記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

「小記事の備忘録」行政・政治 の話題

「今週までのパレット」「小記事の備忘録」は 過去ログにもあります。

法律等については、在職中に勉強をした事を中心に(昔話として)書いていますが、記憶違いも無いとは言えませんし、その後の法律改正等もありましょう。実用資料にするには法務省のホームページや担当する役所等にご確認ください。

2022.10.2 お借りした画像はキーワード(政治から連想した)「夢」でご縁がありました。シンプルで美しい画です。日の丸も連想しますね。無加工です。ありがとうございました。


朝ドラ「虎に翼」から公私混同を思う

(2024.7.8)

先日の朝ドラ「虎に翼」では、ヒロイン・寅子が、恩師・穂高の退官記念の祝賀会で、花束贈呈の担当だったのに、突然それを拒否して逃げ出し、廊下に出て来た穂高を、面と向かって喧嘩腰で非難したのです。私にはなぜ寅子が怒ったのか分かりませんでした。しかし、(身内の裁判で弁護してくれた恩人でもあったのに)それどころか、穂高が親の仇だったにせよ、寅子の行為が適切だったとは評価したくありません(大河ドラマ「光る君へ」のヒロイン・まひろは、親の仇が家に遊びに来ても、冷静さを失いませんでした)。

祝賀会の担当者たちは祝賀会という行事の成功のために働く必要があり、担当を受けた以上、個人的な問題は祝賀会とは切り離す必要があると思います。さらに、祝賀会に来て下さった、たくさんの来賓の方々には何の罪もありませんが、不快な思いをさせてしまった事はどう詫びるのでしょう。そして、祝賀会の責任者にも恥をかかせ、恩人ではあっても親の仇ではない穂高は、人生の集大成でもあるあの祝賀会に、目下の者から意味不明の説教をされ、冷や水をかけられたのです。葬式での説教と同じく不適切な行為だと思います。

もし寅子が男性ならば、来賓を含めた周囲から「そういうじんぶつだ」と評価され、左遷されなくとも、以後、出世コースから外れてもおかしくないと思います。それでも出世コースに残っていたなら、それは「おんなだから」と大目に見てもらえたからかもしれません。しかし、それは男女平等をめざす寅子にとって、ありがたい事ではないでしょう。

(追記)退官の挨拶で、穂高は「出涸らしも何も、昔から私は自分の役目なんぞ果たしていないのかもしれない」と言いました。定年退職時の挨拶としてよく用いられるものに、「大過なく過ごすことが出来ました。これも皆様のおかげです」みたいなものがあります(「自分に大過がなかった以上の功績は無く、大過がなかったことすらも皆様のおかげ」という意味でしょう)。自分を謙遜して言う言葉ですが、穂高の挨拶からはそれを連想しました。だから、私は大人らしい適切な表現だったと思います。

さらに、昔、寅子が出産か、仕事かを悩んでいた当時、穂高は迷うことなく出産に専念するよう助言しました。仕事には代わりがいますが、自分の出産は自分しか出来ませんから、極めて分かりやすい話で、あれも適切だったと思います。

(追記2)ネットを見ていたら、このトラブルは「寅子なりの愛情表現である」みたいな話がありました。私の理解では、それはたぶん、恩師が「昔から私は自分の役目なんぞ果たしていない」と言った事に対し、弟子が「そんな事ありませんよ先生」とフォローするようなものなのでしょう。加えて、少し、父と娘みたいな気配も感じられなくもありません。そのような解釈なら理解できない事も無いですが、トラブルと化しては良くありません。やはり今回、寅子は後日に、それを口にすべきであり、前後の見境もなく、あの場で行ったことは不適切だったと思います。(2024.7.4のパレット記事の加筆再掲)

紅白歌合戦から開票事務を無理に語ってみる

(2024.7.4)

先日、NHK・TVで「紅白歌合戦」の舞台裏の特番を放送していました。それを観て連想したのは選挙の開票事務です。いうまでもなく両者はまったく違ったものです。連想する方が無理なのかもしれませんが、それを承知で書いてみます。

TVで少し観た範囲では、紅白は、誰が、いつ、どこで、どんなパフォーマンスをするかが、綿密に決まっていて、500Pにも及ぶ台本があり、事前の会議や練習もあるようです。

選挙の開票事務も、前方の壇上には外部の立会人等が、後方の客席には報道関係者や、一般の観客が観ています。そして、大勢の職員が時報でスタートし、台本に決められた、誰が、いつ、どこで、どんなパフォーマンスをするかに従って、粛々と事務が行われるのです。

事前に打ち合わせがあり、本番では台本も頭に入れておかなければなりません。大声をあげて「おまえは、あっち、あっち」とか、「こっち、こっち」とか、「それじゃない、これをやれ」とか、そいう醜態は起こってはいけないし、まず起こりません。こちらの台本は10P~20Pぐらいのものでしょう。紅白とは次元が違うと思いますが、こちらも、間違えたら新聞沙汰になるような、数時間の大舞台をおこなっているのです。

そうそう、今回は橋本環奈さんが出られるということで観た方もたくさんいらしたのではないでしょうか。さすがオーラは紅白に負けていませんでした。(2023.1.2のパレット記事に加筆再掲)

開票所、数十枚の開票結果は、最終結果とほぼ相似形に

(2024.7.4)

時報と共に開票が開始されると、開披台についた職員は、目の前にある投票用紙の山から、一つかみ、数十枚を取り、開披台の上に、候補者別に並べていきます。その候補者別になった数十枚の厚さは、全投票用紙の開披結果とほぼ相似形になるのです。統計とは凄いものですね。 ですから、TVを見られない職員でも、開披開始後数分で、ほぼ当確の予想が出来てしまう事が多いです。その候補者別の投票用紙は、担当者が箱を持って集めに来ます。その後、別の職員が目を変えて点検したり、機械による集計をしたのち、一定数ずつ輪ゴムで縛って候補者別に積み上げられます。ちなみに、マスコミは観覧席から双眼鏡でその束を見ているようです。(2022.7.10のパレット記事に加筆再掲)

日本の開票事務は速くて安全

(2024.7.4)

先日のTVでは、日本の賃金が上がらない問題について話しており、その中に「生産性が低い」という説もありました。それで思い出しましたが、米大統領選挙は開票事務に何日もかかるようですし、インドネシアではサッカーで170名以上の死者が出ただけでなく、2019年には大統領選挙の開票事務で272人が過労死したと言われています。

選挙制度が日本とは違いますから一概には比較できませんが、日本の開票事務は一晩で、実際には数時間で、安全に判明します。あれが平均的な日本の公務員の仕事だと思います。いや、早朝からの投票所勤務で疲れ切った人も混じっているはず。だから、あのパフォーマンスは決してベストなものではありません。これに対して、当時「日本は生産性が低いと言われているが、公務員の生産性は高いのか?」という疑問の声が民間から上がったようです。日本には「お役所仕事」とか「公務員バッシング」という言葉があり、世論には「民間は頑張っているが、公務員は遊んでいる」みたい空気が無くもありませんから。

確かに、少なくとも民間の経営者側は、大企業から零細企業、個人商店・個人事業主まで皆さま頑張っておられると思います。しかし、アルバイトを含めた従業員の方が、経営者や公務員並みの仕事をしているかと言えば、どうなのでしょう。公務員以上に働いている方もいるでしょうが、なかにはドラマみたいに「俺は(コツコツと働くのは性に合わないので)ど~んと大きく儲けてやる」みたいな人もいるのではないでしょうか。

もちろん公務員側にもデジタル以外に改善点はあります。早いと言われる日本の開票事務の職員にも、実は、手の早い人と、そうでもない人がいます。沢山の書類を短時間にさばく仕事をしている係から動員された人は早く、そのような担当を未経験の人はそうでもないのです。さばく技能が身についていないのですね。つまり、早い開票事務も、もっと早くできる可能性が無くはないのです。

ちなみに、ニュース映像で外国の開票事務を見ると、①投票用紙が便箋大か、それ以上に大きい国があるようです。日本ではハガキ大なのに。投票用紙が大きいとさばく仕事が遅くなりがちです。さらに、②開票事務員の動きが遅いようです。日本の開票所の動きが遅い人より、さらに遅そう。その他の理由も沢山あるのでしょうが、ニュースからでも①②の問題が分かります。投票用紙1枚について1秒短縮されるだけでも、膨大な枚数ですから効果は出て来ると思います。(2022.10.8のパレット記事に加筆再掲)

投票所の「日本のいちばん長い日」

(2024.7.4)

@ 投票所は投票前日の午後3時頃から設営します。ある市町村の投票所では、掛け時計を紙で覆います。投票時間はNHKラジオの時報で決めます。壁にある絵画や書、あるいは(めだちすぎる)色の付いた物も、紙で覆うのが普通です。候補者の作品だったり、候補者を連想させるような物、シンボルカラーであってはいけないからです。

投票当日の早朝は、投票所の周囲を歩き、「違法ポスターが貼られてないか確認」もします。数年前、新人職員が誤って合法ポスターをはがしてしまい、新聞沙汰になりました(記憶が確かなら警察沙汰にも)。新人がやらさられることが多いポスター点検。先輩職員が、違法・合法を念押しして、新人に教えて欲しかったと思います。ミスは新人のキャリアに関わりますから。

( 投票所の職員というのは、市区町村役場などの職員が指名され、色々な係から、その日だけ集まった人たちです。ですから、選挙は専門ではないし、その日だけという希薄な人間関係です。(元の係ならいるであろう)新人の教育係もいないのが普通でしょう。新人は、時には先輩の背中を見て仕事を覚えなければいけないのです。)

朝7時に投票所が開くので、担当者は6時過ぎには投票所に集合します。その為には5時には家を出なければならず、4時には起きる必要があります(自宅が遠くの者は、前日から近くのビジネスホテルなどに泊まります)。2月の選挙なら、暗くて寒くて、起きるのがとてもつらいもの。「日本のいちばん長い日」が始まります。

そして、20時に投票所が閉まると、後片付けをして、すぐに開票所へ異動します。20時45分には会場に整列し、21時ジャストから開票事務が始まります。開票が終わるのは(現在の投票率では)24時前後が普通で、時には明朝までかかることもあります。

そして、深夜から早朝に帰宅し(緊張を解いてリラックスしたいから)風呂に入り、深夜ラジオなど聴きながら、缶ビールとカロリーメイトの夜食を捕って、3時間ぐらい仮眠すると、また仕事です(再びビジネスホテルなどに泊まる者もいます)。

市町村役場は翌朝から、何事も無かったように通常事務が始まります。

翌朝は意外と眠くありません。まだ緊張が継続しているのでしょう。しかし、午後から眠くて我慢できなくなります。ここになって、やっと緊張が解けてきたのだと思います。でも、繁忙期なら残業になることも。疲労が抜け、体が通常モードに戻るのには2~3日後です。(2019.7.16のパレット記事に加筆再掲)

「Jアラート」から「AI兵器」を思う

2024.6.28

完全自律型AI兵器の開発を否定 日本政府「人間中心の原則」を表明:朝日新聞デジタル (asahi.com) Jアラートについて、迅速性や正確性を求める声があるようですが、私は緊急地震速報を連想しています。私が誤解していないのなら、緊急地震速報の発信は、コンピューターが自動で行うのでしょう。いちいち会議を開いて人間が判断していては間に合わないからです。人間の仕事は発信後に会議を開き、津波警報などの解除を行う事などではないでしょうか。結果として津波が来なかったとしても、国民は「よかったね!」と喜べばよいのです。

話しをJアラートに戻します。ネットで見ると、北朝鮮からのミサイルは、発射から10分ほどで日本に着弾するようです。それが核兵器の場合には、少なくとも、多数の国民が一秒でも早く光を浴びないような場所に隠れなければなりません(それで助かる保証はありませんが)。ですから、Jアラートが(もし)人間の判断で行われているなら、コンピューターの自動発信に近づける必要があるのではないでしょうか。

国民の側も、(あまり)Jアラートを迷惑がったり、誤報を責める事は、人間の介在を増やしたり、さらに慎重に判断させることになり、発令を遅らせる事になりかねず、危機が自分にはねかえってくる事を思う必要があるのではないでしょうか。

現在、国がJアラートを出す理由の中には、もしかしたら、(今回のミサイルに危機は無くとも)国民に時代が変わりつつあることを示唆する、教育的な役目もあるのかもしれないと思うのです。

