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論文まとめ119回目 Social Force 2023/9/28~

  1. 組織のアイデンティティが白人男性の反応に与える影響

  2. 学校の銃撃事件と抗議活動がアメリカの銃文化に与える影響

  3. シリコンバレーの緑化運動がカリフォルニアの気候政策の原動力

  4. 政治的信念がテロリズムに対する認識をどのように形成するか

  5. ポピュリズムが少数派グループに対する感情にどのように影響するか

  6. 異なる人種間の友情の安定性

科学・社会論文を雑多/大量に調査する為、定期的に、さっくり表面がわかる形で網羅的に配信します。今回もマニアックなSocial Forceです。

さらっと眺めると、事業・研究のヒントにつながるかも。
世界の先端はこんな研究してるのかと認識するだけでも、
ついつい狭くなる視野を広げてくれます。


一口コメント

It’s Not the Message, It’s The Messenger: Organizational Identity and White Men’s Opposition to Women’s and African Americans’ Civic Participation
メッセージではなく、伝える人: 組織のアイデンティティと白人男性の女性やアフリカ系アメリカ人の市民参加への反対
「「メッセージではなく、伝える人」が大切。白人男性が女性やアフリカ系アメリカ人の市民活動に反対する理由を、組織のアイデンティティを通して解明します。」

School Shootings, Protests, and the Gun Culture in the United States
アメリカにおける学校の銃撃事件、抗議活動、および銃文化
「学校の銃撃事件や銃規制に関する抗議活動が、アメリカの銃に対する態度やNRAの会員数にどのような影響を与えるのかを調査した研究です。」

Silicon Valley Goes Green: The Origin of California’s Climate Regime
シリコンバレーの緑化運動: カリフォルニアの気候体制の起源
「カリフォルニアがアメリカで最も厳しい気候法を制定した背景には、シリコンバレーの経済的な力と緑の資本主義への変革の可能性が大きく影響しているという新しい視点を提供する研究です。」

How politics constrain the public’s understanding of terrorism
政治が公衆のテロリズムに対する理解をどのように制約するか
「アメリカ人がテロ行為の背後にある原因をどのように認識するかは、そのテロ行為がどの政治的グループによって行われたか、そしてその人の政治的信念によって大きく影響されるという研究結果を示しています。」

Populism as Dog-Whistle Politics: Anti-Elite Discourse and Sentiments Toward Minority Groups
ポピュリズムと犬笛政治:エリートに対する反発と少数派グループへの感情
「ポピュリズムの言葉が、特定の政治的な背景を持つ人々の中で、少数派グループに対する感情を悪化させる可能性があることを示す研究。」

Our Friends Keep Us Together: The Stability of Adolescents’ Cross-Race Friendships
私たちの友達が私たちを結びつける:青少年の異人種間の友情の安定性
「異なる人種間の友情は、一見不安定に見えるかもしれませんが、他の社会的要因を考慮すると、同じ人種間の友情と同じくらい安定していることが示されました。」


要約

メッセージではなく、伝える人: 組織のアイデンティティと白人男性の女性やアフリカ系アメリカ人の市民参加への反対

この研究は、白人男性が特定の市民団体に対してどのように反応するかを調査し、その団体が「黒人連盟」や「女性連盟」などの特定のアイデンティティを持っている場合、彼らの反応がどのように変わるかを明らかにしています。

事前情報
構造的な人種差別や性差別の理論は、特権を持つグループのメンバーが非特権的なアイデンティティと変革のアジェンダが結びついているときに否定的に反応するという前提から構築されています。

行ったこと
アメリカの白人男性を対象とした3つのオンライン実験を実施し、彼らが市民団体のウェブページを評価する際の反応を調査しました。

検証方法
アメリカの白人男性を対象とした国民サンプルに基づいてオンライン実験を実施。彼らに架空の市民団体のウェブページを評価させ、その結果を分析しました。

分かったこと
実験の結果、回答者は「黒人連盟」や「女性連盟」などの特定のアイデンティティを持つ団体を評価する場合、単なる「連盟」という名前の団体を評価する場合よりも、その団体の組織的アイデンティティを不承認する可能性がはるかに高いことが明らかになりました。

