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戦略コンサルタントが駆使する3つの仮説思考(続編)

戦略コンサルタントのアップルです。

仮説思考の第二弾です。前回の記事では、戦略コンサルタントは問題解決や戦略策定において3つの仮説思考(論点仮説、アプローチ仮説、答え仮説)を三位一体で駆使しているということを書きました。

今回はその続編(進化編?)として、クライアントとのコミュニケーションにおいてさらに2つの仮説思考を働かせているということをご紹介します。

前回の記事の振り返りと今回の記事のきっかけ

前回の記事では、問題解決や戦略策定は「論点設定→アプローチ設計→答えの導出」の3ステップで行われており、それぞれに対応する形で論点仮説、アプローチ仮説、答え仮説を立案することが大切であるというお話をしました。

仮説思考の本には「答え仮説」の立て方のことが書いてありますが、実践的には論点仮説(問いの設定)やアプローチ仮説(解法の設計)も同じくらい大事だというのが申し上げたかったことになります。

この記事に対して、Twitterのフォロワーの方から、クライアントとコミュニケーションをとったりクライアントに提言する局面でも仮説思考が求められますよねという指摘があり、確かにそういえばそうだと思いましたので、前回の続編としてそのあたりについてお話したいと思います。

顧客コミュニケーションで求められる2つの仮説思考

前回の記事で話した3つの仮説思考は、あくまでアウトプットを作る過程での仮説思考です。論点を立てて、アプローチを設計して、答えを導き出す。これらをスピーディーに進めるために3つの仮説思考が求められるということですが、これらはあくまで戦略ファームの中で完結する話です。この段階ではクライアントは登場しません。

ですが、コンサルティングプロジェクトの最終目的は、クライアントに対して意味のある提言をし、それをクライアントに納得頂き、クライアントのアクションに繋げることです。いくら戦略ファームがいい答えを出しても、それがクライアントに受け入れられなければ意味がありません。

そこで、顧客コミュニケーションにおける仮説思考という話が登場します。

これには2つあります。メッセージ仮説表現仮説です。
(前回記事の図に2つ足しています)

仮説思考

プロジェクトである程度検討が進み、答えが見えてきたとしましょう。その次に考えるべきは、その導かれた答えをクライアントにどう伝えると理解してもらえるか、受け入れてもらえるかという「メッセージ」です。

コンサルティングの仕事は答えを機械的に伝えればよいというものではありません。クライアントの置かれた状況、直面している課題、これからやりたいと思っている想い・・・。そういうものを総合的に勘案して、どういう言葉で伝えるのが最適かということを戦略コンサルタントは練ります。

戦略コンサルタントというと「問題解決マシーン」のようなイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、実態は全然そんなことはありません。最終提言に近づくほど、言葉づかいやレトリックを考えます。その営みは理系的ではなく文系的です。

このように「どういうメッセージで伝えるべきか?」を仮説するのがメッセージ仮説というわけです。戦略ファームでは主にプロジェクトリーダーの役割になります。

メッセージ仮説が決まれば、その次に表現仮説を練ります。

・伝えたいメッセージは、どういうスライド表現なら伝わるか?文字で伝えるのが良いのか、図解で伝えるのが良いのか、どっちだろうか?

・全体のストーリーはどうすべきか?結論ファーストで伝えるべきか、起承転結で順を追って伝えるべきか?

・プレゼンの緩急はどうつけるか?

こんなようなことを考えるのが、表現仮説を考えるということです。

このように、メッセージ仮説や表現仮説は、クライアントという相手ありきのものです。クライアントの心情、クライアントメンバーの特性やクセを読み解く必要があります。そういうことを色々想像しながらメッセージ仮説や表現仮説を紡ぎあげていきます。

仮説と答えの明確な境界線はない

まとめますと、戦略コンサルタントは、問題解決のフェーズで3つの仮説思考、クライアントとのコミュニケーションのフェーズで2つの仮説思考、計5つの仮説思考を総合的に駆使しながらコンサルティングをしていることになります。ものの本に書いてある答え仮説の話は5分の1くらいのことしか書いていないことになります。

ポイントとなるのは、仮説思考には順番があるという点でしょうか。答え仮説をいきなり立てる前に、論点仮説やアプローチ仮説を立てることが重要になります。論点仮説やアプローチ仮説を立てた上で調査や分析を少し走らせて初めて説得力のある答え仮説が出てくるからです(そうでない答え仮説はただの思い付きや妄想)。

また、答え仮説が答えに近づいてきたタイミングで、メッセージ仮説や表現仮説を考えていくことになります。

戦略コンサルティングの仕事をしていて感じるのは、仮説と答えに明確な境界線はないということです。昨日まで仮説だったものが今日突然に答えに変わるという感覚はありません。仮説がどんどん進化していく。その中で答えに徐々に近づいてはいくが、100点の答えに到達したかどうかは明確に判断できない。こんなようなイメージです。

戦略コンサルタントにしても、ビジネスパーソンにしても、明確なゴールはない中で常に仮説を進化し続ける姿勢が大事なのだと思います。


今回はここまでです。
最後までご覧頂きありがとうございました!


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