(追記) 余談ですが・・・

『 AI兵器については世界各国いろいろな考えがあるようです。

①自立型と言いましょうか、自分で攻撃の判断をする兵器と、②遠くから人間が攻撃の判断をする兵器とがあるようですが、②の場合には引き金を引くまでのタイムラグが発生しますから、①②が敵味方に分かれて戦えば②は負ける可能性が増えるのではないでしょうか。

映画「トップガン」の主人公・天才パイロットのマーベリック(トーマス・クルーズさん)が、教官から「どのように考えてその操縦をするのだ」と聞かれ、「(条件反射のようなものだから)考えていない」「考えていたら負ける」と答えていたのを思い出します。

しかし、①のように機械に判断させれば、誤爆を含めた不適正な攻撃をする心配があります。でも、(残酷な表現であることを承知で言えば)その小規模な被害を回避するために②を導入し、「勝てば官軍」の戦争に負けることもあるわけです。

そして、交通事故を考えれば分かりますが、人間とて間違いをしますし、「小規模な被害を意図的に出しても戦争に勝つ」という戦術は、映画「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」にも描かれております。

つまり誤爆はAI兵器に限ったことではないし、時に人間も、誤りや、それ以上の非情を行うという事です。さらに、①を使う国には、人権意識が低い国が多そうだという心配があります。そして、そのような国に戦争で負けるのは、彼らが官軍になることは、さらに悲劇です。これは一つの視点の提示であり、私が①の推進派という事ではありません。』 

〔 映画「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」 追記12 ( 勝てば官軍 )2021/12/17 9:29 by さくらんぼ より抜粋、加筆再掲 〕

(追記2)(安保の行方 無人兵器)中国念頭、導入急ぐ日本:朝日新聞デジタル (asahi.com) この新聞記事の後半に、「LAWS」(自立型致死兵器システム)型無人機についての、政府や防衛省幹部の話が載っています。

〔 政府はLAWSについて「開発を行う意図はない」との立場だ。国家安全保障戦略改定に向けた自民党の4月の提言でもLAWS開発を否定し、無人機に「人間の関与を確保する」とした。一方で「他国によるLAWSを用いた攻撃に対する対抗手段についても検討する」と記した。「国際ルールを無視する中国を相手に日本だけが『論理』に縛られるわけにはいかない」と語る防衛省幹部もいる。〕(抜粋)

当然ですが、LAWSで日本が攻撃された場合の事を心配しているようですね。この話、究極的には、護るべきは国民か、論理か、になるのでしょうか。(2022.11.5のパレット記事に加筆再掲)

朝ドラ「虎に翼」から家裁と役場の関係などを思う

2024.6.27

@ 先日の朝ドラ「虎に翼」では、廊下に作った法律相談所コーナーで、ヒロイン・寅子(伊藤沙莉さん)たちが、失踪宣告、就籍、養子縁組、離婚に関する氏変などの、相談を受け付ける様子が出て来ました。もちろん、現代でもそれらの相談者はいますが、少なくとも今は、いきなり(敷居が高い)家裁の門を叩く人は少ないのではないでしょうか。まずは区役所等の市民課で相談する人が多いように思います。

市民課の職員は、高卒・大卒関係なく窓口に出て、「虎に翼」のように住民の話を聞き、家裁の手続きが必要な場合は家裁へ行くように指導し、市民課だけで手続き可能な場合は、届出用紙を渡して書いてもらいます。ちなみに、家裁の手続きが必要な場合でも、それが終わったら、基本的には、家裁が出した書類を添付して、市民課に届け出てもらう事になるはずです。

(追記)例えば、税金の相談を市民課でしようとすれば、「税務課でお願いします」などと、門前払いになるでしょう。しかし、失踪宣告、就籍、養子縁組、離婚に関する氏変などに関する相談は、(すでに述べた通り)最終的には市民課への届出が必要であり、市民課が担当している戸籍の問題なのです。ですから無関係ではありません。

そして、それらの相談には、家裁の手続きが必要なものと、必要ないものが混在しています。だから話を聞き、家裁の手続きが必要なものについても、アウトラインぐらいは、わかる範囲で説明が必要な場合があります。税務課と市民課の例のように、安易に門前払いは出来ないのです。

(追記2)他人の確定申告書の作成は、税理士か税務署職員のような有資格者しか出来ません。しかし、税理士資格のない区役所等の税務課職員にも、期限を区切って臨時税理士の資格が与えられ、確定申告書の受付をさせています。そして、確定申告書の住民税の控えは区役所等に流れ、住民税担当が内容点検して住民税を課税しています。

住民から住民税の課税内容に異議があった場合は、住民税担当は確定申告書の住民税控え等を見て、住民に説明します。そして、万一、確定申告書の内容に誤りが見つかった場合は、住民税は職権(あるいは住民税の申告書)で直せるとしても、所得税は税務署でなければ直せませんので、税務署へ行くよう指導します。このように、住民税と所得税がクロスオーバーしている状態は、市民課と家裁を連想します。

又、(現在は変更があるかもしれませんが)年金事務においても、区役所等の年金係と社会保険事務所はクロスオーバーしていました。各種・国民年金の裁定請求書等の受付は区役所等で、審査は社会保険事務所だったのです。社会保険事務所は裁定請求書等に問題を見つけたら、区役所等に戻します。そして、区役所等から本人に連絡して、訂正を求めるのです。

(追記3)選択的夫婦別姓問題や、同性婚問題。現時点では認められていないのに、市民課に「それでも認めてほしい」と婚姻届を出す人がいたとしたら、行政であるのに、ある程度は立法や司法のような雰囲気で、話を聞いたり、したりする必要も出て来るのではないでしょうか。

その他の係でも、「税金が高い」「税法上は間違っていません」「そこを何とかしてほしい」。窓口でそんな押し問答があるとしたら、同様ではないでしょうか。区役所等が、「法律上できません」と答えても住民が納得しない場合には、どの係でも、ある程度、会話が行政の範囲を超えてしまう恐れがあるように思います。

(追記4)相続に関しては、ドラマのように遺言状での相続争いの仲裁に入るような事は、市民課ではしません。もし相談があった場合には、まずは区役所で定期的に行われている弁護士による無料法律相談を案内するはずです。

市民課で行っていることは、被相続人の戸籍を出生から死亡まで探すことです。戸籍を探すには本籍と筆頭者、除籍の場合には除籍年月日等が必要になりますが、相続人は自分の本籍・筆頭者を知っていても、被相続人のものを出生までさかのぼって正確に書ける人は少ないので、市民課の調査も必要になる場合が多いのです。

税務課では被相続人の残された税金を相続人に請求する事があります。その為に公用で戸籍調査が必要になる場合もあります。通常は、相続人代表者指定届を相続人の誰かから出してもらい、残された税金の納付書を代表者に送付しますが、ごくまれに、(相続争いがあるのでしょうか)法定相続分ごとに按分した納税通知書を求められる場合もあり、その場合は求めに応じるはずです。さらに、家庭裁判所で相続放棄をした場合には、税務課に届ければ、税金の請求は止まるはずです。

(追記5)先日の朝ドラ「虎に翼」には、離婚の話があり、①協議離婚、②調停離婚、③審判離婚が紹介されていました。区役所の市民課の窓口には①の離婚届は毎週何件もあり、婚姻届同様珍しくありません。家裁が関与する②③はぐっと減りますが、時どき出て来ます。

②③の人は、揉めているわけですから、弁護士や家裁へ相談されるのでしょう。市民課に相談に来る人はほとんどいません(もし相談があっても無料法律相談や家裁をご案内する事になるはずです)。そして、家裁で離婚が決まれば、家裁の調停調書謄本や審判確定証明書・審判書謄本等を添付書類として、区役所等に離婚届を提出する必要があります。離婚を戸籍に反映させるためです。これを報告的届出と言います。対して、①は創設的届出と言います。ちなみに、婚姻届は創設的届出であり、出生届は報告的届出です。

(追記6)朝ドラ「虎に翼」では、戦災孤児の問題も描いていました。このあたりの話からは自治体職員の仕事も連想します。司法の上層部と、行政の末端では違うと思われがちですが、映画「羊の木」や、TV「健康で文化的な最低限度の生活」(ケンカツ)を思い出してもらえばご理解いただけるでしょう。(2024.6.24~20のパレット記事の加筆再掲)

偽装結婚には懲役刑もありうる

2024.5.19

(2021.10.22)TVドラマ「○○○○」を観ています。楽しめる作品ですが、気になる点があるのです。このドラマは500万円というお金も絡む偽装結婚のお話のようで、「婚姻届に押印する」とか「戸籍を売る」と言った言葉も出てきて、婚姻届まで役所に提出するようなのです。

しかし、もし婚姻届を役所に出せば、刑法の「電磁的公正証書原本不実記録罪」にあたる恐れはないでしょうか。仮にそれに該当しなくとも、行政にとって最重要書類である戸籍原本に嘘を記載されるとしたら、迷惑行為であることに変わりがありません。

多分、私などが心配する前に、プロの法律家のチェックを済ませているでしょうが、視聴者は一般論として「偽装結婚には懲役刑もありうる」ということを知っておく必要があると思いました。

追記

設定では共働きなので良いですが、(もし妻側が失業すれば)夫の控除対象配偶者となり、所得控除が受けられます。年金も本来なら妻は1号被保険者として掛け金を毎月支払う義務が生じますが、その場合は3号被保険者になり、支払わなくとも将来年金がもらえるのです。さらに、夫の会社で妻の扶養手当が出る場合があります。こちらにも問題が波及しそうです。

(2021.10.24)2021.10.22にTVドラマから偽装結婚についての話をしましたが、たとえば太郎さんの偽装結婚が発覚し婚姻無効となれば、太郎さんの戸籍は婚姻前に復籍すると思います。

しかし、離婚届を出したわけではないので復籍理由は離婚ではなく、婚姻無効と記されると思います。

すると、例えば妹の花子さんが正規の婚姻届をするために戸籍謄本とり、相手や相手の親族がそれを見れば、「太朗さんの婚姻無効って何?」となるわけです。

婚姻無効がすべて偽装結婚ではありませんが、相手方にそれが偽装結婚によるものだと気づかれると、ならば花子さんの結婚は大丈夫か、結婚詐欺ではないのか、詐欺でなくとも、そのような家族と親せきになって大丈夫か、みたいな話に発展しかねないと思います。

追記

花子さんが太郎さんの過去を隠したいと思った場合どうしたら良いのか。戸籍には分籍届というものがあり、一定の条件の元、親から独立して自分一人だけの戸籍を作ることができるのです。これなら結婚相手やその親族に花子さんの戸籍謄本を見せても、太郎さんのプライバシーは守られます。

しかし、分籍届を花子さん自身の過去を隠すために使うこともできるので(分籍後の戸籍には、過去の履歴が全部は乗らないため)、未婚の花子さんが分籍していると、「花子さんの過去に何かあるの?」などと、花子さんまで痛くもない腹を探られる心配もあります。

ですから、「田舎から東京に出てきたので、住所だけでなく、戸籍も分籍して東京に置きたい」などと言う人には、「軽々な事はやめたほうが…」とアドバイスしたくなります。

( これは一般論ですから、具体的な事例は役所にご相談ください。 )

(2021.10.22~24の記事の抜粋・加筆・再掲)

(追記2)2024.5.19 偽装結婚は現在は男女間に起こるだけだと思います。しかし、(私は同性婚に反対しませんが)将来、同性婚が法制化されると、同性間でも偽装結婚が起こるのではないでしょうか。単純計算では件数が増えるのかもしれませんね。

国民年金納付5年延長(65歳まで)は免除等に注目

2024.5.7

国民年金納付5年間延長(65歳まで)を論ずるときには、「おそらく免除制度も5年間延長される」ということも忘れないようにしたいです。失業者等、この免除制度の適用を受けられれば(つまり5年間延長が決まれば)、5年間の納付額がゼロでも、受給額だけ少し増える人が多数出て来る可能性があるからです。

(追記)国民年金では60歳以上65歳未満の期間において高齢任意加入という制度があり、「加入期間が不足しているために老齢基礎年金の受給資格期間を満たすことができない人や満額の老齢基礎年金を受給できない人」の救済手段になっていました。ただし、任意加入ですから「払えない人はやらない」だけです。

