AIはPRの仕事を凌駕するのか? VOL.2
「AIにはバイアスがないんだよ」
最近ジャーナリストの方と話しをしている中で出てきた言葉ですが、人間とAIの違いを浮き彫りにする一言だな、と瞬時に思いました。
ChatGPTが要約した記事と、編集プロダクションの人間が要約した記事、どちらの方が良い文章なのか、数名の人間(記者やジャーナリストなどのプロフェッショナル職の方)が比較したところ、全員一致でChatGPTが要約した文章の方が読み易くて、うまく要約されていると答えたいうことでした。
より詳しく聞いたところ、話し手が強調していたところ、入れ込んで欲しいと思っているであろう箇所を、人の手を介した文章では多く盛り込んで要約文を作成していたが、それに対してChatGPTでは話し手の意図を忖度せず、全体の概要がわかるように要約されていたという。確かに、ChatGPTに要約は向いてそうですね。
要約のみならず、ある程度のクオリティで文章をアウトプットするのは、今日では多くの人にとって想定の範囲内だと思います。個人的には、AIとどう向き合うかで、仕事が効率化されるのであればむしろ肯定的に受け止めたいとさえ考えています。
それでは、ChatGPTを使って、早速2つの実験してみます。
1-1. プレスリリースの作成
AIが得意と思われる文章作成系の代表格、プレスリリースの作成をお願いしてみることにします。実験が目的なので、ダミーの情報を、かつプレスリリースを書くには完璧ではない状態でChatGPTに渡します。
コマンド:新しい美容液を発売するので、そのプレスリリースを書いてください。
美容液の特徴は、ガラクトミセスを主原料とし、透明感と潤いの肌へ導くことが可能。事前のテストでも98%の被験者が使い続けたいと答えており、動物実験などは行っていない。価格はオープン価格で、2023年7月1日より全国の百貨店で発売を開始する。
1-2. ChatGPTが作成したプレスリリース
みなさんはどう思いましたか?文章としては成り立っていますね。長い文章を作成することが難しいと感じるタイプの方からすれば、ChatGPTの恩恵を感じることもあるかもしれません。
ただ企業の格を表わすものとしては、私ならばクオリティに問題があると考え、失格と判断します。今回のアウトプットは、プレスリリース配信サービスを使えば、どこかのオンラインメディアに転載くらいはされるかもしれませんが、毎日数百通のプレスリリースを受け取るライターやジャーナリストなら、すぐにゴミ箱へ移すのは目に見えていると思いました。
内容の細かい分析や解説はここでは省きますが、このリリースを見たときに、パッと浮かんだ問題点を挙げてみます。
言葉の言い回しが適切ではない
コマンドで与えた情報の順番を引き継いで文章を作成する?(疑問)
海外でよく使われる形容詞が多用され、日本語では違和感を感じる
段落ごとの情報が混沌としている
何がニュースなのかポイントがわからない
商品名は伝えていないのに、勝手に「ラディアントセラム」と命名されていました。商品名を生成するのであれば、こういう文章を足したらより良くなるよ、というリコメンドの意味で文章を生成した方が、より人工知能という名称に説得力がもたらされるのに残念だなと思いました。
そもそもプレスリリースとはどういう目的をもって、どのように書くのが目的を達する方法なのかを理解していないと、良し悪しが判断できません。よくわからないからAIにプレスリリースを書かせるというのは、何もわからない人にとってはありがたい存在だけど、本来は推奨できる行為ではなく、ネガティブプロモーションになるリスクさえ含むことは理解しておくべきだと思います。
この1本のプレスリリースを通じて考えると、ChatGPTが作成するプレスリリースはクオリティに問題があり、またAIやChatGPTを活用したプレスリリースの作成、攻略法を見つけられませんでした。ただ複数回試してみると、意外な傾向と対策が見えてくるかもしれません。また近いうちに追求しようと思います。
2-1. メディアリストの作成
次の実験に移ります。
面倒で単純な作業をお願いしてみたらどうだろう?と思い、メディアリストをChatGPTにお願いしてみることにしました。媒体名とプレスリリース送付先が含まれたリストを瞬時に作成してくれるのであるなら、とても助かる発明だと思います。それでは、ChatGPTを使って実験を続けてみます。
コマンド:新しい化粧品の発売に際し、プレスリリースを発行するので、送付先メディア一覧を作ってください。
2-2. ChatGPTが作成したメディアリスト
メディアの名称の羅列ではあるものの、プレスリリースを送付したいのに送付先がわからないのでは目的が果たせません。新聞社ならば、生活面や経済面などと部門まで記してほしいし、テレビ局やラジオ局なら番組名まで必要です。メールアドレスなどのコンタクト先、担当者名まで入っているメディアリストが欲しかったのですが、ここは私の質問が良くなかったと受け止め、追加で質問を入れてみることにしました。
コマンド:上記のメディアの、送付先メールアドレスを教えてください。
言っていることは正しいのですが、プレスリリース送り先と書かれてページは存在するケースも多く存在するので、完成度50%でもいいので埋められるところは埋めて欲しかった。というのが、人間の私がアシスタントに求める本音です。
つまり、メディアリストの作成においては、今日現在ではメディアに詳しい人間の手を介して、作成する必要があるとわかりました。
ただ例えば、その分野でどういうメディアがあるのかわからない場合、助けになるとは思いました。例えば、他の国で販売をしたい時、その国の専門メディアを一瞬で検索して適切なアウトプットするかもしれない。つまり目的によっては、ChatGPTは大きなヘルプになるはずです。
では次週、また違った角度でChatGPTに質問をし、実証実験を続けてみることにします。
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