この研究の面白く独創的なところ
市民団体の名前やアイデンティティが、白人男性のその団体やその目標に対する支持度にどのように影響するかを具体的に示しています。

この研究のアプリケーション
この研究の結果は、市民団体や運動が広く受け入れられるための戦略を考える際の参考となるだけでなく、社会的な偏見やステレオタイプに関する理解を深めるための基盤ともなります。



アメリカにおける学校の銃撃事件、抗議活動、および銃文化

この研究は、学校の銃撃事件や銃規制に関する抗議活動が、アメリカの銃に対する態度やNRAの会員数にどのような影響を与えるのかを調査しています。

事前情報
銃や銃政策に対する態度は、イデオロギーや政党政治と重なる深く根付いた文化を反映しています。

行ったこと
学校の銃撃事件や銃規制に関する抗議活動が、銃に対する態度やNRAの会員数にどのような影響を与えるのかを調査しました。

検証方法
国民の出口調査データと州レベルの情報(最近の学校の銃撃事件、銃政策の抗議、既存の銃使用制限法、NRAの会員数)を組み合わせて分析しました。

分かったこと
保守派(リベラル派ではない)が多くの学校の銃撃事件にさらされると、より厳格な銃政策を支持する傾向があることが示されました。また、学校の銃撃事件の増加と銃規制の抗議活動との間には、NRAの会員数を大幅に減少させる有意な相互作用効果があることがわかりました。

この研究の面白く独創的なところ
学校の銃撃事件や銃規制に関する抗議活動が、特定の政治的・社会的背景を持つ人々の銃に対する態度やNRAの会員数にどのような影響を与えるのかを具体的に示しています。

この研究のアプリケーション
この研究の結果は、銃規制政策の策定や銃文化に関する議論の中での参考として使用される可能性があります。


シリコンバレーの緑化運動: カリフォルニアの気候体制の起源

カリフォルニアが2000年代初頭に国内で最も厳格な気候法を制定した背景を探る研究。シリコンバレーの政治的動員が、カリフォルニアの気候体制の登場において決定的な要因であったと主張しています。

事前情報
カリフォルニアは、連邦レベルでの失敗を説明する要因が存在するにもかかわらず、国内で最も厳格な気候法を制定しました。

行ったこと
カリフォルニアが厳格な気候法を制定した背景を調査し、シリコンバレーの役割と影響を詳しく分析しました。

検証方法
Gramscian政治社会学に基づく新しい証拠を提供し、シリコンバレーの政治的動員がカリフォルニアの気候体制の登場においてどのように作用したかを詳しく分析しました。

分かったこと
シリコンバレーの経済的力、高技術の「緑」の資本主義への変革の驚異的な可能性、および新しいビジネス環境ブロックでのリードポジションが、化石燃料産業の抵抗を克服し、気候政策を勝利の経済戦略として提示することを可能にしました。

この研究の面白く独創的なところ
シリコンバレーの経済的な力と技術的な革新が、カリフォルニアの気候政策の形成において中心的な役割を果たしたという新しい視点を提供しています。

この研究のアプリケーション
この研究は、他の地域や国が気候変動対策を進める際の参考として、技術革新と経済的な力がどのように気候政策の形成に影響を与えるかを理解するのに役立ちます。




政治が公衆のテロリズムに対する理解をどのように制約するか

アメリカの極右の国内テロは国家の安全保障にとって大きな脅威であり、政治的信念がテロ行為の背後にある原因の認識にどのように影響するかを調査した研究。

事前情報
アメリカの極右テロは大きな脅威であるにもかかわらず、保守的な政策立案者は極左の暴力がより深刻な懸念であると主張しています。

行ったこと
アメリカ人の政治的見解が、極右、極左、イスラム主義のテロ行為の背後にある原因の認識にどのように影響するかを調査しました。

検証方法
国内の調査データ(n = 700)を使用して、政治的見解が極右、極左、イスラム主義のテロ行為の背後にある原因の認識にどのように影響するかを実験的に調査しました。