今回、その5年間が任意ではなく義務になれば、「払えない人は義務の免除申請が必要」になると思います。そして、正当な理由ありとして免除が認められれば払わなくても良いわけです。その場合、国は正当な理由があると判断したのですから、国民年金の税金投入部分だけが、掛け金ゼロでも年金としてもらえる事になるはずです。免除者は単なる未納者とは違います。これが私の解釈です。

(追記2)国民年金の受給資格を得るには最低10年間の納付・免除・納付猶予の手続きが必要ですから、60歳までに5年間しか納付が無く、65歳以上は無職で高齢任意加入の納付も出来なかった人は、従来なら国民年金はもらえないと思います。しかし、65歳までが義務になり、60~65歳の免除・納付猶予申請が認められれば、追加の納付がゼロでも、もらえるようになる可能性があるように思います。

(追記3)年金改革の一つとして、他にも、事実上の年金のベーシックインカム化案がありました(掛け金をゼロにして消費税増税の案)。世論は歓迎しなかったようですが、もし年金のベーシックインカム化が行われると、追記~追記2で書いたような事例の方、つまり、年金が少ないか、もらえない方は、増額や、少しもらえるようになるのではなく、ベーシックインカムなので、満額もらえるようになったと思います。(2024.4.25パレット記事の加筆再掲)


相続人代表者指定届があれば相続手続きは一気に進む

2024.5.7

現在は改正されているかもしれませんが、私が知っている市県民税(住民税)の相続のお話をします。市県民税は後払いです。例えば2023年1月~2023年12月までの所得が一定以上あり、2024.1.1現在ご存命の方に課税されます。その税金は2024年6月に2024年度課税分として、本人へ納税通知され、2024年6月.8月.10月.2025年1月に4等分(普通徴収の場合)して納付するのです。

するとこのような状況も起こります。例えば、口座振替で納付されているAさんが、2024年8月29日に亡くなったとします。亡くなったことを知ると金融機関は口座凍結をしますが、その前に、8月末の口座振替日で8月分が納付される可能性があります。納付されたものは普通は還付しません。課税自体は間違いではないからです。もし還付するには相続人の口座に還付する事になると思います。そして、その相続人から改めて納付してもらう事になると思いますから、2度手間になるのです。

残った2024年10月.2025年1月分は、亡くなったことを親族が金融機関に伝えますので、通常は口座凍結になり、相続人に納付していただく事になります。この段階で「死んでも税金を払うのか?」と驚く方も多いのですが、前述したように後払いの税金ですし、相続人が相続するのは財産だけではありません。負債も相続するのです。

相続人をさがすには除・戸籍謄本等を公用で取り寄せて調査する必要がありますが、役所にとって死亡者は一人だけではないですから、全件そのような本格的な相続手続きをすると大変な手間がかかります(その手間が、次にお話する相続人代表者指定届で何十分の一かに減るのです)。

そこで、市民税係では通常、誰か一人でも親族を見つけると、相続人代表者指定届というものをその人に送るのです。まだ役所が気づいていない相続人も含め、便宜上、相続人の誰かに(役所が送付した人でなくても良い)市県民税の代表者になってもらい、「納付書等を受け取る担当」になってもらいたいのです。納付のお金は代表者が一人で負担しても良いですが、幹事のように、各相続人からお金を集めてもらい、まとめて納めて頂いてもかまいません。その辺りは相続人にお任せしています。

相続人代表者になることを心配する方もいますが、市県民税の相続人代表者届は市県民税だけのものであり、その他の相続とは無関係です。又、2024年1月~2024年8月29日に亡くなるまでの所得が沢山あったとしても、次の賦課期日である2025.1.1現在はご存命ではないので、2025年度以降は課税されません。

(追記)相続を放棄した場合は、家庭裁判所の「相続放棄申述受理通知書」の写しなどを市民税係へ提出してください。市県民税も納付の必要が無くなるはずです。(2023.2.16記事の加筆再掲)

(追記2)地震・津波で倒壊した家屋の解体が、相続人全員の了承が必要だとして、なかなか進まないようです。解体できなければ復旧・復興の障害になります。ならば現世帯主などに相続人代表者になってもらい、その人の了承だけで解体できるよう、手続きを簡素化できないものでしょうか。(2024.5.3パレット記事そうの加筆再掲)


年金担当が受付時に考えている事の広さ

2024.4.25

年金の話をします。現在は制度改正で手続きが違う部分もあるようですので、あくまでも30年近く前の昔話としてお読みください(ご自分やご家族の年金については役所にご相談ください)。又、すべての年金係が同様の仕事をしていたかは分かりません。しかし、この話の主題は制度ではないので、制度の違いを超えて、伝える意義があると思っています。

例、①夫が会社を退職すると厚生年金から国民年金1号被保険者になります。多くの夫は自分の手続きの事しか知りません。国民年金加入届一枚を市町村役場の年金係に提出するだけです。
②その時、窓口担当者は、妻がいるかを確認し、国民年金3号被保険者の妻がいれば1号被保険者への変更届も書いてもらいます。
③同時に、この機をとらえて、夫婦2人の20歳~現在までの、数十年にわたる年金の得喪(加入歴)を電話で社会保険事務所に確認し、もし手続きが漏れていて、現在でも届出可能な部分があれば、追加で届書を何枚も書いてもらいます。
②③までキチンとしておかないと、将来二人の年金額が減ったり、最悪の場合はもらえなかったりします。そうなれば、「10年前に年金係に行ったことがある。その時なら間に合ったのに、何も教えてもらえなかった」などと言われかねません。

以上は退職の場合ですが、就職の場合には、似たような届書に追加して、国民年金の還付申請書が必要になる場合があります。

転職の場合には、例えば、夫は厚生年金→国民年金1号→厚生年金。妻は3号被保険者→1号被保険者→3号被保険者。さらに還付申請書。国民年金納付書が必要な場合は後日送付、のような状況になることもあります。

最初、①の届けに来た夫は届書一枚・15分ぐらいで済むと思っていたかもしれませんが、何枚も書いてもらい、窓口で40分~1時間ぐらいかかることも珍しくありません。しかも、その何枚もの書類は、まだ完成したわけではありません。とりあえず夫は帰宅してもらいますが、職員は残業時間(時にはサービス)で、社会保険事務所に進達できるように、書類の体裁を整える必要があるのです。

窓口に来庁者があれば、その人から要望のあった手続きだけでなく(多くは最小の手続きしか知らない)、求められなくとも調査をし、最大の手続きをしてあげることで、将来の年金額に禍根を残さないようにするのが、年金担当の仕事でした。(2022.6.29の記事の加筆再掲)


来客と内部事務のバランスを試行錯誤する

2024.4.25

電話が苦手な私も、このご時世ですから昨年やむをえずスマホを買いました。しかし、後日「使い方が分からぬ」時に、わざわざ店舗を訪問しても、店員さんの発する言葉が「予約が必要です」なのです。

少ない店員さんで、長時間かかる客にかまっていては、仕事が回らないのは分かります。しかし、とりあえず客の質問内容を聞き、解決方法、解決に要する時間を瞬時に考え、5~10分で解決すると判断されるなら、あらかじめ用意しておいた「よくある質問Q&A」のチラシを渡したり、その場で説明したらどうでしょうか。

それ以上時間を要すると判断され場合にのみ「予約」に誘導するのです。「ここをクリックして、こう操作すれば出来ます」などと、その気になれば2~3分で解決する話を、同じ時間を労して門前払いにするのは、いかがなものかと思うのです。

(追記)ここで思い出すのは役所の窓口です。昔から「お役所仕事」と揶揄されがちですが、(例外もありますが)基本的に予約の必要はありませんし、長時間かかる相談でも受けてくれます。

今でこそ、銀行のように番号札で順番に応対するシステムが主流でしょうが、少なくとも私が若い頃は、(知っている限り)役所は窓口に行列が出来れば、窓口担当者だけでなく、応援できる者は窓口に出ていました。電話が鳴れば仕事を中断しても応答する様に、来庁者が行列を作ればほかって置かなかったのです。当然に職員は自分の仕事が遅れますから、残業が増えかねない問題もありますが。

当時の昼休み当番もそうです。昼休み当番は、例えば市民課では3人でした。①「住民票の写しや、戸籍謄本、印鑑証明など、5~10分で済む仕事を受付し、②婚姻届、死亡届など、20~30分かかる仕事は1時まで待ってもらう方法をとりました。

しかし、もし①が来ない場合は、待ってもらうのが気のどくですから②を受ける事もありました。すると、マーフィーの法則ではありませんが、途端に①が殺到するのです。だから、3人の内、1人~2人は②を受けても、他の者は本来業務である①のために待機することが必要です。

昼休み当番を「3人ではなく、もっと増やせば良いのではないか」と思われるかもしれません。仰る通り、繁忙期には4~5人にしました。しかし、あまり増員すると、1時以降は、その者たちがランチに出る上に、昼休み前後にはお客様が殺到するので、今度は、本来の時間に来たお客様が迷惑することになります。役所もこのように試行錯誤をしていました。(2022.6.29の記事の加筆再掲)

役所が仕事を「ネグる」のは容易ではない

2024.4.4

私もVHSの誕生から完了までを目撃した一人として(もちろんユーザーとして)、開発秘話からは教えられるものがありました。正確には覚えていませんが、どこかで、こんな話を読んだことがあります。

「 まず、目標とする性能の実現だけを目指し、金に糸目をつけずに開発します。これを『プロトタイプ』と言います。VHSの場合は当時50万円ぐらいになった記憶です。当時の物価から考えると今より贅沢品でしょう。

性能が良くても50万円では一家に一台にはなりません。だから、安い部品に交換したり、回路や工程を省略したり、性能をできるだけ落とさずに、安くできる方法を探るのです。これを『カット・アンド・トライ』と言います」。

『仕事の合理化』とも似ていますね。そうやって、『性能は少々落ちたけど、許容範囲内だし、なにより、この値段なら買ってもらえる』という妥協点を見つけ、市販品として売り出します。

それと新技術の相乗効果で、最終的には数万円でも満足できる製品が売り出されることになりました。

要領の良い(頭の良い)方法だと思います。


役所の仕事でこのような「ネグる」手法を使うのは容易ではありません。

なぜかと言えば、「ミスが少し増えるので、その住民に迷惑がかかる」と言われたら、公に「迷惑をかけても良い」と言える先輩・上司はまずいないからです。

住民の気持ちを考えると、役所の仕事は満点であたりまえなのです。これは公務員は「全体の奉仕者」という事にも叶います。

そして、満点をめざす傾向は新規採用者ほど強いです。一年たたずに事務改善を口にする人がいます。そして、それは(事務量を増やして)今より「事務の精度をUP」する事であり、「ネグる」事ではありません。

上手に「ネグる」には仕事を隅々まで知っているだけでなく、住民感情まで分からなければなりません。だから新人に「ネグる」のは困難です。そのため、新人は比較的分かりやすい「事務の精度をUP」することに走るのでしょう。点検を増やしたり、新しい仕事を増やしたりと。

しかし、もし先輩職員がそれを止めようとする場合、「事務の精度をUPする」という正論を否定し、さらに「住民に迷惑をかけても良い」と公に言わなければならない状況になりかねないのです。

毎年のように上層部から超勤手当削減を言われています。そんな中でも仕事を「ネグる」事が困難なら、せめて事務量の現状維持に努める事が必要です。増やすことではなく。


新人が事務量を増やしがちなことについて話しましたが、こんな問題も起こります。政令指定都市では本庁である市役所の下に、たくさんの区役所・支所があります。区によって人口が違いますが、人口が二倍になったからといて、職員数が二倍になるわけではないので、概して大きな区ほど忙しいものです(逆に、小さな区では職員数が少ないので、一人が受け持つ担当数が増えるという悩ましさがありますが)。

もし小さな区の新人が思い付きで事務量を増やすと、それを聞きつけた大きな区の担当者から、「あなたの区なら出来るかもしれないが、私の区では困難であり、住民に不公平が生まれる」とクレームが入ることがあります。

クレームは同時に本庁にも入れられ、本庁からも小さな区が注意を受ける事があります。その際、新人担当者が応答するならともかく、先輩上司が注意される事もあるのです。全区会議も定期的に開かれていますので、新人はその場で事前協議する必要がありました。


