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地域の挑戦者インタビュー Vo.8 守屋基範さん

今回お話を伺ったのは、島おこしに熱い想いを持つ守屋基範さん。「かさおか島づくり海社」設立や実践型インターンシップの活用など様々なことに挑戦をされている、「行動する公務員」そのもののような方です。
 守屋さんの取り組まれた活動や、実践型インターンシップの利点、地域づくりに強い想いを持つ理由までお話していただきました。

守屋基範さん  笠岡市生まれ。奈良大学で地理学を専攻後、Uターンし、笠岡市役所に入庁。「笠岡市島おこし海援隊」として、笠岡諸島の活性化を担当後、島づくりを担う「NPO法人かさおか島づくり海社」設立に携わる。行政もNPOも離島振興という課題・目標の下で協働に取り組む。

事務的な仕事より、地域の人と一緒に汗を流して物事を進める仕事の方が重要


〇市役所に入庁した経緯をお聞かせください。

市役所に勤めることを父に勧められたからです。元々は、教員になりたいと思っていましたが、教員試験に落ちてしまいました。これからの進路を悩んでいた所、それを見かねた父が市役所に勤めることを勧めました。入庁試験に受かると「受かったからにはこっちの道もありだな」と前向きな気持ちになりました。


〇入庁してからはどのようなキャリアを歩みましたか。

初めは税務課に入りました。税務課で3年勤めた後は、観光課に配属されたり、笠岡の活性化を進める推進室に配属されたりしました。
  笠岡の活性化に取り組んでいた所、「島づくりをサポートしてくれる職員を派遣してほしい」という島民の要望を受けました。これまで、島の住民票を担う市民課など事務的な仕事はありましたが、島おこしに特化する課はありませんでした。地域づくりのためには、事務的な仕事も必要ですが、地域の人と一緒に汗をかきながら物事を進める仕事の方が重要だと考えました。 
 そこで、「今までは陸の方にいた職員が島に出張する」仕組みを考え、関係部署の尽力と市長の決断によって「島おこし海援隊」の結成が決まりました。


〇その後はどのような活動に取り組まれましたか。

  まず、島に派遣される人を選ぶために「挙手制度」を作りました。市役所では3~4年のスパンで人事主導の異動があります。しかし、本当に島の活性化をしたい人に島に行って欲しいと思っていたため、この制度を作りました。手を挙げた私を含めた3人は毎日島に通い、島に事務所を設けました。

 また、地域の中に島おこしの組織がないと継続して活動が続いていかないと考え、島の方と一緒に、「かさおか島づくり海社」を設立しました。平成18年には、「NPO法人かさおか島づくり海社」へと法人化しました。

 このような組織ができるまでは、島おこしは行政主導で行われていました。行政は、平等・公平という考え方をします。「ここの地区でこういうことをしたい」というアイデアがあっても、特定の地域のみにお金を出すことはできないためアイデアが実現できずにいました。そこで島に組織を作ることで、島同士が利益をあげながら、笠岡諸島全体でお金を回せるような体制を整えました。

工夫していたのは、「部署を越えた連携」と「地域の人間関係・資源を活かすこと」


〇地域で活動される中でどのような工夫をされましたか。

一つ目は、地域の人とのやり取りや連携です。地域づくりをする場合、住民とのやり取りで関係性を深めることが最重要だと考えていたため、商店街の人や島民と多く接することに注力しました。
 また、島だけでは島の活性化はできないと考えていたため、陸の他の部署と連携をすることで島と陸の関係性を深めました。地域の人々や他部署に留まらず、笠岡以外の地域や、国の離島振興課との連携もしました。国と連携した理由は、島の活性化をする場合、笠岡の市役所ではなく、規模が大きく、専門の課がある国を相手にした方がお金を取りやすかったからです。

 二つ目は、地域にあるものを活かすことです。地域づくりでは、「その地域の人間関係や仕組みのなかでどう考えていくか」や「地域にあるものをどう活かすか」に着目することが必要です。他の地域を見てもしょうがないです。地域特有のものを活かさなければ地域の特徴にはなりません。「リトル東京」、「リトル京都」という言葉を聞きますが、結局は本家の東京・京都には負けてしまいます。小さい所は小さいなりに考えることが大切です。

地域の方との関わりを大事にされている守屋さん

実践型インターンシップは起爆剤とガス抜き


〇実践型インターンシップを取り入れることの利点をお聞かせください。

新鮮な外の意見を取り入れられることです。地域の中にいても、移住者の感覚がわかりません。「初めて来た時に何が分からないか」や「どのようなものが必要か」など、インターンシップ生の感覚や体験を活かすことができます。このような感覚や体験は起爆剤となります。また、ガス抜きにもなりえます。小さい島だと人間関係の問題が度々起こります。固まり切った人間関係の中に介入してもらい、わだかまりを解消するようなガス抜きの役割にもなります。


〇実践型インターンシップを取り入れることで大変だったことをお聞かせください。

自分自身大変だと思うことは何もないです。

〇地域づくりへ強い想いを持っている理由をお聞かせください。
一つ目は、新しいことをするのが好きだからです。同じことを2回するのが飽きてしまうタイプかつ、前の人と同じことをしたくないという想いがあります。
 二つ目は、島の事を何も知らないのに「不便そう」という先入観だけで島を否定された経験があるからです。島のサポートや島の中での人間関係もあるのに先入観だけで否定され、心外でなりませんでした。

〇最後に今後の目標についてお聞かせください。

 地域おこし協力隊など、よそから島に入ってもらい、島の人が気づかない島の良さを感じてもらいたいと思っています。そのために、島の人の良さを活かすような企画をコーディネートしたいです。こんなことをやりたい、こんな人に来てもらいたいという島の人の要望も聞いていきます。これは小さい島だからできることです。これからも島をあげて地域づくりに取り組んでいきます。

地域づくりへの想いを語る守屋さん(左)とインタビュアーの髙木(右)

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