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辿りついたのは"Oneness for good design." - CIリニューアルの記録。

2020年、AQUARINGは中京テレビグループに参画し、その前年、代表が交代するという組織としての岐路を迎えていました。2019年の代表交代とともに、会社の核となる経営方針の考え方や、CIを再定義するプロジェクトが始動します。

私たちが歩んだプロセスを時間と思考を遡って公開することで、組織をデザインする様々な方への参考になればと思い、完成までの道のりを振り返りたいと思います。


前に進むためには、カルチャーの再定義が必要だった。

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2015年当時、それまでクラフトマンシップ一筋で志を一つにしてきた私たちは、創立15周年を迎え、さらなる経営基盤の強化に向けて、働き方改革や労働の裁量性を高める動きなど、多様性を広げていく方針に転換していきました。そして、社員数も増え、労働における選択肢も増え、様々な考え方や背景を持ったメンバーが働く場としてのデザインが整いつつありました。ちょうどその頃の制作業界は黎明期から成熟期を迎え、働き方を見直す動きが盛んに行われていたように思います。
しかしながら一方では、裁量性が高くなったが故の品質やこだわりにおけるジレンマや、多様性が高まったが故の考え方の違いなど、組織と個人の不文律の不和に苦しんだ時代でもありました。

そのような時代を経て、経営陣は組織の文化や在り方を大きく変える決心をします。その一つが、2019年の茂森・藤井への代表交代です。この時にはVUCA時代の到来と言われる通りさらに複雑化した時代となっており、自分たち自身のアップデートが急務という状況でもありました。

この新体制の船出とともに、組織の再構築と、カルチャーの再定義をするプロジェクトが始まりました。


STEP1. 
自分たち自身を理解する



曖昧だった「核」を鮮明にしていく

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代表交代直後から、茂森を含む役員と編成メンバーの対話をスタートしはじめましたが、代表に就任したばかりで役員の中でも議論が不十分だったため、会社を成長させるために必要な「価値観」が未だ曖昧な状況でした。まずは、このプロジェクトの基盤を整えるためにも、会社の未来に必要なエッセンスを見極めながら、「自分たちの核とは何か?」という対話を重ねていくことにしました。

しかし、自分たちだけで重ねる対話だけでは心許ないこともあり、第三者の視点でインタビューをしてもらいながら、私たち自身の抽象的な思いや考えを言語化していくことに取り掛かりました。インタビューアーは、茂森の言葉の背景まで理解してもらえる人選として、共通の地元である滋賀県長浜市のまちづくりを通じたよき相談相手である、中山郁英さん(http://ikueinakayama.jp/)にお願いをしました。まだスタート地点にも立てていない現状を赤裸々に相談したところ、インタビュー形式で話を聞くのではなく、役員を含めたメンバー全員とじっくりと対話をし、それぞれが大切にしたい価値観を言語化し、丁寧に共有する時間を取ることになりました。

ゴール
・プロジェクトの今後の進め方が明確になる
・今後会社を率いる茂森・藤井の会社に対する価値観が共有される
ワーク
・自身と会社の調子グラフ
・プロジェクトゴールの確認
・プロジェクトで使う言葉の定義
・プロジェクトで必要なステップの検討
・茂森・藤井の仕事に対する価値観についての対話

この中山さんとのワークを通じて多くの気づきと学びを得ることができ、とても有意義な時間を過ごせたとと共に、カルチャーを再定義していくためのプロジェクトのスタートラインに立つことができました。
そして、カルチャーを具象化していくためのCorporate Identity(以降、CI)について主に3つの視点を得ることができました。

❶ 社員みんなが「情熱を持って仕事に取組んでいる」状態を目指したい。
❷ 個人・会社・社会のどの軸で見るかによって「価値観」は変わること。
❸ ビジョンやミッションという言葉に惑わされず、自分たちの言葉の意味や関係性を整理する。