仕事をネグるという行為は、ある意味、公務員の憧れであるのかもしれません。ある「忙しすぎる係」の係長は、自分が読んだ、その仕事論にふれてある記事のコピーを、参考として係に回覧したこともありました。これは稀有な事です。しかし、それで仕事が改善されたという話は聞きませんでした。係長としても、それ以上の積極的な介入は、前述したような理由で困難だったのでしょう。

(これは映画「陽はまた昇る」〈2002年〉の追記に加筆再掲したものです。)


婚姻届等はこのような工程で受理される

2024.2.2

@ 最近も、何かのTVドラマに婚姻届の受付シーンが一瞬だけ出て来ました。良い機会ですから、婚姻届受付の工程の一例を簡単にお話します。

①受付カウンターでは、婚姻届の仮審査をします。添付書類とか、内容とか、法律とかすべて見ます。多くは、住所変更や印鑑登録の書類も入っています(ちなみに最前線で仮審査をする人は本審査の経験者です)。

②しかし、内部資料の確認が必要な場合もありますし、気が散るカウンターではなく、落ち着いた内部で点検もしたいので、仮審査後は、ベルコンで内部に送って、本審査をします。

本審査が問題なく終わると、受付済み証を交付係へベルコンで流し、交付係が本人に渡して、お帰り願います。

③内部では、受付の終わった婚姻届を、受付帳担当が最終点検し、ナンバリングを打ち、受付帳に記載します。私の知る限り、受付帳に記載された時点で、婚姻届が正式に「受理」されたという理解が妥当だと思います(それ以前は「受領」)。

④この後に、戸籍担当が再び点検をしてから戸籍をタイプします。婚姻届に限らず、戸籍の届は、このように4人の別の担当者によって審査・点検され、戸籍にタイプされるのです。もちろんタイプ後にも点検があります。ちなみに、「一枚の届を4人で審査・点検する」と言うと「暇そうだ」と思うかもしれませんが、4人は他の仕事も兼任していますので忙しいです。

上記は、昔の区役所市民課の一例ですが、市区町村役場によっては違いましょうし、現在は電算化で、また、工程が違ってきていると思います。(2024.1.28の加筆再掲)


住民税で減価償却の申告がほぼ無くなった話など

2024.1.27

半世紀前と近年の、①市県民税申告書と②確定申告書の、受付内容には違いがあります。半世紀前は、事業をしている人が、店舗やクルマ、高額の機械を買い、必要経費として何年もかかって減価償却する申告は、①②両方にありました。だから、市民税係職員も市県民税申告書で減価償却の受付実務をしていました。申告シーズンには毎日のように。

しかし、近年では電算化による効率化もあってか、税務署の調査が進んだようで、事業をしている人を税務署が最大漏らさず見つけ、課税になるものは確定申告をさせているようです。すると、市区町村によっても違うでしょうが、市県民税の申告書で減価償却の申告相談を受け付ける事は、ほぼ無くなってしまったのです。ですから、その減価償却の知識は、納税通知書の説明に使うぐらいになりました。

(追記)その反面、(すでに書いたことがありますが)市民税係職員は、確定申告書の住民税控えを税務署からもらい、その解読、点検、課税、住民への内容説明をしてます。市民税係の課税資料のかなりの部分は、確定申告書等の税務署関連です。さらに、春の申告シーズンには、期間限定で臨時税理士の資格をもらい、一定範囲の確定申告書を、税務署職員のように受け付ける事もあるのです。このため、市民税係職員でありながら、地方税だけでなく所得税の知識も一定程度必要であり、片足は税務署職員のように、所得税につかっているようなものです。

(追記2)例えば給与支払報告書というものがあります。(原則として)会社が所在地の市区町村役場に提出するものです。役場はそれから市県民税を計算し、毎月の納付額一覧を会社に送ります。そうやって、給与天引きがおこわなれます。ところが、提出先が市区町村役場なのに、(源泉徴収票が複写になっているためか)この給与支払報告書の内容は所得税になっているのです。控除額が所得税の金額なら、税額も所得税です。市民税係は、あたりまえのように所得税の数字で内容点検した後(源泉徴収税額が書いてあるがゆえに点検しやすいというメリットもありますが)、OKなら、市県民税の数字に置き換えて税額算出します。

(追記3)ざっくり言えば、確定申告は課税になる人がするものであるのに対し、市県民税の申告は課税にならない人でも必要になる事があります。

「住民税非課税世帯は○○給付金がもらえる」という話があれば、無申告の人は市民税係に(例えば所得ゼロの)申告をして非課税の判定をしてもらわなければなりません。途中で就・退職の給与支払報告書が出ていても、残りの期間が一月でも不明なら申告の必要があります。

又、誰かの扶養についている人は、扶養に付けられるほど所得が低いと推測できますが、その所得金額は不明ですので、正式な所得証明書や非課税証明書が欲しい場合は、同様に申告して判定してもらう必要があります。

所得税や市県民税が課税にならない人でも、所得がゼロなのか、少しあるのか、その所得金額によって、役所の他課の行政サービス等の内容が違うことがありますから、市県民税の申告書も重要なのです。市県民税申告書は、課税額こそ所得税には及ばないでしょうが、件数や、重要度は決して少なくはありません。(2023.5.2のパレット記事に加筆再掲。)


防災関係の話あれこれ

2024.1.15

@(2023.1.17の加筆再掲)「(ThinkGender)防災、女性視点も欲しい 避難所、生理用品配布で困惑・オムツ備蓄あれば 」 私の知る限り、ある政令指定都市の場合は、指揮をする市役所に①防災・危機管理部局があっても、区役所にはありません。平時には仕事が少ないからでしょう。ですから、区役所の総務課が①を兼務しています。しかし、その総務課も有事には区本部の仕事をするので、彼らが直接避難所まで行き、住民にお世話をする事は少ないはず。

では、誰が避難所へ行くのかと言えば、②その他大勢の他課職員です。税務課や市民課などの職員です。この構図は、選挙のときに投票所で働くのが選挙管理委員会の職員では無いのと同じですね。②の職員は大勢います。女性もいますから問題ないように見えますが、やはり女性は夜勤を嫌う傾向があるために、男性中心の布陣になっているようです。女性が夜勤を嫌う傾向があるのはお医者さんにもあるようですね。医大の入試で女性を不利に扱った問題がありました。

話を避難所に戻しますが、避難所は地震のように大災害が起きてから開設されるだけではありません。大雨警報や台風などの場合は、事前に開設される事があるわけです。6月~10月ぐらいの災害シーズンにそれらは何回あると思いますか。警報の数が参考になります。その度、深夜でも区役所には一部の職員が招集されます。そして、状況によって避難所を開設し、各所に3名ぐらいの職員を派遣しなければなりません。

その現場に女性が欲しいなら、3名の内1名は女性になるわけです。ならば女性も深夜に召集する必要が出て来ます。台風の場合には避難所は広範囲に沢山開設されるので、女性職員も沢山必要になります。さらにローテーション要員も必要です。そして、本当に大災害になれば、職員は1週間ぐらい帰れない事も覚悟する必要があります。新聞の見出しには「女性視点も欲しい」とあります。もし現場への女性の派遣が困難なら、市役所や区役所に詰めている女性職員からの「女性視点」を、デジタル化で現場に入れる事も有効かもしれませんね。(過去ログの加筆再掲)

(2024.6.28追記)#ネタバレ 映画「君は月夜に光り輝く」|sakuranboのパレット (note.com) この映画が参考になりますが(レビューは追記Ⅱ以降)、デジタル活用の具体的な方法は、簡易的にはスマホのTV電話機能を使い、災害対策本部等にいる女性職員と避難所の男性職員とを結び、避難所の現状を女性職員にも見せながら、両者で最善の策を考える方法がありそうです。

(追記)『 「公務員との結婚…覚悟が必要!」意外!?結婚後の苦労とは… 』 「公務員あるある」ですね。台風や大雨で警報クラスが出ると(出る可能性が高いと)、市町村役場職員等は交代で役所に詰めます。深夜でも招集がかかるのです。ローテーションしますが、大災害が起こらなくてもワンシーズン(夏場)に一回ぐらいは覚悟が必要です。つまり、毎年一回ぐらいは、妻子は心細い思いで災害を乗り越えなければならない可能性があるのです(避難所に必ず女性職員が必要なら、女性が少ない場合、一回では済まない可能性があります)。通常1日で帰宅できますが、大災害になると、いつ帰れるか分からない可能性もあります。さらに、平職員よりも管理職の方が、人数が少ないので帰りにくいかもしれません。(過去ログの加筆再掲)

@ 先ほどラジオで「避難所のリーダーを養成したい」みたいな話をしていました。避難所運営について一例を話せば、たとえば小学校が避難所になると、市町村役場の職員が3人ぐらい、「避難所の管理と、災害対策本部との連絡調整役」として配置されます。誤解しがちですが、彼らは「管理職」として来ていますから、「避難所の実際の運営は、避難民の中から選出された複数のリーダーによって行ってもらいたい」わけです(自分たちはまったくやらないという意味ではありません。役人だけでは人手が足りないという事です)。そして、今回、主にそのリーダーをあらかじめ育てておこうという目論見だと思いました。

ちなみに、3人の職員は防災の専門家ではありません。平時は税務や市民課など、他の仕事をしている人が交代でやってくるのです(ですから彼らも勉強の必要があります)。本来業務との兼務ですから避難所に専念することは出来ません。たとえば災害で税金が免除になるなら、その免除事務も、災害にともなう追加事務として、市町村役場に戻って行う必要があるのです。仮に避難所に専念できるとしても、100人単位の避難民がいる避難所を、3人だけで運営することは困難です。役所としては、避難民に「自助・共助・公助」の中の、「共助」をもっとしてもらいたいのです。このあたりの様子は、映画「遺体 明日への十日間」で、西田敏行さん扮する民間人が好演していました。

先日、戦争になっても疎開せず命がけで管轄を管理する「(ある意味)公務員は事務職の志願兵」なので、先の大戦では「(兵隊さんの)徴兵は民間人を中心に行われた噂がある」旨の話をしましたが、リーダーの養成は、どこかそれを連想する話だと思いました。(追記)『 災害時の避難所「リーダー無しに成り立たぬ」 養成急務 』(朝日新聞デジタル)(過去ログの加筆再掲)

@ 『 日本での「美談」が欧米では「人権侵害」
またイタリアでは、災害が発生すると政府から州の市民保護局に対して、72時間以内に避難所を設置するよう指令が下ります。ここでのポイントは、指令を受けるのは、被災した自治体の市民保護局ではなく、その周辺で被害をまぬがれた自治体の市民保護局という点です。

日本では被災した自治体の職員が避難所に寝泊まりして、管理、運営を担当するでしょう。当然ですが、被災自治体の職員も、被災者なんです。避難所運営に奔走する自治体職員の姿が、日本では美談として取り上げられますが、アメリカやヨーロッパなら、人権侵害、あるいはハラスメントとして問題になるでしょうね。

――なるほど。避難所のあり方がハラスメントに該当する場合もあるんですね……。

避難所が、被災者の立場や人格を尊重しないハラスメント状態になっていることを支援者だけでなく、被災者自身も気づいていません。なかには、食事などの環境をよくすると被災者が自立せずに避難所に居着いてしまうと口にする運営者もいます。』

〈 『 「体育館を避難所にする先進国なんて存在しない」災害大国・日本の被災者ケアが劣悪である根本原因 』より抜粋 「BLOGOS」PRESIDENT Online2022年03月11日 12:57 (配信日時 03月10日 17:15) 〉

「美談」とありますが、現場の職員は苦情窓口になって、そこに公務員バッシングも重なっているのではないでしょうか。マスコミも避難民の苦労は取り上げても、職員の苦労は無視しがちだと思います。職員が時にメンタルを病むほどの状態でも、美談として報じられることなど、少ないのではないでしょうか。(過去ログの加筆再掲)

@ #ネタバレ 映画「風の電話」|sakuranboのパレット (note.com) 

#ネタバレ TV「半分、青い。」|sakuranboのパレット (note.com)

にも防災関係の話があります。


「X」(旧・ツイッター)の非会員は最新ツイートが見られない!?

