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バーチャル空間への身体と心の移動

人(動物)は、自分の身体をバーチャル空間に移動させることができるようになるだろうか?身体を捨て、脳のみをバーチャル空間に接続し生きることができるか?

人間は膨大な数の弱いAIの組み合わせによる自動運転

人間は脳の指令にしたがって、思考し、身体を動かして生きている。

さらに言えば、あらゆる条件反射の組み合わせにより、ほぼ自動運転で生きている。この仕組みは、成長段階において様々な条件に反応する”脳のAI”を脳内に構築することで作られている。という仮説だ。

立って歩くのも、物体を見て認識するのも、話す、考える、人を好きになる・嫌いになる、車を運転する、食べる、寝る、これらすべての作業が条件反射による”脳のAI”の組み合わせによって作られている。

あまり心情的には信じたくないが、そうでなければ説明つかない。

この原理にのっとれば、現在のAI技術(弱いAI)を複数組み合わせることにより、人と同じ思考をして行動するAI(強いAI)を作ることも可能だろう。どれくらいの数の組み合わせを、どれくらいの時間で構築することができるかによるのだろうが、いずれできるようになる。

現在の弱いAIの能力は、基本的に人間の能力を超えていることから考えると、組み合わせで作られる強いAIは人間の能力を超えるだろう。

脳はどこまでをコントロールしているのか?

では、脳がコントロールしている”身体”とはどこまでを指すのか?

普通に考えたら、いわゆる”肉体”のことを想像するだろう。しかし本当にそうだろうか?

人間は進化の過程で、道具を使うことによって、他の生物種よりも強く、生存競争に勝てるようになった。人間以外でも、良い隠れ家を作ることができる生物が生き残りやすい可能性がある。

手を使って食べることと、箸を使って食べることに、脳は何か違いを感じているのだろうか?もちろん箸は持つ必要があるが、手はたまたま肉体にくっついていただけであり、箸を使ったほうが有利ということであれば、箸も脳が認識する”身体”の一部といってもよいのではないだろうか?

現代では、インターネットを使いこなす人が”優秀”と言われる時代だ。脳が認識しているのは、インターネットというよりパソコンであったり、検索結果などの目に見える部分だけかもしれない。

もし脳が直接インターネットに接続できる状態になったらどうなるのだろうか?脳はインターネット内の情報すべてを分析し利用することができるようになるだろうか?

それよりも、脳に代わるAIが情報を処理したうえで、人間の脳と連携することにより、膨大な情報処理を行うほうがまだ考えられる。強いAIによって人間と同じように機能するAI(人工脳)が創造できたとする。人間脳にできないことを人工脳が実施できることで、人間の脳機能は大きく拡張される。

この時、人間の脳は何を認識するのだろう。

バーチャル空間の自分を作ることができる?

人工脳ができていなかったとしても、インターネット上に自分自身の分身を生み出すことが可能だ。いわゆるメタバース空間におけるアバターもその一つだ。

バーチャル空間に没入しているとき、人間の脳はバーチャル空間のアバターをどのように認識するのだろう。もし、脳の指令によりアバターが動き、話すことができるのであれば、膨大なバーチャル空間を人間の脳が自分の拡張と認識する可能性もある。

この時、本物の肉体とアバターとをどのように区別し認識するのだろう?もし肉体がなかったとしても、脳だけが残されていれば脳はアバターを通して”生きる”ことができるのではないだろうか?

さらに言えば、ここに人工脳を接続することで、”自分”とバーチャル空間(アバター)を同一視させることも可能になる。

人間の感情はどのようにうみだされるか?

いったん脱線して、人間の感情はどのように生み出されるかを考えてみる。

諸説あるかもしれないが、感情は脳で生み出されるかもしれないが、それは身体の反応を認識することにより脳が推定をすることで”感情”が生み出される。

例えば、鼓動が激しくなった時に脳がそれを認識し、恐怖なのか緊張なのかを判断し、感情として認識させる。どちらの感情になるかはその時の状況認識にも依存するが、脳は意外に騙されやすいらしい。いわゆる吊り橋効果もその一つである。脳が感情を作っているのであれば、恋愛感情(緊張)なのか恐怖なのかを正確に判断できるかもしれないが、脳が感情を間違うとすれば、それは脳が最初に感情を生み出したのではないことがわかる。

身体の反応を脳が正確に判断できなくなった時、脳は異常を感じるらしい。うつ病は、身体の反応を正確にとらえられなくなった状態が続くことで起こることがあるらしい。うつ病の治療法として心拍を正確に判断する訓練(バイオフィードバック)がある。これも、その原理を応用させたものだ。

このことから判断すると、肉体がなければ感情は生まれない。

仮に、肉体から脳を切り離しバーチャル空間に移動すると、感情がないアバターが生み出されることになる。仮に、バーチャル空間のアバターが疑似的な身体の反応を作り出したとしても、

それは自分自身なのだろうか?

現実的に、肉体を現実世界に残したままバーチャル空間に移動して生きるとしても、現実の肉体の状態によってバーチャル空間の人格に影響することになる。

心を移動させることは簡単ではない。

今回は感情と心を同一で考えたが、感情、心、魂とは何なのか?我々が生きるうえでどのような役割を果たしているのか?まだ抽象的すぎてわからないことが多い。

最後に

最初の質問に戻るが、身体を捨て、脳のみをバーチャル空間に接続し生きることができるだろうか?

おそらくアバターやロボットによる身体の拡張は可能性がある。

人工脳による脳機能の拡張も、不可能とはいいがたい。

しかし、心をバーチャル空間に移動させるためには、まだ違う次元の仕組みが必要である。

「この世がなければあの世があり得ないように、肉体がなければ心もない」

 by 中禅寺秋彦
「魍魎の箱」京極夏彦 著


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