分かったこと
テロ行為の背後にある原因の認識は、考慮されるテロリストのタイプによって異なり、政治的信念はこの効果を調整することが示されました。

この研究の面白く独創的なところ
政治的信念がテロ行為の背後にある原因の認識にどのように影響するかを具体的に示すことで、テロリズムに対する公衆の反応の違いを説明する新しい視点を提供しています。

この研究のアプリケーション
この研究の結果は、テロリズムに対する公衆の反応を理解し、より効果的な対策や啓発活動を行うための参考として役立つ可能性があります。



ポピュリズムと犬笛政治:エリートに対する反発と少数派グループへの感情

この研究は、ポピュリズムが公衆の態度、特に少数派グループに対する感情にどのように影響するかを調査しています。

①事前情報
これまでの研究では、ポピュリズムの影響が党派政治や民主主義の統治にどのように影響を与えるかについては注目が集まってきましたが、ポピュリズムが一般の人々の態度にどのように影響を与えるかについてはあまり注目されてきませんでした。

②行ったこと
オンラインの調査実験を用いて、ポピュリズムが民主党員と共和党員の間で異質なグループに対する敵意を増加させるかどうかを調査しました。

③検証方法
実験1では、被験者を道徳的中立的主張、政治エリートへのポピュリズム批判、道徳的に枠組まれた反移民訴えの3つの条件にランダムに割り当てました。実験2では、左派の経済ポピュリズムと経済ナショナリズムの関連性を評価するために同様のデザインを使用しました。

④分かったこと
ポピュリズムの処置は、共和党員とトランプ支持者の間で少数派グループに対する感情温度の評価を下げましたが、経済ナショナリズムは穏健派および保守派の民主党員の間で反中国感情を増加させました。しかし、経済ポピュリズムはそうではありませんでした。

⑤この研究の面白く独創的なところ
これまでにない方法でポピュリズムが政治的な感情や対立にどのように影響を及ぼすかを明らかにしました。

⑥この研究は現実のアプリケーション
この研究は、選挙戦略の策定や民間人の対立の理解に役立つ可能性があります。


私たちの友達が私たちを結びつける:青少年の異人種間の友情の安定性

この研究は、異なる人種間の友情が時間の経過とともにどれだけ安定しているかを調査しています。

事前情報
実質的な人種間統合は、異人種間の友情の機会へのアクセスと安定した社会関係の発展の両方に依存していますが、時間の経過とともに異人種間の友情の相対的な安定性についてはあまり知られていません。

行ったこと
2,000人以上の生徒を対象とした縦断的ネットワークデータを基に、異人種間の友情が同じ人種間の友情よりも安定しているかどうかをテストしました。

検証方法
オンライン調査実験を使用して、異人種間の友情が同じ人種間の友情よりも安定しているかどうかを調査しました。

分かったこと
異人種間の友情は、一見、同じ人種間の友情よりも継続しづらいように見えますが、相互性や共有された友人などの他の社会的要因を考慮すると、異人種間の友情は同じ人種間の友情と同じくらい安定していることがわかりました。

この研究の面白く独創的なところ
異人種間の友情の安定性に関する一般的な認識とは異なり、他の社会的要因を考慮すると、異人種間の友情は非常に安定していることが示されました。

この研究のアプリケーション
この研究の結果は、学校やコミュニティでの人種間の関係を促進するプログラムやイニシアティブの設計に役立つ可能性があります。

最後に
本まとめは、フリーで公開されている範囲の情報のみで作成しております。また、理解が不十分な為、内容に不備がある場合もあります。その際は、リンクより本文をご確認することをお勧めいたします。