2023.9.11

(2023.9.6の記事の加筆再掲)『災害時の発信、悩む自治体 「X」が一部有料化、大量投稿困難に』

最近、類似の記事を目にすることがありますが、私の知る限りすべてAPIに関する発信側の話のようで、受信側に新たに発生した問題はスルーされているようです。

記事の中に「他のSNSと比べて不特定多数に開かれており・・・」(抜粋)とありますが、2023.9.11時点では、「X」の会員となり、ログインしなければ、時系列に並んだ最新投稿は見られなくなっているようです。今までは非会員でも最新投稿を見られましたが、現在は「不特定多数に開かれてはいない」のです。私のような非会員はネットを見る人の何割いるでしょう。

しかも、非会員はまったく見られないならともかく(見られなければ誤解は起きない)、「X」の最上部には古い投稿が表示されるので、災害時に慌てた住民は、最新情報だと誤解する心配があります。いくら自治体が「危険」を発信しても、最上部に「危険」の投稿が表示されず(あるいは「安全」が残っていれば)、最新情報は「安全」だと誤解され、人命にかかわることもあるでしょう。

もちろん、「X」の会員になるのは日本国民の義務ではありませんので、国民に強制はできません。ならば、これも、受信側ではなく、発信する官公庁側の重要問題になると思うのです。「全体の奉仕者」でもあるからです。この辺りに問題点を感じていますが、なにか私に誤解があるのでしょうか。

税金取りは時に滞納者への生活支援も

2023.8.12

①督促状が出て法律上「差し押さえなければならない」(「差し押さえできる」ではない)状態になっており、税金取り個人に差し押さえの権限をあたえられていても、とりあえず彼らは自主納税を促すために働きます。そして、その過程で「滞納者の生活が苦しすぎる」と分かると、場合によっては徴収ではなく、彼らを救済するために動くこともあります。先日、救済のための関係部署への連絡を強化する方針を打ち出した自治体もあった記憶です。良い事だと思います。

②対して、信じがたい事ですが、修理に出てきたクルマに、従業員が追加で意図的に傷をつけ、余分に修理費用を請求する民間修理会社もあるようです。

官民の対比、しかし、どちらも「自分の仕事の枠を超え、反対側まではみ出す」という点では似ているような気もします。これを主題にして、①②を描けば、映画が一本出来そうな気もします。

(追記)2023.5.16の記事の再掲です。

『「払えないのはSOS」支援を届ける 携帯電話会社から、滞納者へ通知この記事の後段に「税金・国保・水道料金…各課が異変察知 市から声かけ 総合的にサポート」という話があります。良い話ですが、滞納者がその気になってくれないと難しいことです。

例えば、滞納者には①お金があっても滞納を承知で払わない人がいます。差し押さえが行われるのはそのような人です。一方で、②一部には本当に貧しくて払えない人もいます。以前書いたことがありますが、②の人が事情を詳しく徴収担当に説明してくれれば、生活困窮を理由とする徴収の停止(滞納処分停止)もできる可能性があるのです。そして、その情報は、今回の新聞記事のような生活支援へも生かすことが出来そうです。

しかし、滞納者は①②とも逃げの態勢に入ることが多いです。ましてや税金取りに人生相談をしようとする人は大変少ないでしょう。TVドラマと漫画の「健康で文化的な最低限度の生活」(ケンカツ)も、お金は欲しいが自分の事は話したくない(扶養照会もされたくない)生活保護の申請者ばかりで苦労する担当者の話でした。』

(追記2)本文の①について、法律上の「差し押さえなければならない」と、税金取りの「とりあえず彼らは自主納税を促す」ことの整合性についてお話します。

たとえば民間人が差し押さえをするためには裁判所の命令が必要です(TVドラマ「シッコウ!!~犬と私と執行官~」の世界)。しかし、税金の場合はその命令は必要ありません(自力執行権)。でも、裁判所を通す代わりに税金取りが独自に調査して最終決定しなければならないのです。

*調査の最初は、「本人は滞納の事実を知っているか」だと思います。入院していて納税通知書も督促状も見ていない場合もあります。
*次に「納めるから納付書を下さい」と言われれば、渡して待たなければなりません。
*その上で、納付されなければ「この滞納者は滞納の事実を知っているが納めない」と、税金取りは(自分の経験として)判断するわけです。
*次に、もし納めなければ、「納められない特殊な事情が有るのか」を調べなければなりません。生活状況をより詳しく調べたり、財産調査に入ります。
*「納付できない特殊事情は見当たらず、財産があるのに、納付する意思はない」となれば、「差し押さえ予告」という最後通告をします。
*それでも納まらなければ差し押さえとなるのです。
*この他にも、税金取りは、滞納者の調査だけでなく、税務課の課税内容のチェックをすることもあります。例えば、退職者の給与支払報告書で税務課がA町課税している場合、税金取りが実地調査したら、退職後に転居していて、賦課期日にはA町にいない場合も、希にはあるのです(給与支払報告書には退職時の住所が記載される事が多いし、税務課も課税資料全件を実地調査する時間がないために起こる)。そのような場合は課税取り消しを税務課に依頼し、正しい賦課地へ給与支払報告書を回送してもらうという、賦課交渉をすることがあります。

これは一例ですから、必ずしもこの通りの手順になるとは限りません。最初に述べた、法律上の「差し押さえなければならない」条文には期限が無かったはずです。それは調査・決定に時間がかかるからだと思います。ですから、このような手順を踏んでも、遅滞なく差し押さえしたことになるはずです。

(追記3)「本人は滞納の事実を知らないかもしれないし、入院していて納税通知書も督促状も見ていない場合もある」のに、なぜ法律は「差し押さえなければならない」と強気なのかについて、私なりの解釈をお話します。私は法律家ではありませんので、そのつもりでお読みください。

*私の解釈で言えば、「納税通知書等には送達主義をとっているから」だと思います。
*さらに、納税通知書等には不服や異議の申し立て制度がありますから、文書が送達されたのに反応が無ければ、法律上は滞納処分に進めるのでしょう。

しかし、差し押さえられた滞納者が反発し、裁判にでもなれば、どうなるかわかりません。なので、リアルな差し押さえの現場では、より慎重に仕事が行われているのだと思います。形式審査だけでなく実質審査も行うわけです。

(2023.7.26の記事の再掲)

徴税吏員(税金取り)のリアルな心情

2023.8.12

北見市役所文芸部発行「青インク」より

住民税の徴税吏員(税金取り)の心情をリアルに綴った手記です。税金取りには強権がありますが、ここにも書かれているように、出来るだけ伝家の宝刀を抜かずに仕事をするのが彼らの願いです。すると、税金取りでありながら、住民に深く関わるという点で、TVドラマ・漫画「健康で文化的な最低限度の生活」(ケンカツ)のヒロインがやっていた、ケースワーカーを連想するような仕事ぶりになって行くのです。

又、興味深い事には、「税金取り」というこの記事を書いた方が幼い頃のご実家も、税務調査を受けていたようです(手記の後半にあります)。

実は私の実家も、私が幼い頃には税金の申告をしなかったことがあったようで、「申告しなかったら税金の通知が来た」と今は亡き母が言っていました。直感で思うに、それは住民税の「推計課税(所得不明の者に対し、生活保護基準から算出する)」だったのかもしれません。その話を聞いた時の、私の複雑な心境はお分かりになると思います。ですから、母に質問はできませんでした。

別件では税務署との摩擦もあったようで(何回も父の代わりに矢面に立っていた)、そんなこんなで、母は私が若い頃、聞かれもしないのに、ぽつりと、こんな事を話してくれました。「世の中で一番嫌いなのは税務署の人」だと。

(追記)【役所の仕事】税金滞納整理担当の仕事内容と大変なこと

類似する記事です。記事中の「納付相談等納付折衝」の項に、「原則として担当職員が2名以上で対応する」旨書いてありますが、私の知っている区役所では、担当が女性であっても、原則として1名で納税相談から実地調査、差し押さえまで対応します。トラブルが予想される場合にのみ同僚や上司と行います。

「人間なネガティブな部分に関わるつらい職務」の項に、「担当者の住居のすぐ隣、日頃付き合いのあるご近所さんの財産を差し押えた」旨が書いてあります。このような事例は職員側も避けたいので、人事異動を含め、どの係でも住所地以外の担当にしてもらうことが多いです。しかし、様々な理由でこのような事例に追い込まれたときは、同僚に頼んで、担当の交代をすることもあります。

又、「その後、担当職員の住居やお庭に悪戯や嫌がらせを何者かがした。犯人は誰なのか、はっきりとはわからなかった」旨の話も書いてあります。具体的にどのような状態なのかは知りませんが、犯人は軽いつもりで悪戯や嫌がらせをしたとしても、受ける方にしてみれば不気味で深刻な話です。

役所には弁護士もいますし、いい加減な職場ではありません。おそらく上司に相談して、警察と相談する事も考えたでしょう。もし警察沙汰・新聞沙汰になれば、犯人だけでなく、犯人の勤め先や、妻子、その親族まで影響は及びかねず、友人知人も離れて行くかもしれません。故郷のある人は故郷に帰りづらくなる可能性もあります。犯人の受ける社会的な代償は、とても大きなものになる可能性があることを、犯人は知る必要があります。(2023.7.22の記事の転記)

生活が苦しい人にも役所は「差し押さえ」するのか

2023.5.1

(2023.4.10の記事の加筆再掲)「生活が苦しく食べるのが精いっぱいの暮らしなのに、住民税などの『差し押さえ予告』が役所から届いた」というような話を新聞か何かで読みました。これだけ読むと役所は非情だと思うかもしれませんが、私にはお話したい事もあります。

その「差し押さえ予告」というものが、①納期限をすぎると法律に基づいて自動的に発送される「(「差し押さえ」の文言のある)督促状」なのか、②それとも徴税担当職員が催告や調査を行ってからの、本物の「差し押さえ予告」なのかはわかりませんが、②の場合だとして話を進めます。

滞納している税金の納付は、遅れているわけですから、一括でするのが原則です。しかし、生活が苦しい場合には、分割納付も相談に載ってくれます。分割納付の約束をしたら、それを守り、もし守れなくなった場合には、すぐに担当者に相談する必要があります。それで誠意(意外と大事)が示せます。これは他の大多数の納税者に対する誠意でもあります。

さらに、(受けていないが)生活保護が受けられるぐらい苦しい生活をしている滞納者に対しては、徴税担当は「滞納処分の停止」を行うことがあります。しかし、生活保護を受けているわけではないので実態が役所には分かりません。ですから、滞納者は担当者に苦しい事情を説明する必要があります。生活保護を受けるのには事情を説明する必要があるでしょう。ならば、徴収を止めてもらうにも説明が必要なのです。

しかし、滞納者は往々にして逃げの態勢に入ります。いくら追いかけても、滞納者に逃げられては、担当者にも事情が分かりません。そんな担当者は、徴収成績が悪いと、営業マンのように上司から注意される事になるのです。同僚からも肩身が狭くなります。そうなると、(法律に従い)やむを得ず差し押さえ予告を送ることになりかねません。

(滞納処分停止の参考)https://www.zeiken.co.jp/hourei/HHCHI000000/15-7.html

(追記)「事情を聞かなくても暮らしぶりを見れば苦しいのは分かるはず」というご意見があるかもしれませんが、質素な暮らしをしていても多額の預金を持っている人もいなくはないのです。「差し押さえ予告」が届いたという事は、役所が差し押さえ可能な財産を見つけたという意味でもあります。

ちなみに、ケースワーカーの漫画を見ると、家に上がり込んで室内を観察していますが、少なくとも住民税の徴税職員はほぼ玄関先での話しになります。税金取りを歓待してくれる滞納者はまずいませんから。なので、暮らしぶりを見ると言っても家の外観だけの場合がほとんどです。高級マンションか、安アパートか、みたいな事を見てくるのです。だからこそ、本人の説明が重要になります。

しかし、例えば3万円の滞納額にたいして預金が3万円では、暮らしぶりも総合判定して、さすがに役所も「差し押さえ予告」はしないと思います。でも、100万円の預金があれば、(一般的には)差し押さえをせずに「滞納処分の停止」にするのは困難だと思います。他の多くの納税者との間に不公平感を感じます。それでも(6回や10回の分割払いでも)納付できない事情が有るのなら、その正当な理由を役所に申し出る必要があります。「差し押さえ予告」には、通常の催告には応じない滞納者を呼び出す効果もあります。

(追記2)マルサとかトッカンとか、あるいは新聞記事になるような国税の申告漏れの話を標準だと思う人は、滞納と言えば、一千万円単位を連想すると思います。それから比べれば3万円の滞納額なんて重箱の隅をつつくような話だと思われてもしかたありません。だから、深追いはやめとけと。

