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【連載】あの人の推し本第2回|岡田吉弘さん(広告業)『波止場日記 労働と思索(エリック・ホッファー)』

街ですれちがったあの人、自分とまったく違う仕事をしているあの人、バーで隣に座ったこの人…みんなはどんな本を読み、どんな本に影響されているのだろう?そんな単純な興味から始まった本企画。市井に生きる、さまざまな人におすすめ本を紹介してもらいます。

今回、本を紹介してくれるのは?


広告業界に長年携わり、企業の販売促進、集客や広告の運用をする企業を経営する岡田吉弘さん。自身も書籍の執筆をされていますが、本を読むこと自体もお好きで、家族との時間を大切にしながらも、たまたま一人の時間ができた時は書店めぐりを趣味にされているそう。

好きなジャンルは人文書(哲学・歴史・教育・社会など)ですが、気分によってはカルチャー系(音楽・漫画・サブカルなど)文芸(小説、エッセイ、詩歌)も読まれるそうで、テリトリーは広いようです!

紙と電子の使い分けかた

蔵書の9割は紙の書籍だそう。電子書籍は例えば『ドラゴンボール』のような巻数が多すぎる大衆漫画や、電子のみで刊行しているWeb漫画など「読みたいけど紙で持てない理由がある本」のみに絞っているとのこと。
『ドラゴンボール』は全43巻、話数は519話!『ドラゴンボール超』まで入れるとさらに巻数は膨れ上がるので確かに置き場に困りますね。
(本記事を編集した井谷も、『闇金ウシジマくん』(全46巻)や『ベルセルク』(現行42巻)は確かに電子で買ってます…)


岡田さんのベストセレクション

人生で一番最初に触れた本、ハマった本

岡田さんが人生で最初に触れた本は『かわ』という絵本。
「実家に加古里子(かこさとし)さんの絵本はたくさんありましたが、中でもこればっかり読んでいたみたいです。私は鳥瞰図に萌える性癖があるのですが、それは幼少期にこの絵本に植え付けられたのだと思っています」(岡田さん)

高い山の雪どけ水や、山に降った雨から生まれた小さな流れは、谷川となって山を下ります。小さな流れは、ダムに貯められて発電所で電気を起こしたり、激しい水の勢いで岩をくだいて小さな石ころにしたりします。そして、やがて平野に出るとゆるやで大きな流れになります。田んぼを潤し、水遊びや魚釣りの場となり、いつしか大きな川になって、最後に海へとそそぎます。一つの川をめぐる自然と人間の営みを横長の画面いっぱいに細部まで描き込んだ絵本です。

福音館書店Webサイトより

墓場まで持っていきたい!宝物の3冊

波止場日記 労働と思索(エリック・ホッファー著)

ドイツ移民の子としてニューヨークに生まれ、視力喪失と突然の回復、失業独身者収容キャンプで社会に適応できない人間を発見、思索を深めた”労働する哲学者”エリック・ホッファーの1958年6月~59年5月までの日記。
「本は流通したほうがいいのでお墓には持っていきませんが、晩年まで長く読めるという意味だとフォッファーは挙げたいです。年をとると物事にいちいち結論を求めなくなってくるせいか、こういう思索の断片のようなものが気分です」(岡田さん)

「この惑星において人間は異邦人である、と考えるといつも興奮をおぼえる」
知識人はなぜ大衆と対立するのか。選民思想はどこから生じるのか。沖仲士の哲学者、ホッファーによる思索の結晶。

みすず書房Webサイトより引用

棒がいっぽん(高野文子 著)

「学生時代に初めて読んだ高野作品がこれなのですが、短編「美しい町」に心を奪われてしまいました。それ以来のファンです。鳥瞰萌えなのでそういう構図が多いのもポイント高いですね。あと、とにかく絵がうますぎます」(岡田さん)

