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長編小説『死んだ恋人に会いにいく』

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拙作長編小説『死んだ恋人に会いにいく』全50話のまとめです
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記事一覧

死んだ恋人に会いにいく 第1話

あらすじ  高校時代のクラスメイトの訃報に接した中原叶多は、数年振りに遠地にある故郷へと…

青空野光
2か月前
4

死んだ恋人に会いにいく 第2話

第一章 水守唯帰省  納戸代わりの空き部屋から45リットルのキャリーバッグを引っ張り出し…

青空野光
2か月前
3

死んだ恋人に会いにいく 第3話

旧友  高畑の家から五分ほど車を走らせると、茜色に染まる低い山を背負った古びた校舎が見え…

青空野光
2か月前

死んだ恋人に会いにいく 第4話

闇夜 「唯さんと最後に会えてよかったです」  頬に幾筋もの涙痕をつけた芝川さんが水守さん…

青空野光
2か月前

死んだ恋人に会いにいく 第5話

告白  それはあまりに唐突な告白だった。  三日前といえば水守さんが自ら命を絶った、その…

青空野光
2か月前
1

死んだ恋人に会いにいく 第6話

着信  満天の星々から地上に視線を戻した、ちょうどその時だった。  ズボンのポケットでス…

青空野光
2か月前
2

死んだ恋人に会いにいく 第7話

少女  薄く開けた視線の先の飴色の天井板のおかげで、自分が今どこにいるのかを思い出すための余計な時間と労力を省くことができた。  寝巻き代わりのTシャツとジャージ姿のままで母屋へと向かう。  相変わらず開け放たれたままの玄関の向こう側では、まだ早朝といってもいいような時間にもかかわらず、よそ行きの服を着た父と母がドタバタと歩き回っている姿が見えた。 「あ、おはよう叶多。それじゃあ、お母さんたち行ってくるからね」  玄関の前で首を傾げる私の姿を見つけた母が、そんなようなよくわ

死んだ恋人に会いにいく 第8話

質問  汗ですっかり重くなったシャツを洗濯機に放り込み、冷水のシャワーに頭から打たれた。…

青空野光
2か月前
4

死んだ恋人に会いにいく 第9話

疑念 「それはどういう意味?」 『おねえちゃんの、このスマホの発信履歴に中原さんの名前が…

青空野光
2か月前
2

死んだ恋人に会いにいく 第10話

会遇  時計はまだ十八時を少し過ぎたところだったが、私の心はもう今日という一日を終えたが…

青空野光
2か月前
1

死んだ恋人に会いにいく 第11話

劣等  もともとが両思いだったこともあり、私と彼女の交際は蜜月からスタートした。  今に…

青空野光
2か月前
1

死んだ恋人に会いにいく 第12話

晴天  周囲に一切の遮蔽物がないこの家は、真夏であっても窓さえ開けておけば心地の良い風が…

青空野光
2か月前
1

死んだ恋人に会いにいく 第13話

第二章 芝川咲希唐突  都会に移り住んでから七年になる。  私の勤め先では一昨年ほどから…

青空野光
2か月前
3

死んだ恋人に会いにいく 第14話

困惑  五階建てマンションの最上階の、その角部屋に私の部屋はある。  会社から支給される住宅手当だけでは家賃のすべてを賄えはしなかったが、田舎育ちゆえ静かな環境に高い価値を感じていた私にとって、この物件は理想的な住処の条件に適合していた。  エレベーターホールでゴンドラが降りてくるのを待っている間にも、彼女はずっと私の腕にすがりつきながら、いかにも楽しげに口を動かし続けていた。  互いの関係性を考えると幾分行き過ぎたスキンシップに思えたが、アルコールの作用がそうさせているだ