しかし、少なくとも住民税の滞納では数万円というのは多数派なのです。50万円以上の滞納者は少数であり、それは大口と呼ばれ特別扱いになります。ですから、3万円の滞納者を追いかけなければ、自治体の財政難に拍車をかけるのです。最悪それは行政サービスの低下につながり、他の納税者も影響を受けます。

(追記3)このような徴税の話をすると、高圧的で市区町村役場らしくないと感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、警察官の態度を例にすれば理解しやすいのですが、警察官は「住民を守る人と同時に制する人」だと思います。例えば、酔っ払いが絡んできた場合、警察官も最初は酔っぱらいを守る人になりますが、度を越して絡んでくると、警察官はある瞬間から制する人に豹変し、態度も高圧的になるのを、TVのドキュメンタリーか何かで観た事があります。あれを連想しますね。徴税という特殊な係では、市区町村役場職員もそれ相応の考え方が必要なのです。

「年金記録問題」が起こった理由のひとつ

2023.4.29

(2023.4.28の記事の加筆転記)あまり知られていないようですが、いわゆる「年金記録問題」が起こった理由にはこのようなものもあります。例えば、①Aさんが20歳になると国民年金に入ります。年金手帳が交付されます。

②その後、Aさんが就職すると、厚生年金をかけるために、会社が年金手帳を確認します。しかし「手帳は持ってない」と言えば、会社はAさんに新しい手帳で厚生年金をかけます。この時点で将来の年金受給の心配が出来る人は少ないでしょう。

③その後、Aさんが転職すると、新会社でも、同様に手帳を確認しますが、(元の会社に置きっぱなしでも、元の会社に行きたくない等の理由で)「手帳は持ってない」と言えば、新会社はAさんに新しい手帳で厚生年金をかけます。

④さらにその後、Aさんが転職すると…(以下は同様です)。

時は流れ、Aさんが年金を受給する年齢になった頃、最後の会社の年金手帳(例えば④)で年金の申請をすると、④の年金番号で加入した年金分しかもらえない事があります。あるいは納付期間が不足して、まったく、もらえない事も。

この時、たとえ①~③の年金手帳が無くても、国民年金を納めたとか、「いつから、いつまで、(所在地・会社名のわかる)どこの会社に勤めていたか」を役所に申告し、その記録が見つかれば合算されるでしょうが、古い話で、本人も記憶があいまいだと、役所も探せないし、特定できない事があるのです。

それでは合算に困るというので、何十年も前から、役所では、基礎年金番号というものを決め、(Aさんが年金申請前の若い時代から)機会あるごとに、その番号に複数の年金記録を統合するという事務を行っていますが、Aさんの記憶があいまいな場合は、これも名寄せできない部分が残るのです。そうやって、残ってしまった持ち主不明の年金記録も「年金記録問題」で、このようなケースも少なくないと思います。Aさんが老いて亡くなれば解明はさらに困難です。

ちなみに、年金制度の黎明期には、職種により、いくつかの独自の年金制度がありました。手探りの黎明期ですから(「おしん」の時代には生活保護制度も無かったはず)、役所の怠慢というより、時代背景的にやむを得ない部分もあるでしょう。それを統合する基礎年金番号というものは、比較的新しい概念です。マイナカードでも、50年間議論をして、反対者の中、やっとスタートしたぐらいですから、統合というものは難しいようです。

市民税・県民税申告書を確定申告書とは呼ばないで

2023.4.29

(2017.12.12の加筆再掲)申告シーズンの市町村役場・税務課、電話対応の一例もお話します(すべての市町村がこうしているとは限りません)。

申告シーズンになると、ニュース等で、さかんに「確定申告」という言葉が飛び交います。ご承知のように①「確定申告書」は国税の申告書であり管轄は税務署になります。しかし同時期に、②「市県民税申告書」も発送されます。管轄は市町村役場です。こちらも大量に発送されていますが、なぜかニュースにならない。

だから、わけの分からない申告書が来たとき、人はどこかの役所へ電話し、とりあえず「確定申告書が来た」と言いがちです。しかし、その一言が誤解を招き、「確定申告なら税務署へ聞いてください」となり、税務署へ行って見せると、「あっ、市県民税申告書ですね。市町村役場へ行ってください」となるのです。

これを防ぐためには、役所も住民も、「確定申告書」という言葉を軽々に使わず、特に役所側は、「何色の封筒ですか?」「申告書の上部には何と書いてありますか? 読んでみてください」などと、確認を怠らないことが大切です。

「確定申告書」も「市県民税申告書」も、前年の実績を参考に「行政サービスの一つ」として発送されています。しかし、就・退職、開・廃業、扶養人数・年齢などの変化により、今年の課税状況が変わることも多いのです。

すると、「確定申告書」を送付した人でも、今年は所得税が課税にならないので、「確定申告書」ではなく「市県民税申告書」の提出が必要になる人や、逆に、「市県民税申告書」を送付した人でも、今年は所得税が課税になるので、「市県民税申告書」ではなく「確定申告書」が必要になる人も出てくるのです。

すると、電話照会があったときなど、「受けとった書類がどっちなのか」という事だけでなく、「本当はどっちの申告が必要になるのか」まで、瞬時に判断し、適切な説明をしなければならないのです。そんな電話は申告時期になると毎日たくさんあります。

つまり、職員は電話で話しつつ、コンピュータ端末も開き、前年度の申告状況でデータ補完をしながら、今年の申告予定内容を聞き取り、時には暗算も使って、即座に仮計算をして、今年の課税予定を判断するのです。

窓口で対面し、じっくり会話すのならともかく、電話だけで、しかも短時間に判断するのは、そんなに簡単なことではありません。しかも、「そこまで理解した担当者にアクセスする必要がある」ことを知らぬ人が役所の内外に多いのです。たとえば市町村役場の担当窓口以外では、「確定申告書」と聞けば「税務署です」。「市県民税申告書」と言えば「市町村役場です」と、たぶん単純に答えるだけでしょう。

もしかしたら「税務担当者は、どんな申告書でも受け付けられるようにすべきだ」という声もあるかもしれません。しかし総合病院の「内科」で「外科」の相談をしてはいけないように、どこの役所の、どんな担当でも、自分の仕事以外の知識はあまりありません。仮に少々知っていたとしても、プロの知識は日々更新していかなければ実戦では使い物になりません。一年前の知識で、今年の行政相談に乗れば、間違いが起こりかねず、それは住民にとっても迷惑なことになりかねないのです。

では、税務署と市町村役場職員の一部が、お互いにの役所へ出張受付すればという考えもあるでしょう。でも出張すると、連日残業の繁忙期なのに、「お客様の途切れた空き時間に内部事務ができない」のです。その損失は一日残業数時間分にも匹敵します。

追記

「市県民税申告書が届いた人からの電話を受けたが、今年は所得税が課税になるので、市県民税申告書ではなく、確定申告書が必要になり、税務署へ行ってもらった」とします。

ところが税務署の受付で、「市県民税申告書」を見た案内係等が、「あっ!市県民税申告書は市町村役場へ行ってください」と機械的に返してしまい、やっぱり市町村役場に来てしまう事があるのです。市町村役場でも間違えることがありますから、税務署でも絶対無いとは言えないと思います。それを防ぐために、「税務署の人が誤解するといけないから、市県民税申告書は税務署では見せないでください」と付け加えたりする事も、必要かもしれません。

所得税と住民税、税額計算する者が逆だと、謝罪する者も逆に

2023.4.29

(2023.4.27の記事の加筆転記)
①所得税は納税者側が税額計算します。
②住民税は役所側が税額計算します。
この結果、何が起こるのかと言えば、課税誤りがあった時に、たとえ同じ課税資料を使っていても、①は納税者側の、②は役所側の非になるのです。①にも課税誤りがあると思いますので、所得税の制度はかしこいと思います。

例えば、確定申告書には「住民税に関する事項」欄があります。所得税と住民税では税法上の扱いが違う部分がありますので、それを申告する部分です。しかし、この部分の記入が間違っていることがあります。間違っていると、住民税の課税誤りが起きます。

もちろん住民税担当は、1円の課税誤りも有ってはいけない事は十分承知していますから、完璧を目指し、重点点検しています。しかし、点検個所はそこだけではなく、確定申告書の他の部分、給与支払報告書、法定支払調書、市県民税申告書、そして、それらの名寄せ、合算、住民票を元にした課税台帳との突合や、納税通知書の送付先宛名の決定、など多岐にわたります。内容が正しくても印刷位置が桁ずれしている書類もあります。すべて訂正が必要になります。

そのため、1~4月まで連日のように残業をしますが、短期間に大量の書類をこなす必要上、どうしても限界があります。そして、万一点検ミスが起こると、たとえ納税者側に問題が有っても、役所の点検ミスとなり、役所が謝罪することになるのです。

(扶養照会についての参考)『映画「護られなかった者たちへ」に込められた意図』

映画「護られなかった者たちへ」に込められた意図 | 映画界のキーパーソンに直撃 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)

扶養照会と民法の扶養義務の整合性

2023.4.18

(過去ログの再掲)生活保護の扶養照会の話です。役所が行うおお元の根拠は民法の扶養義務だと思います。福祉事務所が民法との整合性を考え、さらに「生活保護に俺の税金を使うなら、その前に扶養照会しろよ」という世論にも配慮するなら、一次的に扶養照会を考えるのは定石だと思います。民法のその条項を廃止すれば良いのかもしれませんが、はたして公助良俗に叶う事なのでしょうか。そう考えると廃止は困難だと思います。

しかし、一方では生活保護申請者からの「やめて欲しい」という声も現実としてあるわけです。TVドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」の中にもこんな話がありました。申請者の老婆にケースワーカーが「扶養照会しましょう」と言うと、「息子に迷惑を掛けたくないので、やめときます」と答え、困らせていたのです。これは「息子には迷惑を掛けたくないので、他人のあなたに(納税者に)お金を出してもらいます」と言ったようにも聞こえるのですが、おそらく老婆には自覚が希薄なのでしょう。お金が天から降ってくるとでも思っているかの如く。こんな時、全体の奉仕者である公務員は、納税者に対しての正当な言い訳を、一人心の中で探しているのかもしれません。「いい加減な仕事をするな」と叱られることに怯えながら。

もし民法との整合性のため、扶養照会の完全撤廃ができないのなら、扶養照会ができる妥協点はどこなのか。現時点で私の考えるものは「税金の被扶養者である場合のみ、扶養者へ扶養照会をする」というものです。これをもって「便宜的に扶養照会したとみなす」のです。税金の申告書で「私が扶養しています」と自主的に申告しているわけですから、被扶養者が路頭に迷っている場合に「たすけてあげて」と役所が連絡するのは、(原則として)妥当な行為だと思います。それで、もし扶養者から「たすけられない」との返事が有れば生活保護を適用し、かつ「扶養親族名に疑義在り」として税務当局に通報すれば良いのです。税務当局は調査し、必要なら職権で扶養を取り消し、住民税・所得税を追徴することになるはずです。この場合、会社の扶養手当にも影響する可能性があります。

それ以上の扶養照会は、私は現状では厳格でなくて良いと思っています。不正受給は後から取り返せますが、厳格にしすぎて餓死者が出ては取り返しがつかないからです。

(追記)生活保護申請者が扶養者からDVを受けて逃げてきた場合など、扶養照会が適当ではない場合もあります。その場合は「特例」扱いが必要になることもあると思います。

又、扶養者に「貧しい」などの事情があって、(別居している)被扶養者の全面支援が困難な場合もあるでしょう。その場合は一部支援をすれば、税法上、扶養につけても問題はなかったはずです(東京の大学へ通っている子どもがバイト生活していても、地方に住む親が一部仕送りをしていれば扶養につけられるのと似ています)。不足分は生活保護で支給すれば良いと思います。つまり扶養控除と生活保護が両立するのです。(2022.2.5)

扶養照会が必要だと思われる事例

2023.4.18

@ (過去ログの再掲)そう言えば、NHK朝のラジオで、私の聞き違いでなければ「ある若者が、お金が無いので、毎日食パン一枚で生活している」旨放送していました。それに対してリスナーから声が寄せられ、ほぼすべてが「公的支援をすべし」という趣旨のものだったのです。