「昭和43年6月6日のお昼ごはん、覚えていますか?」
「棒がいっぽん-」それは、物語が始まる合言葉。
マガジンハウスが1990年代に出版していた漫画雑誌「COMICアレ!」に掲載された「奥村さんのお茄子」をはじめ、6作品を収録。
独特の視点と表現手法で身近な生活が描かれます。
長らく電子書籍化されてこなかった高野文子作品でしたが、
著者の許諾をいただいて2023年6月30日に遂に電子書籍化されました。

SHURO Webサイトより引用

愛のようだ(長嶋有 著)

「長嶋作品はどれも好きなのですが、ひとつ挙げるとすればこれでしょうか。旅の話なのに描写はほぼ車中のことで占められているので、長嶋作品の醍醐味である会話や細部の描写が楽しめます。主人公の車が日産ラシーンなのも趣味が合います」(岡田さん)

40歳にして初心者マークの戸倉は、友人の須崎と、その彼女琴美とドライブへ。退院したらどこかいこうという約束を果たすのだ。キン肉マン、北斗の拳、奥田民生…車中の合唱、前方を走るタンク車に興奮、振られた男は高速道路で捨て身の行動に打って出る。そして、大切なことに気付く瞬間が訪れて―。愛しさと哀しみを鮮明に描いた恋愛小説。

紀伊国屋書店Webストアより引用

岡田さんにとって本とは?

岡田さんにとって本とは何でしょうか?という質問をしたところ、「あまりそういうことは考えないが、しいて言うなら『あると落ち着く紙の束かな』」という答えをいただきました。あると落ち着く紙の束…とはどういうことなのでしょうか?
「ただの書類を束にしても何も感じないですが、書籍として丁寧にパッケージされていると『そこに著者と編集とデザインと流通』が存在していることになるので、モノとしてどっしりする気がします。そのどっしり感が安心感」(岡田さん)
たしかにただのテキストの羅列ではなく、装丁や編集、紙の感触、書店での出会い、すべてをひっくるめて「本」という感じがします。だからこそ電子書籍ではなく書籍に特別な魅力を感じるのかもしれません。「あると落ち着く紙の束」、いいですね。


よくいく本屋さんは?

現在は北陸金沢にお住まいの岡田さんですが、以前は東京に居を構えていました。その当時よく訪れていた書店は新刊だと東京堂書店(神保町)、あゆみBOOKS(各店)、古書だとコンコ堂(阿佐ヶ谷)、クラリスブックス(下北沢)、新しめのお店だとりんてん舎(三鷹)、水中書店(三鷹)がお好きだそう。独立系書店&東京西側がお好きと見た!

金沢に移住してからは金沢ビーンズ明文堂が心のオアシス!とにかくデカくて最高なんだそうです。調べてみると、地上三階建て延べ床面積1,269坪とのこと!本好きにはたまらない空間ですね。一日過ごせそう(笑)。

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本棚:ジャンルに分けて整理!

岡田さんの本棚はこんな感じ。木箱を積み重ねて、自分らしい棚づくりをされています。

棚自体にこだわりはないけれど、昔よく通っていたというあゆみBOOKS小石川店やPebbles Booksの棚がかっこよかったため、少し参考にしているとのこと。

この棚にもエリック・ホッファーが隠れています!

棚の整理は、探しやすいようにジャンルで分けているそう。これだけあるとちょっとした本屋さんのようで、画像を見ているだけでわくわくしてきます。

こちらは文芸の棚。付箋が貼ってあるのは何なんだろう?
こちらは漫画の棚。サブカルや少年漫画系に紛れて、
左の方にちらっと『ちびまる子ちゃん』があるのが個人的に好きです(笑)
こちらはビジネス棚。広告関係やEC関係の書籍も下の方にありますね。

というわけで、第2回目は岡田さんの書籍セレクションと本棚を見せていただきました。本企画ではこれからも市井に生きる色々な方の推し本を取材していきます!気にいっていただけた方は、ぜひ下記のSNSをフォローしてみてくださいね~。

取材:井谷麻矢可(出版社アプレミディ)


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