特に3つ目の視点は、ワークをしながらも課題に感じることでした。自分たちの言葉を整理するという、足元を見つめ直すことの大切に気づけたことは大きな収穫となりました。


言葉の関係性を整理する

中山さんとのワークでの気づきを踏まえ、

1. 自分たちが大切にしたい価値観を出し切ること。
2.「変えないもの」と「変えるもの」を整理すること。

という、2段階で議論をすることにしました。
メンバーひとりひとりが大切にする価値観を言葉にし、それらをAs is(変えない) / To be(変える)の軸で整理していきます。そうすることで、下記のような整理が見えてきました。

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As isに分類された言葉は、過去から継承する「変えない」価値観です。そして、To beに分類された言葉は、未来に向けて「変わる」ために必要な価値観です。こうして、自分たちが使う言葉をカテゴライズして整理していくことで、現在地が見極められ、大まかな行き先が見えてきたことを実感できた成果を得られました。


一人ひとりの「成長」を起点に

As is / To beで整理をした価値観は、個々人から発せられた言葉です。それらを複眼的な視点によって、さらに解像度を高めるために「会社という組織を社会の中で持続させるためには、何が重要か?」という経営視点での価値観検討も行いました。
経営にとっての一番大きな悩みは、これから5年、10年先の未来について想像し、多様なリスクや可能性を検証しても、どのような選択が正しいか、明確に言い切ることができない時代にあるということでした。技術やトレンドが変わるスピードも早く、制作を主体とした事業としては、従来のやり方に縛られず世の中の変化に柔軟に適応することも求められます。そのため、一人ひとりが「主体的かつ柔軟に判断できる”人”」になることが重要なのは明らかでした。
また、この年の中期経営計画では、「自律」「共創」「挑戦」のキーワードに基づいた施策を発表しており、メインテーマとなっていたのも「人」を軸にした長期的な成長戦略でした。

これらから、一人ひとりの「成長」を起点にしてこそ、個人も組織も豊かになれるスパイラルが生まれる、という経営の核となる考え方が確立されました。



STEP2. 
カルチャーの言語化



インテグラル理論との出会い

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経営の核は「人」であり、AQUARINGの一人ひとりの「成長」が、会社の成長そのものにもつながり、すべての起点となることが共通認識として確立できました。次は、それを実現するための具体的な価値観の設計をしていかなくてはなりません。
他社の組織論やミッション・バリューの考え方を調べ、参考になるフレームがないかを探していく過程で、「インテグラル理論」というものに出会いました。

次世代型組織モデルである「ティール組織」が注目されたことで、この「インテグラル理論」も様々な場面で参照されるようになったようです。この理論を採用した点は2つあります。

1つ目は、多元的であるということです。
「成長」と一言で言っても、様々な側面での意味を有しています。例えば、人との関わりの中で育まれる「人間的な成長」、専門性を高めることで得られる「技術的な成長」、また、モチベーションや情熱など内面を支える「精神的な成長」。ひとつの側面だけを取り上げて「成長した」と言えるわけではなく、総合的な視点が必要となります。そういう点で、インテグラル理論は、多元的な視点で考えられるフレームとなっているため、私たちの価値観設計にとって親和性が高く、1次元で「私」を捉えながら、その他の次元でも価値観を整理することができるのです。

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2つ目は、この4象限が相互に関わりあっているという点です。

自身の内面、自分と組織との関わり、自分と社会との関わり、そして組織と社会の関わりというように、「私」を起点としながら段階的に次元をあげて、網羅的に設計できるわけです。
例えば、自分自身の意識(左上)で、自分と組織の関係性(左下)が深く良好なものになれば、より良いアウトプットをつくり上げ社会へ実現することができ、自分と社会の理想的な関係性(右上)が生まれます。そして、アウトプットが増えることでサービスや会社という集合体が社会に認められ、組織と社会の関係性(右下)を高めることになります。そして「社会に認められた」という実感は、再び「私」という個人のモチベーションに還元され、チームや会社全体にも良好な関係性を生み出す効果が考えられます。
このように、複数の次元が相互に関係することでよいスパイラルを生みやすくなるのです。

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このように、私たちが目指す「成長」を起点とした価値観設計をするフレームの準備は整いました。あとは、このフレームにはめて設計図を描いていきます。最終的なアウトプットは、CIとして機能するものを生み出すことです。そのため、一時的に制限を外していた「ミッション」「バリュー」という概念を改めてフレームに落とし込みながらの検討を行っていくことになります。