しかし、若者なら親御さんはご健在である可能性が高いので、実家に戻れば普通の生活ができる可能性はないのか。親御さんの扶養家族になっているのではないのか。あるいは仕送りは出来ないのか。何かの映画にもあったように、一旦都会に出てきた若者は、成功せずに田舎帰れば「負け犬」の烙印を押されかねないので、意地でも頑張っているのではないのか。

それらの可能性があるなら、公的支援よりも扶養照会を考えるのが先決ではないのかと思うのですが、そのような意見は聞こえなかったようです。(2022.2.9)

役所の窓口ではなぜトラブルが起きるのか

2023.4.9

あちこちに書いた話ですが、私の知る限り、民間人の議論にはあまり出て来ないようですので、ここにも書いておきます。

役所のカウンターをはさんで住民と役人が対立する構図は、昔から珍しくはありません。なぜ両者は対立するのか。

それは、住民は自分の問題を解決して欲しいので、無意識に役人には「一部の奉仕者」を求めると思いますが、役人は憲法で規定する「全体の奉仕者」ですから、視座が違います。そのすれ違いがトラブルになるのだと思います。これは服務の宣誓をした役人の宿命だと思いますが、概して冷たい印象を外に与えます。

例えば生活に困った住民Aさんが役所に相談にいらしたとします。

話を聞いた役人の頭の中には、情に流されて「一部の奉仕者」になることへの注意ランプが点滅します。

①Aさんの要望を飲むことは、「全体の奉仕者」としても問題無いのか。
②Aさんが特例を求める場合、「全体の奉仕者」としては、全体に申し開きが立つ正当な理由が見つからない限り、特例の行使は問題なのではないか。そんな事を考えます。特に、手間や予算などの関係上、全体から同様の要望があった場合には困難になる事を、Aさんだけに行いたい場合には。

私の勘違いでなければ、例えば支援団体や弁護士は依頼人の利益を守ろうとするはずです。そういう意味では、彼らは「一部の奉仕者」だと思います。だから、役人は時に彼らとも視座が違うのです。

(2023.4.10追記)このような理由から、「全体の奉仕者」に頼ることは意外にもハードルが高いとも言えます。ならば「一部の奉仕者」はどこにいるのか。それで思い出すのが「自助・共助・公助」という言葉です。この言葉は優先順位順に並んでいます。そして、「自助・共助」は憲法の縛りを受けない「一部の奉仕者」なのです。役所が「共助(扶養照会)」をしたい理由は民法の規定だけではないと思います。

(2024.7.16追記)又、マイナカードに預金口座の登録を嫌がる人の理由としてよく聞くのが、「国は信用できない」というものです。しかし、年金申請時にも口座登録が必要になりますが、嫌がる人を見聞きしたことはありません。又、ローンや家賃の支払い等で、国よりも信用が高いとは思われない民間に口座登録をしている人が多いのとも矛盾します。

これは、本当は信用云々と言うよりも、全体の奉仕者に使用目的を限定せずに口座情報を教えると、全体のために自分に不利になることもやられるかもと、無意識に恐れているのではないでしょうか。言いかえると、無意識に、全体の奉仕者に対して情報操作をし、一部の奉仕者に誘導しようとしているのではないでしょうか。

同性婚への私の考え方

2023.2.14

@ ①既婚者のおじさんでも、妻に隠れてレズビアンのAVを観ることがあるかもしれないし、②彼氏が欲しいJKでも、親に隠れてBL本を読むことがあるかもしれない。これを性的嗜好と呼ぶのだと思います。

③しかし、LGBT法案の話をするときにも「性的嗜好」という表現を使うのは、いかがなものかと思います。

①②③が同じグループだと勘違いする人が新しく生まれ、又、従来からの誤解も解けない心配があります。すると「同性婚は個人でする分には黙認するが、国として正式に認めるわけにはいかない」と思う人が減らないかもしれないのです。

それを防ぐためには、①②と③を誰にも分かるよう、明確に切り分ける必要があると思います。これからの国の指針としては、③は男女差別と同等の、禁止すべき性差別であることを明確にすべきだと思います。

この差別禁止に反対している人は、自分の子供がLGBTQに生まれたら、「もし好きな人が出来ても、あなたは婚姻届を出せません。あきらめなさい」と宣告するのでしょうか。その残酷さが想像できるなら、何が正解かを知ることは難しくないと思います。(2023.2.9の記事の再掲)

(追記)TVを見ていると、①LGBTQと②選択的夫婦別姓を同列に語るように見受けられる事あります。しかし、①は先天的で、ホワイト、ブラック、イエローの、皮膚の色の問題に近いように思います。②についても解決を急いでほしいです。考察はこちらにあります。

同性婚の法制化は、世論の機が熟すまで待つのが無難だと思っていましたが、これは人種差別の一つなのですから、政府はもっと積極的に(世論の誤解を解く)啓もう活動を行い、同性婚等の法制化を急ぐべきだと思います。調査によっては、LGBTQの割合は10人に1人とも言われています。政府としてLGBTQの存在を認知した以上、文明国であるならば人権侵害を継続して良いはずがありません。

(追記2)TVドラマなどで、LGBTQの人が、困惑するストレートの人を追いかけまわし、恋人にしようとするものがありました。しかし、あれを観て、LGBTQは後天的嗜好だと誤解する人もいたはずで、その意味では、ドラマにもいくらかの問題があったと思います(ストレートはLGBTQになれる、LGBTQもストレートになれる、という誤解)。

(追記3)同性婚を推進すると「日本が変わってしまう」と言う方もいらっしゃるようですが、その言葉から私は、かつて「女性に参政権を認めると日本が変わってしまう」と言う人がいたらしいことを連想します。

(追記4)仮に10人に1人がLGBTQだとしたら、1億2千万人の日本の人口の内、1,200万人がLGBTQの方になります。すでに分断されているその方の人権回復が急務です。「同性婚は社会の分断を生む」という考えの方がいらっしゃるとしたら、その方は、先に1,200万人を救済する必要があると思います。(2023.2.6の記事の加筆再掲)

「選挙の代理投票を付き添いの人が行うことは出来ない」ことについて

2023.2.5

@ どこかで、「選挙の代理投票を付き添いの人が行うことは出来ない」事について、「知らない担当者二人に投票の秘密を知られることは心配だから、付き添いの人に代理投票権を認めて欲しい」みたいな話を読みました。

庶民の心情としては分からなくもありません。しかし、そこで触れられていなかった事に、公務員の守秘義務があります。担当者二人にはその守秘義務があり、役所を辞めた後でも、墓場まで秘密は持って行かなければなりません。だから投票の秘密は守られます。役所で日常的に大量の秘密情報に接している公務員には、代理投票の秘密など、ごく僅かなものですから、普通、気にもとめません。

しかし、民間人の付添人には、法的な守秘義務はないのです。

(追記)

確かに、言葉の不自由な人の話は、家族や親友なら阿吽の呼吸で分かるかもしれませんが、投票所の担当者などの他人には、何を言っているのか、分かりづらいことがあります。私の友人にも障害者がいましたから心配は分かります。

でも、付添人が入り「この人はこう言っている」と説明した場合、(民間人である付添人への情報漏えい問題の他に)それが付添人の誤解や独断では無いことを証明できなければなりません。すると、担当者としては、やはり本人に確認せざるを得ないのではないでしょうか。

(追記2)

本人に確認する時には、付添人には席を外してもらった方が良いと思います。そして、最終的に本人が投票をしたか否か、誰に投票したのかも、担当者からは付添人に伝えてはいけないと思います。それは守秘義務でもありますが、付添人と本人の間に、精神的な支配関係が隠れていた場合の事を、想定外にしないためです。(2019.7.26の記事の加筆再掲)

投票所で「うちのお父さん来てる?」等と尋ねる事の問題

2023.2.5

@ 選挙の名簿対照を受ける時、たとえば奥様が、「うちのお父さん来てる? 『散歩の途中に行く』って言ってたけど…」とか、「娘来たかしら。『遊びに行く前に寄ってきなさい』って、言っておいたけど…」等と担当者に尋ねることがあるとしたら問題だと思います。

担当者が町内の顔見知りだとしても、それが、あいさつ代わりの雑談だとしても、担当者がそれに答えることは、「担当者が投票の秘密を漏らした」と言われかねないからです。ましてや、第三者にも聞こえるような大声で話すことに至っては…。少なくとも私はそう考えます。(2019.8.4の記事の加筆再掲)

年金は自分がいらなくても支払い義務はある

2023.2.4

@ お金持ちなどで「年金はいらない」という方もいらっしゃるかもしれません。そんな方は請求しなければよいです。国は喜ぶはず。社会貢献になります。でも、「年金はいらない」方も「納付は必要」なのです。法律上は義務だからです。お金の流れを言えば、年金は預金のように自分の口座に積み立てるものではありません。お金は現在の受給者に流れています。やがて自分がもらう時期になったら、今度はその時の納付者からお金をもらうシステムなのです。支え合いですね。ですから「いらない人も」支払う必要があります。

もっと言えば、老齢年金を受け取るためには、保険料納付済期間が10年以上必要です(昔は25年以上)。 もし何かの事情で納付しておらず、これから納付しても10年以上にならな人でも、つまり、「もらいたくても自分の老齢年金がもらえない人でも支払い義務がある」のです。今は10年だから良いですが、昔は25年でしたから、本人の(損した感は)大変なものだったと思います。もちろん支払い能力のない人には免除制度もあります。(2023.1.19の記事の再掲)

徴税というお仕事のあれこれ


2022.12.20

TVのドキュメンタリーか何かで、警察官が住民を確保する瞬間を見た事があります。警察官(公務員)にとって住民は①奉仕する対象であると同時に、②確保する対象でもあるはずです。そのシーンには一人の酔っぱらいがいて、2~3人の警察官が①として紳士的に話をしていましたが、ある瞬間から(一人の警察官が「何とか」と宣言したら)毅然として②として確保を始めました。警察官は人が変わったような言動になりました。

話しは変わって、市町村役場の税金取りの話です。彼らが仕事で相手をする人は、納期限を過ぎても税金を納めない人が、ほぼすべてです。警察官とちがって、ある意味②に該当する人がほぼすべてなのです。それでも新人君に「(法律違反をしていても)滞納者を犯罪者扱いしてはいけない」「普通の住民として接しなさい」と最初にくぎを刺す先輩もいます。不幸にして、そのような先輩がいなくても、常識的に露骨に罪人扱いする職員はいないでしょう。

何を言いたいのかと言えば、先日、日本の警察署に拘留中の人が、(人命にかかわる)糖尿病だと申告しても薬を与えられず、ベルトと捕縄で裸のまま長時間拘束された上に、複数の署員から暴行を受けて亡くなったという非人道的な話を読んで、どこか東南アジアの映画みたいだと思ったからです。

(追記)「(法律違反をしていても)滞納者を犯罪者扱いしてはいけない」という心得を聞いて、滞納や脱税は軽微なものであり、「やったもん勝ち」だと誤解する人がいるといけませんので、TVドラマ「トッカン」のホームページに書かれている文章もご紹介しておきます。

(追記2)「北風と太陽」という寓話がありますが、市町村役場の税金取りは、できれば太陽政策で仕事をしたいのです。(誤解を恐れずに)もっと言えば「税金を納めて下さい」とさえ、あまり言いたくないのです。

一つの理想的なスタイルを挙げれば、TVドラマ「刑事コロンボ」が思い浮かびます。あのように滞納者の家に行き、世間話をして帰ってくるぐらいにしたいわけです。税金取りがわざわざ自宅にやってくれば、それだけでで滞納者には目的が分かります。この上「税金を払わないと差し押さえます」などとダメ押しするのは野暮というもの。お互いに不快感が残るだけです。だから、「家のかみさんが…」などと、軽く雑談をして帰ってくるだけで(その中で、さりげなく実態調査もしている)、察した滞納者に自主納税させたいのです。とは言っても、本当に雑談だけでは何ですから、帰り際にコロンボみたいに、思い出したように一言要件を言ってくるというスタイルが、コロンボ流の落としどころになるでしょう。雑談をしていても、後々のために「要件を確かに本人に伝える」ということも実地調査の大切な仕事です。「滞納者が滞納の事実を知っている否か」は大きな違いです。コロンボ同様、子どもの使いにはなりません。

