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戦略ファームでシニアがジュニアを無能と感じる構造を図解してみた

戦略コンサルタントのアップルです。

昨日、「戦コンでシニアがジュニアを無能と感じる構造」という絵をTwitterに投稿したところ、アップルとしては過去最大の拡散をしました(現在も拡散は続いています。ありがたいことにフォロワーも一気に増えました)。


<掲載した図>

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この絵がなぜウケたのかはわかりませんが、おそらく、コンサルティングファーム界隈の人たちの実感をうまく可視化できていたからなんじゃないかと思います。コンサルティングの仕事に限らず、熟練度が価値のドライバーになる”職人的な仕事”にはこの構造が当てはまるので、「あ、俺の/私の仕事もこの構図だ」と感じて反応された方もいるかもしれません。

Twitterの中で「この図の解説をしてほしい」とのコメントも頂いたので、
・この図を描いた意図
・この図の見方
・この図の受け止め方
の3点、記事にまとめておきます。

この図を描いた意図

意図というほど明確な意図があったわけではありません。なんでも絵にしたり構造化するのが好きなので、ふと思い付きでアップルの頭の中にあったものを絵に表現してみただけです。

あえて言えば、アップルもまさに戦略ファームのシニアの一員なのですが、こうした力量差がある中で如何に日々我慢をしながらメンバーと接しているかを理解してほしかったというのがあるかもしれません笑。

この図にある通り、実際にSMやPなどのシニアと入社2~3年の駆け出しコンサルタントとではコンサルティングスキルの差が10倍以上あります。10倍以上力量の差があると、シニアの目線からすれば、「できが悪い」「使えない」と思うことが日常的にあります。無論、経験年数も役職も違うので、力量の差はあって当然です。しかし10倍以上の差があるとなると「もうちょっと何とかできないものかね、、、」とフラストレーションがたまるのも事実です。人間だから仕方ありません。

・シニアとジュニアでこれだけ力量や生産性の格差があるという事実
・シニアは我慢しながらもプロジェクトのデリバリーやメンバーの育成をやっているという事実
ということを知ってほしくてこの絵を描いてみました。

この図の見方

では、この図の解説に入っていきましょう。図を再掲します。

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この絵が示していることは、解説しなくても大体は理解いただけると思うので、①や②のギャップがなぜ10倍、数倍といった大きなものになるのかという点にフォーカスして解説します。

<①のギャップの解説>
まず、先も書いた通り、シニアとジュニアの実力差は10倍くらいあります。これを「①」の両矢印で示しています。

これだけ大きな差が開くのには大きく2つ理由があります。

シニアはもともとハイパフォーマー
ひとつ目の理由は、そもそもコンサルタント時代にハイパフォーマーだった人がマネジャー、さらにはSM/Pに昇進しているという事実です。コンサルタントの中でもハイ、ミドル、ローパフォーマーがいますが、ハイパフォーマーとミドルパフォーマー(平均的なコンサルタント)との実力差は実感として2~3倍くらいあります。ここでいう実力差は生産性の差です。ある問題解決のミッションを与えたとき、ミドルパフォーマーが1ヶ月かかって答えを出すとすれば、ハイパフォーマーは2週間以内で答えを出すというイメージです。

シニアになるにつれ成長速度が加速する
二つ目の理由は、マネジャー、SM、Pと昇進していく過程で、成長カーブの角度が変わっていくという事実です。成長が直線(線形)ではなく、二次曲線のように非線形なのです。なぜ非線形に成長していくかと言うと、さらにいくつかの理由があります。

A.シニアになるほど経験の蓄積量が加速する
昨今、コンサルタントは一人1ケースですが、マネジャー以降は、複数のプロジェクトを掛け持ちするようになります。2~3つのPJを常時掛け持ちします。PJを掛け持ちする数に比例してインプットが増え、思考量が増え、インサイトやナレッジが蓄積されていきます。平たく言えば、「引き出しの数」がどんどん増えていって、それがコンサルティングスキルの源泉となっていきます。

B.シニアはプレッシャーにさらされている
マネジャーやプロジェクトリーダーであればプロジェクトの実行責任者なので、プロジェクトがいかなかった場合の責任は自分が負うことになります。炎上でもしたら大変なことです。またSMやPであれば売上責任を負います。高質なアウトプットを出し、クライアントマネジメントをうまくやり、継続PJをとっていかないと売上が立たなくなるので、必死でその辺をやります。シニアの傘の下でコンサルティングワークに取り組むジュニアとは、圧倒的にさらされるプレッシャーが異なります。

C.シニアは視座がどんどん高くなる
これも①に関連しますが、いろんなクライアントやいろんなタイプのテーマを経験する中で、物事を高い視座でみれるようになっていきます。経営者の視座に近づいていくことによって、それがまた戦略コンサルティングの力の源泉になっていきます。

こうした理由でシニアとジュニアの力量の差は10倍くらいあるのです。

<②のギャップの解説>
②の両矢印の方は、シニアが「自分のコンサルタント時代のときと比べてどうか?」と比較したときの力量差を示しています。先述のとおりもともとハイパフォーマーだったことに加え、過去の自分の実態は記憶が薄れる中で上振れる傾向にあるため、「当時の自分と比べても今の平均的なコンサルタントの力量は物足りないな」と感じるわけです。


このように、
①のギャップ:現在の自分との比較
②のギャップ:当時の自分との比較
のいずれでも数倍以上の力量の差があるという感覚になり、結果フラストレーションがたまることになるというわけです。

この図の受け止め方

最後にこの図の受け止め方について。

アップル含むシニアは、この構造が必然的なものであると心得た上で、ジュニアと接するときに我慢、期待値コントロールすることに尽きると思います。

一方でジュニアは、これだけの力量差があることを心得つつ、シニアの力を積極的に借りることがまず大事になるでしょう。自分ひとりの経験値やスキルだけでは、クライアントから頂いている高いフィーを正当化するだけのバリューは出せない。バリューを高めるためにシニアの知見やナレッジを積極的に借りる。これをどれだけプロアクティブにやるかで、自身の成長速度も変わってくると思います。

加えて、この構造をポジティブに捉えると、
・コンサルティングスキルの向上は、時間を味方につけるべきものである。腰を据えて少しでも長く働き、経験を積めば、着実に成長することが期待できる
・さらにマネジャーまで昇進すれば、一気に仕事は楽しくなるし、成長速度も増していく
ということが言えます。2~3年であきらめず「石の上にも5年」の覚悟をもってこの仕事に取り組み続ければ、たいていの人は活路が見えてくるはずです。


今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!

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