組織と社会の関係性を示す右下象限は、AQUARINGが社会で果たす役割を表す「Mission」と位置付けます。そして、他の3象限は、Missionを実現するために持つべき価値観を表す「Value」と定義し、ぞれぞれの象限にふさわしい視点の検討に入っていきました。


Value:自分自身(左上)の視点
源泉的な制作に対するモチベーション、情熱、内発的な動機など。

Value:自分と仲間(左下)の視点
「個人」と「チーム」としての強さ、人としての「礼節・礼儀」、相手に求めるばかりではなく、自分自身が素直であることなど。

Value:自分と社会(右上)の視点
プロフェッショナルとしての意識。俯瞰した幅広い視点に基づいた向上心など。

Mission:組織と社会(右下)の視点
プロジェクトの意義(制作物が及ぼす社会的な意義)、クライアントとの関係性、会社そのものの社会との関わり方など。


この4象限の視点に基づいて、それぞれのメンバーが各象限ごとに言葉を検討し、多岐に渡るアイデアを丁寧に厳選しました。そして、まずは原案として以下のような言葉に集約をしました。

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Value:
モノづくりを楽しむ
 - 自分自身(左上)

内発的な価値観として「モノづくりを楽しむ」を掲げました。これは、AQUARINGが長く大切にしてきた「いいモノをつくる」という理念を継承する考え方です。この理念に共感して入社したスタッフも多いため、この象限に「変えない」価値観を設定しました。楽しむからこそ、仕事への情熱も生まれるという考え方は、中山さんとのワークで見えた「情熱をもって働く」という理想的な姿とも重なります。


Value:
礼節をもって高め合う
 - 自分と仲間(左下)

他社に助けを求めあえるチームは理想的ですが、それを実現するためには自分自身の謙虚さや素直さが不可欠です。相手を敬う気持ちや姿勢があるからこそ、お互いに意見や考えを伝え合い、相互に関わることで高めあえるチームとして成長できる姿を表しています。


Value:
本質を捉え自ら動く - 自分と社会(右上)

ここでは、自分たちの「専門性」やプロフェッショナルとして大切にすべき視点を考えました。AQUARINGの強さは、「なぜそれをつくるのか」を考え、本質的な答えを提示できることにあります。WHYを重ね本質に迫り、捉えた本質に対して自ら動いてこそ意義がある、ということを意識した言葉になりました。


Mission:
未来を切り開く仲間になる
 - 組織と社会(右下)

AQUARINGはクライアントワークがメインのため、クライアントの成果が社会的な価値に直結します。その制作過程で、クライアントと制作メンバーが同じ目標を見据え、対等に意見を言い合える仲間になる。これまでなかったものを一緒に創出することができる仲間を増やすことが、AQUARINGの社会的な価値と捉えました。


スタッフとの壁打ち、フィードバック

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いよいよ役員から社内のスタッフと壁打ちをしてもらう段階を迎えました。社歴の長いメンバー、若手メンバー、同業種メンバーなど、それぞれ狙いをもって編成したチームへ役員が説明を行います。そして、それぞれのメンバーから、率直な意見を吸い上げました。

出てきた意見をまとめると、以下のようなものでした。

モノづくりを楽しむ

・「楽しむ」が動詞なら、モノづくりだけでなく、何事も面白がるという姿の方が共感が持てる。
・「楽しむ」という言葉が軽く聞こえる。
・遊びのような感覚で、仕事としての重さが薄い。
・「楽しむ」では、夢中になる状態やモノづくりへの情熱は伝わってこない。
礼節をもって高めあう

・「礼節」だと遠慮がちなイメージに感じる。
・具体的なイメージが分かりづらい。
・相手を立てる意味であればそこに焦点を絞った方が分かりやすい。
・チームによる力強さは感じない
本質を捉え自ら動く

・本質を捉えることと自ら動くことが結びつかない。
・何に対して「自ら動く」のかがイメージしづらい。
未来を切り開く仲間になる

・「仲間になる」のがどういうことかイメージがしづらい
・会社のミッションとして「仲間になる」ことがゴールでいいのか?

