回は、ネクタイブランドの最高峰の一つであるフランスの「Charvet(シャルベ)」をご紹介。ちなみにこれはとても高いネクタイブランドです。1本3~4万円くらいします笑

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最高級シルクをたっぷりと使った艶のある贅沢な逸品

シャルベの説明をする際に、そもそもスーツに何故ネクタイがあるのかから入ります。
少々長いのでお付き合いください。

ネクタイについては、17世紀にネクタイの原型が現れたとされています。とはいっても、今のリボンやスカーフのような物ですが。そして、今のスーツスタイルが出来はじめたのは、18世紀の後半くらいでしょうか。

原点はヨーロッパ、特に現代につながるスーツスタイルの発祥は英国です。

フランス語ではネクタイをクラバット(Cravate)と呼びます。イタリアだとクラヴァッタ(Cravatta)。これは、よく言われる伝説ですが、帰還兵を謁見していたルイ14世が、クロアチアの兵士が首に巻いていたスカーフを大変気に入り、それがフランスで大流行したことが由来だとする説です。
ルイ14世は、クロアチア兵が巻いているスカーフに興味を示し、側近の者に「あれは何か」と尋ねたところ、側近の者は兵士の出身国について尋ねられたと勘違いし、「クロアチア兵(クラバット)です」と答えたため、それが呼び名になったという逸話があります。真偽は分かりませんが。

そして、軍服に巻くスカーフが時代とともに、今のネクタイになっていきました。軍服もスーツと同じく、上下が同じ生地を使っていますから、そのスタイルがそのままスーツに影響したとも言えます。スーツもいわば制服ですね。

ちなみに、当時、ヨーロッパの文化の中心はフランスだったので、フランスが流行の発信源でした。
スーツスタイルの発祥と前述した英国が、経済や文化の主流になるのは、産業革命以降になりますね。産業革命に成功した大英帝国が世界を席巻していきます。最盛期では世界の1/4をその支配下におさめたと言われています。その過程で、英語はもちろん、イギリスの文化が世界のグローバルスタンダードになっていきます。その中に、服装(スーツスタイル)も含まれているわけですね。英国の服装がそのまま世界標準になるといった感じでしょうか。

英国流の抑制されていて、機能的、かつ礼法にもかなう、カチッと鎧をまとうようなスーツは、現在も世界の標準形になっています。
イタリアやアメリカのスーツも有名ですが、あくまで原型は英国なんですね。英国発祥のスーツを自国流にアレンジして楽しんでいる。

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ジョージ・ブライアン・ブランメル(1778~1840)
ボー・ブランメル(Beau Brummell/伊達男ブランメル)の異名で知られるダンディの祖
スーツの原型を作った一人。イギリス人。まだスカーフぽくて、現代のネクタイはありません。

映画007で毎回注目されるジェームス・ボンドなんかは、まさに英国紳士の分かりやすい例で、ボンド使う服や靴、車などそのスタイルはいつも話題になります。
同じ系統の映画でアメリカのミッション・インポッシブルがありますが、この映画でイーサン・ハントのスタイルが話題になることはありません。なぜなら新興国(ヨーロッパから見れば)のアメリカだからですね笑

話が思いっきり脱線しましたが、ネクタイの歴史は長く、様々な経緯があって今の形になっています。従って、夏は暑いし、首は苦しいし、良いこと無さそうだけど、歴史があって今の形になっている(落ち着くところに落ち着いた)ので、やっぱり装着すると「様になる」んですよね。

付けるとしんどいと思う方も多いでしょうが、そもそも身嗜みを整えるということは「楽」な話じゃなくて、「我慢」が必要です。ネクタイは我慢だと思ってください笑。和装や着物も着るのにも我慢の要素はありますよね。それと一緒です。

ただ、コロナ禍でテレワークが普及し、今まで以上にスーツの需要が落ちていますので、ネクタイの必要性がかなり薄れてきていることも否定できません。また、Tシャツで出勤できる企業も増えています。

個人的にはスーツを着るときはネクタイをした方が良いと思います。ここでいうスーツは、ジャケットとパンツが同じ生地(布)を使ったものを指します。スーツはやっぱりフォーマル的な要素が強く、ネクタイがあることを前提に今の姿があるので、ノーネクタイだと見た目に「なにか足りない感」が出てしまいます。首元がさびしく感じるといいますでしょうか。

逆に、ジャケットスタイル(ジャケットに違う素材のパンツとかデニムを合わせるスタイル)だと、ネクタイをしなくても大丈夫です。ジャケットスタイルは、定義としては、フォーマルではなくカジュアルになりますので。

ブランドロゴもクール


さて、シャルベについて。
画像で見ていただいて分かるように、素材の地厚感が伝わると思います。ネクタイは素材にシルク(絹)を使っていますが、当然シルクにも良し悪しがありまして、シャルベは良いシルクをたっぷりと使っているのが特徴です。

1838年、世界初のオーダーシャツ専門店としてパリで創業しました。
シャツ屋さんなら、シャツを紹介しろと怒られそうですが笑
ネクタイも有名で、上質なシルクを通常のネクタイよりも多く使って織り上げたオリジナルの生地、シャツ作りの技術が活かされた手作業から、上品で美しい光沢感と肌触りとしなやかさを生み出しています。
シャルベのネクタイをしている人は、ちょっと見てすぐに分かるほどです。

これは夏用の薄手に作られているシャルベ

私は、このシャルベには薄いですがご縁があります。実は以前勤めていた三越伊勢丹がシャルベの日本代理店なんですね。
私がバイヤーの頃にパリ本店に伺ったことがあります。
私自身はパリコレやミラコレなどを回って最新ブランドを買い付けるデザイナーズブランド担当でした。シャルベはドレス担当のバイヤーが買い付けるので、担当外でしたが、当時の洒落た執行役員のオッサンが「シャルベは見ておいた方が良いぞ」というので、付いていって感動した記憶があります。

パリ滞在時は、デザイナーズブランド担当なので、当時世の中を席捲していたDolce&GabbanaやDSQUARED2を着てコレクションやショールーム巡りをしていました。全員スーツのシャルベ本店で場違いな感じになり、少しつらかった事を思い出します笑
当時は自分が時代の最先端だと思ってやってましたが、今じゃ、恥ずかしくて着れないなぁ

話が脱線しまくり、要領を得なくてすいません。
シャルベのネクタイを買えとはさすがに言えませんが、世界最高峰の逸品ですので、日本橋や新宿に行った際は、三越や伊勢丹にあります。
是非、手に取ってみてください。
その豊かな表情とたしかな仕事に感動を覚えると思います。

最後に、私も日本の夏は蒸し暑いので、7月から9月はネクタイをしていません。その代わり、スーツは着ないで、ジャケットスタイルで盛夏はしのいでいます。
(英国の夏は日本ほど熱くないですし、比較的暖かいイタリアの夏も湿度が低いので、過ごしやすいので、そのままのヨーロッパ文化を真似するのは厳しい)

みなさまも無理をせずネクタイライフをお過ごしいただければ幸いです。

※ネクタイはフランス製のシャルベ以外は、基本的にイタリア製を使っています。明るめで軽やかなのが特徴です。これはFRANCO BASSIというブランドです。




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