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働き方改革のデメリット ~コンサルの現場から見えること~

戦略コンサルタントのアップルです。

アベノミクスの注力政策の一つであった働き方改革がかなり進みました。端的に言うと、残業や休日出勤に対する規制がかなり強まりました。電通の事件以降その圧力がかなり強まった印象をもっています。

働き方改革。ブラックな労働を排除し、ホワイトな働き方を普及させていこう。耳あたりはとても良いですし、実際に女性が働きやすい社会を作るといった観点では重要な取組だと思います。

ただ、働き方改革には、デメリットもあると感じています。今日はそのあたりについてアップルの見解も交えて書いてみようと思います。

クライアント企業から聞こえてくる声

アップルのクライアントの大企業もご多分に漏れず働き方改革の波に大きく飲まれています。夜は20時以降基本的に一般職は働かせてはいけない。こんなような運用になっているところがとても増えた印象です。毎日20時までには帰れるというのは、ワークライフバランスの観点ではさぞ良いことでしょう。

ただ、これに対する不満の声もしばしば聞こえてきます。

一つは管理職の不満の声。若手を働かせられないので、40代、50代の管理職がときに深夜まで働いている状況に違和感を感じるという声が聞こえてきます。「おじさんばかりが働いているのって健全なんですかね~」と。コンサルタントとして客観的にみても、若手がさっさと帰っておじさんが遅くまで働いている光景には正直違和感を感じます。

もう一つは一部の若手の不満の声。コンサルティングファームとプロジェクトで協働する若手の方は、基本的に優秀な方が多いです。若手のエース級と目されている方もいらっしゃいます。そうした方々は、自分が会社をリードする立場であるということをわきまえつつ、ガンガン働こうとします。ただ働き方改革の中でガンガン働けない環境になりつつある。そこに対する不満の声も何度か耳にしました。

このように耳障りのよい働き方改革も、裏では不満に思っている人がたくさんいるのです。

コンサルファームにも到来するホワイト化の波

アップルが所属するファームもそうですが、コンサルティング業界にも働き方改革の波は来ています。アップルがこの業界に入った頃は、「裁量労働制なんだからいくらでも働きたいやつは働けばいいし、成果が出ないやつはいくら働いてでも成果を出さないといけない」という暗黙の了解があったように思います。アップル自身もその覚悟をもってこの業界に入りました。

しかし、時代は変わり、最近ではそういう価値観が変わりつつあります。プロフェッショナルファームとは言え、労務管理はきっちりと制約をかけないといけない。深夜残業や休日勤務が完全に排除されるわけではないが、理由とともに上長の了解をとらないといけない。ほかのファームから聞こえてくる声も含めて概ねこんなような環境になってきています。

しかし、プロフェッショナルファームである以上、アウトプットのクオリティには妥協はできません。プロジェクトの実行責任を負うマネージャーの立場の方は、ある程度ホワイトな働き方の担保に配慮しつつクオリティを高めないといけないという矛盾をどう乗り越えたら良いのか、悩んでいる方も多いのではないかと推察します。

ホワイト化の弊害

上記のように事業会社にもコンサルティングファームにもホワイト化の波は押し寄せているわけですが、その弊害は結構大きいとアップルは考えています。その構造を図解したのが次図です。

生産性

コンサルのような累積経験がものをいう仕事においては、累積投下労働時間が労働生産性を大きく左右します。その関係は線形ではなく非線形です。つまり労働時間が蓄積されればされるほど、生産性の成長角度は増していきます。

この構造を前提とすると、働けば働くほどぐんぐん成長していくことになります。ブラックな働き方を自ら許容し、貪欲に働く人は、ぐんぐん成長していく。逆にワークライフバランスを重視し仕事はほどほどにという人は、緩やかに成長していきます。

働き方は個人の自由です。ブラックな働き方も個人の自由。ホワイトな働き方も個人の自由。どっちの肩をもつわけではありません。

ただ、ファクトとして言えることは、

・熟練度がバリューの鍵となる仕事においては、ガンガン働いた方が圧倒的に成長が早い
・働き方改革の大義名分のもと労働時間にキャップをかけることは、突き抜けたデキる人材の数を減らすことになる

ということです。

つまり、労働時間にキャップをかけるという意味での働き方改革は、組織や社会の総人的資本を減らすリスクが多分にあるということで、こうしたデメリットについては冷静に理解しておく必要があると思います。

働き方改革には慎重に向き合うべき

以上で指摘したのようなデメリットも含め、働き方改革には光と影があります。

【光】
・ワークライフバランスを担保しやすくなり、人間的な生活・人生を送れるようになる
・過労死など、過労働による健康被害が減る
・子育てと仕事の両立がしやすくなることなどにより、労働参加率が高まる

【影】
・中間管理職のおじさんたちが疲弊する
・ガンガン働きたい若手の人に対してブレーキをかける
・熟練度が求められる知識集約型職業において総人的資本を減らし、ひいては日本の経済力にマイナスインパクトを与えかねない

光と影のバランスの考え方(どっちを重視するか)は人それぞれです。会社組織においても考え方は様々でしょう。光と影があるということを認識した上で、自社にとって最適な制度の在り方を模索することが大事だと思います。


今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!



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