これらのスタッフからのフィードバックによって、言葉に対する理解のギャップや、言葉から想起するイメージの差も大きく、まだまだ全員を束ねることができる品質に至っていないことが明るみになりました。しかし、検討段階では気づけなかった視点も多く手に入れることができ、完成への糸口が見えかけてきた実感を得られることができました。
まだまだ多くの課題がある状態のため、さらなる検討を重ねていくことになります。


検討を重ね、完成した Mission / Value

スタッフからのフィードバックは、意味が曖昧な部分や、フォーカスを絞りきれていない部分、洗練しきれていない部分を明確にさせてくれました。伝えたいことを繰り返し反芻しながら、丁寧に言葉を紡いでいくことによって、ようやく現在のCIである完成形を生むことができました。


Value:
いいモノをつくる
 - 自分自身の価値観

繰り返し何度も議論を重ねた結果、最も内側にある価値観だからこそ言葉そのものも「変えない」で、AQUARINGに引き継がれる言葉をシンプルに掲げることになりました。本当に納得できる「いいモノ」であるか?という問いを重ねながら、本質的なモノづくりをすることで自分の仕事に誇りを感じられるという、制作者の原点を価値観としました。


Value:
チームの力を信じる
 - 自分と組織の価値観

「高めあう」から「信じる」という言葉に変更した背景には「個」と「個」のあいだに生まれる相乗関係をより印象的に伝えたい意図がありました。互いに信じられるからこそ、素のコミュニケーションが生まれ、本質的なモノづくりも追求できます。「チームの力を信じて」全員が互いに高めあえる環境をつくりあげていくことを価値観としました。


Value:
理想へ背伸びをする
 - 自分と社会の価値観

社会への眼差しが、なぜ成長には不可欠なのか?それは、既知のことや目の前のことだけでなく、より広い視点を持つからこそ、興味・憧れ・共感などの正の動力が生まれます。中長期的な成長を期待して、社会やその先の未来を想像し、少しだけ背伸びをして行動することを価値観としました。


Mission:
仲間となって未来の輪郭をデザインする
 - 組織が社会で果たす役割

当初からからこだわりを持って使っていた「仲間」という言葉は、私たちとクライアントとの信頼関係が深くなり、対等な目線でモノづくりをしていける姿を表していました。そしてそれこそが、AQUARINGがこれまで成長してきた原点ともいえます。この視点に立つと、「仲間」になるというのは、結果ではなく手段であることに気づかされます。なぜ、仲間になる必要があるのか?それは、仲間となるからこそ、新しい価値を生み出すことができる可能性が広がり、仲間となるからこそ、今は見えない未来の輪郭を共にデザインで描くことができると考えたのです。私たちが、クライアントと「仲間になる」ことによって生まれる「デザイン」を社会に提供していくことこそ、AQUARINGが存在する価値であることをMissionとして、言葉にしました。


Oneness for good design. ステートメントの開発

MissionやValueのカタチが見えてきた段階で、それらを包括し、社会に表明するAQUARINGの姿勢を表す「ステートメント」を検討していきました。
Missionに定めた「仲間になる」ということが、勝利の方程式になっていることに迷いはありませんでした。いいモノを作るためにみんなで「一体」になることが、私たちの姿勢であり、伝えたいことであると考えました。
Oneness, それは「一体となる」こと。
いい仕事をするために、クライアントやチームが「一体となる」ことがAQUARINGのスタイルであり、これを全面に打ち出していくこととしました。

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STEP3. 
VIのリデザイン



イメージの検討

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CIの検討を重ねるなかで、意味とイメージをつなぐ「何か」が必要だと感じていました。これまで、社名にまつわるエピソードはあってもポリシーと呼べる深い意味がないことは、ある種のコンプレックスでもありました。今回を機に、改めて自分たちのアイデンティティといえるシンボルとして、社名をかえることなくその意味に向かい合う決心をしました。

水の意味や、水に関わる諺や四字熟語を手掛かりにしてリサーチを続けるなかで、「水」の持つ特性は、私たちが目指そうとしている姿に重ね合わせられる多くの要素を含んでいるという気づきに至りました。特に、天才軍師として有名な黒田官兵衛の「水五訓」という教えは、水の意味とイメージをつなぎ合わせるための直接のヒントになりました。

CIを考え始めた当初、「淀んでいた水が流れ出す」「水の力が徐々に大きくなる」という海や川など水の力強く勢いのある姿や、「AQUARING」という名称から、広い水面に波紋が広がる水紋をイメージしていました。
しかし、水五訓の中で描かれている、小さな雫が集まることで大きな力になることや、器や地形によって柔軟に形を変えること、汚れを自浄して清らかでありつづけること、雨や雲など形を変えてもその本質はかわらないこと、そして、無色でありながらも環境によって色を変えることなど、様々な水の特性を教えに例えた表現が、自分たちだけでは及ばなかった解釈を翻訳してくれました。

そしてこれらは、大切な本質は変えず、プロジェクトやミッションにあわせて、柔軟にゴールや制作物を変えてきた、AQUARINGの強さにも重なりますし、自ら清らかであり続ける姿は「礼節」たる謙虚な姿にもつながります。

水の滴どうしが合わさるとその境目はなくなり「一体」となります。こうして「一体」となった滴の集まりが流れとなって、水は勢いよく流れていくようになります。まさに、ステートメントに掲げた "Oneness" を体現しているイメージそのものです。
一滴から始まる水の姿こそが、今、私たちが目指している方向性とぴったりと重なることに気づかされたのです。


意味の視覚化

ここまで「言葉」によって具体化してきたCIの意味を視覚によって感覚訴求するためのデザイン設計フェーズに入っていきます。前述した『水五訓』によって、新たに気づきを得た「水」に込める意味や本質を、直感的にコミュニケーションできる視覚言語としてデザインしていくために、まずは「意味」を視覚化する幾つかの方向性を探っていきました。

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この時点での成果物は、「意匠」ではなく「意味」と「展開の可能性」を検討できるものを目指しています。

Concept - A
水が一体化するイメージをモチーフにし、2つが1つになるOnenessの意味をカタチに込める。
Concept - B
水面の揺らぎを線によって表現するダイナミックアイデンティティ。入力値によってVI自体が変化することでOnenessの意味を体現する。
Concept - C
水中をモチーフにし、水紋の陰影をオブジェクトと重ね合わせることでOnenessの意味を体現する。
Concept - D
広がる波紋を様々に描くことで、一滴の多様性を表すアイデンティティ。入力値によってVI自体が変化することでOnenessの意味を体現する。


大まかに絞り込んだ4つの考え方を示したうえで、プロジェクトチームで議論を深めたのは、
・誰にでも少ない言葉で直感的に私たちの概念が伝わるものであること
・シンボルとしての展開のしやすさ
・経年劣化しにくく、耐久性の強い表現であること

というポイントでした。

結果的に、オーソドックスではあるけれど上記のポイントを担保できる可能性の高い、Concept - Aの方向でデザインを詰めていくこととなります。


VIトレンドの調査

コンセプトの検証と併走して、VIのトレンドの調査と業界におけるVI傾向の調査も行い、時代性を外さないようにリスクヘッジを行っていきます。

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・大文字 or 小文字の表記の違いによる印象や効果についての調査・考察
・モバイルディスプレイ(マイクロサイズ)を前提にした密度設計についての調査・考察
・同業種のワークスタイルとVIを照らし合わせたカテゴライズ・考察 etc

などの幾つかの観点でデザインサーベイした結果から、AQUARINGのこれからのスタイルに相応しいあり方を探っていきます。上記の考察から「シンプル / 強い / 遊びごころのある」という方向性の共通認識が生まれてきたので、デザインフェーズへと進むことになりました。


ロゴデザイン

いよいよデザインをおこしていくステップになりました。通常であればあらゆる可能性を検証しながら唯一の案に絞り込んでいくというのがロゴデザイニングの定石だと言えますが、今回のCIを定義するプロセスの中で十分な量の対話を行い、同じ視座に立つことができていたことと大きな方向性は掴めていたため、無闇にバリエーションを展開することはせず、限定した範囲でバリエーションを作成していくことにしました。

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バリエーションもここまでくると感覚的なジャッジの比率も大きくなってきますが、運用時に懸念されるリスクや展開時の可能性を含めて検討していきます。
また、形状にフォーカスして検討するためにモノクロでデザインを始めていましたが、水の性質である「定義できない」定義として、透明性をもアイデンティティにしたいという意思から無彩色のままのロゴデザインで進めることになりました。
そのため、カラー定義はロゴ以外のスキームで定義し、既存カラーの持つ安定や堅実な印象から、軽やかで協調性を感じる配色変更を行っています。

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デザインのブラッシュアップ

デザインアイデアもまとまりVIの検討も最終段階、つづいて、ロゴのブラッシュアップフェーズへと入りました。
様々な角度からの検証を経て、最終のデザインの完成を目指します。

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上記はその一部ですが、Nのタイポグラフィーに込める想いとそれを表現するカタチについて何度も議論を重ねたり、シンボルをQ部分に当てることで可読性と意匠性のバランスを検討したり、ロゴ単体ではなくステートメントのタイポグラフィーとの連動性を検証したりなど、これまでのCI検討で交わしてきた想いを取りこぼさないよう、社員全員にとっての器になれるようにデザインをブラッシュアップしていきました。


デザイン完成

そして、CI検討着手から約1年半が経つ頃、VIの完成を迎えました。
以前のロゴと比較すると、力強さのある男性的な印象から、柔らかく中性的な印象へと、その表情を刷新しました。

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ここで改めて、デザインに込めた想いを振り返ります。

このロゴには、創業から大切にしているマインドである「いいモノをつくる」と、これから提供していく価値を表したステートメントである「Oneness for good design.」のふたつの想いが込められています。

融けるように丸みを持たせたタイプフェイスは、水のように柔軟な姿勢でモノづくりをしていく私たちの思想を表しています。

そして、水滴どうしが合わさってカタチを変えていく瞬間を表現した「Q」のシンボルマークは、クライアントと私たちが「一体( Oneness )」となって未来へ進むための「問い」に答えを出していく、理想のデザインの姿を重ねています。


VIとしての塑性

また今回は、CIを表現するVIとして、そして理念を伝えるツールとしても機能させるために、ロゴのデザインをベースにした自社フォントの作成にも取り組みました。

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デザイナーではないメンバーも多い中で、タイピングによってシンボルマークが呼び出せるようにするなど、アプリケーションを限定せず、誰もが手を動かしながらVIに触れられる設計にしています。

これでデザインは一旦の完成をしましたが、VIの役割はこれからが本番です。CIを視覚表現し、ブランドのファーストタッチとなる体験を持続的に運用していかなければなりません。そのためには誰にでも開かれたオープンなデザインリソースとしてのブラッシュアップを続けていくことが主題であると考えています。



STEP4.
新たな胎動



最後に今回新たに定義したCIを相関図として俯瞰してみます。

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Oneness for good design. として掲げた私たちの理念は、
AQUARINGが社会で果たす役割を定義したMissionと、
Missionを実現するために持つべき個の価値観を定義したValue
に基づいて、その実体を成しています。

そして、Valueを実践することでの「自己の成長」と、Missionを果たすことでの「価値の創造」とが循環することによって、個と組織が持続的に成長し続けられる構造となっています。

2020年にこのCIを全社共有してから、1年以上が経ちました。
これまでにも多くのプロジェクトや取り組みが、このCIに基づき議論され実施されており、新たな、そして大きな一歩を歩み始めた実感を得ています。

今回のCIリニューアルのプロジェクトは、過去と未来を往復しながら、変えることと変えないことを明確にし、自分たちの存在価値を改めて認識しなおすことのできた、とても価値のある時間だった思います。


最後に、ここまで長文にお付き合いいただきありがとうございました。
こうして振り返ると、代表を含めたメンバー全員が、葛藤しながらも前に進むためにもがき続けてきた道のりが、決して平坦なものではなかったことが感じられます。

この文章を読んでいただいて、何かひとつでもお役に立てていただけることがありましたら、こんなに嬉しいことはありません。

今後、ひとりひとりがOnenessを体現していける組織となり、またそれによってAQUARINGに関わる全ての方が幸せに近づけるように、日々精進してまいります。


AQUARING inc.

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