その為にも、最初から滞納者を犯罪者扱いするのは得策ではありません。しかし、それで自主納税してくれる人ばかりではないのが現実ですから、もし太陽政策が利かないのならば、(差し押さえという)北風に吹いてもらうしかないのかもしれません。ちなみに法律では最初から差し押さえという北風を求めています。しかし、滞納者にも事情があるはずなので、法律を厳格に適用するのは困難です。税金取りの仕事の大半は、(雑談の中でも)その事情を調査し、できるだけ北風を吹かせないために行っているようなものなのです。

(追記3)税金取りというと「お金の集金人」と思うかもしれませんが、規則上は「目の前に札束を出されても受け取らない」事になっています。だから(デフォルメ気味ではありますが)コロンボスタイルの納付依頼もありえるのです。

もし、調査に行ってお金を受け取ってくると、「税金なんてほかっておけば良い。その内に役所から取りに来るから」という事になり、自主納税の制度が崩壊しかねないのです。だから、札束を出されても、原則は、納付書を置いて帰ってきます。滞納者は自主的に金融機関へ行って納付する必要があります。「ほかっておけば延滞金がついて損をする」と理解してもらう必要があるのです。納付が無い場合には差し押さえになります。

(追記4)TVドラマ「トッカン」映画「マルサの女」と比べて、市町村役場の税金取りの仕事ぶりを「ぬるい」と思うかもしれません。

しかし、TVドラマ「トッカン」の説明には、『 特に悪質な事案を担当するのが、特別国税徴収官。略して「トッカン」』(抜粋)とあります。

又、映画「マルサの女」が活躍する「査察部」の説明には、「 個人や法人の税管理などを主に担当する税務署では取り扱うことが困難な悪質な脱税に対し調査を行い、検察庁に告発する業務を行っているのが『査察部』である。」とあります。(Wikipedia査察部 概要より抜粋)

つまり上記を一言で言えば、両者とも軍隊で言うところの「特殊部隊」と言っても良いのではないでしょうか。ならば市町村役場の税金取り・「徴税吏員」は通常部隊なのです。

もちろん通常部隊でも、担当に数パーセントは特に手ごわい滞納者もいるでしょう。そんな時は、通常部隊でありながら、特殊部隊の真似事をしたり、差し押さえ等で対抗します。しかし、その他の多くの滞納者は、概ね話が通じる人たちであり、特殊部隊を必要とはしていません。強権である税金取りが相手にふさわしい対応をしなければ、ミスマッチになり、その過剰さを、おそらく世論は良しとしないでしょう。

映画「シン・ゴジラ」を観ても分かりますが、あのゴジラも、最初は自衛隊ヘリコプターからの機関銃攻撃でした。その効果が無いと分かると、徐々に兵器をエスカレートしていき、最後は(特殊部隊)米軍の出番になり、熱核兵器になるのです。

ちなみに、市町村役場職員は、税務署員と違い税務大学には行きません。例えば高卒で職員になり、3/31まで婚姻届の受付をしていた人も、4/1から納税課職員になり、研修と先輩の実地指導を受けながら、すぐに税金取りになるのです。そして、2~3年で1人前になり、5年前後で異動していきます。だから特殊部隊をつくれるような、税務署のようなスペシャリストが少ない事も事実です。

(追記5) TVドラマ「トッカン」や映画「マルサの女」は軍隊で言えば特殊部隊の話であり、市町村役場の税金取り・「徴税吏員」は通常部隊だと書きました。

では、税務署職員はどうかと言えば、やはり、特殊部隊が一部の人なら、大多数は通常部隊なのでしょう。ただ、通常部隊とは言っても、市町村役場と違って税務を一生の仕事にする事を覚悟して就職し、税務大学を出て、定年まで税務の仕事をするわけですから、市町村役場職員より専門性は高いわけです。

映画「マルサの女」の最初に印象的なエピソードがありました。まだ通常部隊にいたヒロインが飲食店の税務調査をする話です。相手は老夫婦が経営している下町の小さな飯屋のようでしたが、ヒロインは警察の取り調べみたいなキツイ態度を取り、自家消費の税法上の取り扱いを厳重注意していました。

ヒロインの調査態度はその現場にミスマッチでした。自家消費の不申告も素人同様の経営者には良くある間違いであり、税務知識が乏しいことが原因である場合がほとんどなのですから、この機会にやさしく教えてあげればよいのです。犯罪者扱いするセンスは良くありません。

この辺りの理想的なスタイルは、TVドラマ「税務調査官・窓際太郎の事件簿」の主人公の方に良く描かれています。彼の正体は泣く子も黙る「マルサの男」ですが、その牙をむくのは本来の敵に対してだけです。不器用な「マルサの女」と違って、こちらはとても器用です。

ちなみに、現場とミスマッチな厳しい調査態度をしていた映画「マルサの女」のヒロインは、その後、厳しさにふさわしい部署である「マルサ」に異動させられたのです。栄転と言えますが、通常部隊の仕事をやらせることは住民にとって不適当だと上層部が判断したとも言えるわけです。

(追記6) ケースワーカーを描いたTVドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」(ケンカツ)は、安定を求めて区役所に就職したが、生活保護担当課に配属されて戸惑っているヒロインが主人公でした。

しかし、いやがるヒロインとは対照的に、同期や同僚には専門職枠で就職した者もいたのです。①一般枠採用のヒロインは、泣いても笑って普通5年前後の人事異動で去っていきますが、②専門職枠の人はずっと生活保護に関わるのが普通でしょう。同じ係に①②が混在することで組織が強くなることが期待できます。①の人も次々と他課・係を経験するので、公務員としての教養が②に劣ることはありません。

私はこのシステムを市町村役場の税金取りにも使えないかと思いました。しかし、導入した場合には弊害も起こりそうです。②を一人でも入れて安易に指導者の役目を与えると(役目を与えなくとも、徴収成績が良いと、自然に指導的なポジションになる事も多いが)、係員全員に特殊部隊の手法を要求し、あるいは自発的に特殊部隊の手法をまねる職員が発生し、いつの間にか係の空気が変質し、それが通常部隊のスタンダードになってしまう心配です。徴収効率から言えばその方が良いのですが(だから徴収成績を気にする上司が黙認する可能性も)、前述したように特殊部隊の手法は普通の滞納者にはミスマッチになりかねないので。そのデメリット、適温管理の悩ましさを考えると、とりあえずは現状維持が得策のように思いました。

(追記7)市町村役場と税務署・国税の徴収について書いていますが、前述したように、市町村役場も差し押さえをしています。市町村によって多少ばらつきはあるかもしれませんが、固定電話の電話加入権、銀行預金、給与、生命保険などは普通に行われていると思います。件数は減りますが動産・不動産の差し押さえと競売も行います(税務署の協力を得ている市町村もあるようです)。

生命保険は税金の控除にする人が多いので、すぐに調べられます。差し押さえて職権で解約し、解約返戻金を税金(延滞金を含む)に充当するのです。残金が出れば本人に還付し、不足があればさらに追徴します。昔から入っていた生命保険を解約された人が、新たに今の年齢から加入しなおすと、同じ金額で同じ条件のものに再加入できるのでしょうか。私は専門ではないので良く知りませんが。

それから、あらたに給与のデジタル支払いが始まるようですが、その決済業者の事務所が地元に無いなどの理由で、決済業者に振り込まれた給与の差し押さえが困難になる場合、これは想像ですが、役所は勤務先の会社へ行って給与担当に話をし、直接差し押さえをする事が考えられます。(2020.12.15以降パレットに書いた記事の加筆・転記)

「読み仮名」の戸籍記載の手順を考えてみる(経過措置の検討を)


2022.10.14

『キラキラネーム、どう判断 「読み仮名」の戸籍記載、法制化へ』

戸籍には「読み仮名」が載っていません。だから、「自分の名前は『太郎』と書いて『じろう』と読むのだ」と主張するご本人がいたとしても、役所はそれを軽々に「誤り」とは言えないと、少なくとも私は思っています。

ですが、情報システム上の管理や検索をしやすくする等のために、「読み仮名」を戸籍に記載することを検討するようです。

すべての行政文書の基本になる戸籍に記載する以上、それは他の戸籍記載事項と同様、間違いは許されず、いいかげんなことは書けません。ですから、本人から「読み仮名」を市町村に届け出てもらう方法などを想定しているようですが、はたして全国民が届け出るでしょうか。

又、市町村にとっても届け出と記載は膨大な事務量になるはずです。

そして、本人からの届出が、前述の『太郎』『じろう』のような想定外の読みだった場合をどうするのかも、表ざたにして議論せざるを得ませんので、悩ましい問題です。何十年も使ってきた「読み仮名」を、変えさせることにもなりかねないわけです。

その場合、人権上の問題は無いでしょうか。又、本人の同意なく役所が職権で変えてしまえば、何十年も使ってきた「読み仮名」を(日本人には認められていない)通名として使う人も出て来そうです。すると役所や民間は個人の特定で問題が増える恐れもあります。

それらを防ぐためには、経過措置として、使っていた「読み仮名」を認めざるを得ないでしょう。そして、基準日以降の出生届からは、厳格に「読み仮名」を規制するのです。

実は、「読み仮名」の入力事務は、過去に住民票の電算化の時にも起こっています。

紙の住民票には「読み仮名」が載っていません。しかし、電算化に当たってはすべて「読み仮名」の入力が必要になりました。それで常識的な「読み仮名」で入力したのです。

読みにくい珍しい事例については、電話で尋ねたこともあったようです(電話は30年ほど前の話であり、現在ではプライバシー意識の高まり等から問題でしょう)。ですから、全件は本人確認していませんので、一部は本人の認識している「読み仮名」ではないはずなのです。

しかし、実務では、生年月日、かな氏名、漢字氏名、住所検索等を、単独、あるいは合わせ技を駆使して、該当者が出て来るまで複数回検索することが普通ですから、間違えることはまずありません。

さらに最終特定するときには、住所・氏名・生年月日の三点が合致することを確認しますから、なおさらです。その辺りはプロの仕事です。

でも、住民票の場合は「読み仮名は検索のための方便」と割り切っていましたから、それでも良いのかもしれませんが、戸籍の場合は前述したように「絶対的な正解」が求められますから、大変でしょう。

追記

以上をまとめると、私の理解している住民票の「読み仮名」とは(個人的見解は)住民票の検索の道具である。それは住民票にも記載されず、住民票の写しにも載らないので、一般的な読み方でも入力可。いや、検索は第三者によって行われるため、一般的な読み方の方が検索もれが出にくい可能性がある。

対して、戸籍の「読み仮名」は、個人を特定する情報である。さらに戸籍原本にも、戸籍謄・抄本にも記載されるため、正確であることが求められる。そして、戸籍に記載する重要性と、正確であることを担保するには、原則として戸籍の届書で「読み仮名」の受付をする必要がある。軽々に他のデータを流用することは、戸籍の使命に馴染まない。

追記2

私は、いっせいに全国民に届けさせようとするのは問題が多いと思います。その処理方法は単刀直入ですが、もっと労力の少ない方法もあるような気がします。現在の戸籍システムの検索に「読み仮名」が必要なら、戸籍に記載しないよう(住民票のように裏情報として)、住民票のデータを転記すればよいと思います。30年間現場で住民票が検索できたデータですので、実用価値は証明されています。

その上で、「読み仮名法」(仮称)施行日以降のすべての戸籍届出には「読み仮名」欄を設け、出生・婚姻届等があるたびに、「読み仮名」を随時戸籍に記載していきます。又、単独の「読み仮名届」(仮称)も新設し、国民にも届出をお願いし、いつでも届けられるようにします。

( 税務課の話ですが、住民税の扶養親族になっている人に役所は申告書を送りません。所得が少ないことが分かっているからです。そこまですべて申告書の提出を求めると、住民と役所の双方に煩雑というデメリットが生じます。しかし、その人が「所得証明」を求めてきたときには、その場で申告書を出してもらい、その数字を転記して「所得証明」を作ります。この手法、読み仮名でも参考にならないでしょうか。)

給付金等の振込先との合致については、大変な労力をかけて「読み仮名」を整備しても、「読み仮名」が合致しただけでは(個人の特定とまでは言えず)振り込めないはずなので、マイナンバー等、その他のデータ活用も考えた方が良いと思います。マイナンバーカードの氏名ローマ字表記については、マイナンバーカードの申請書データで作れないでしょうか。このカードは厳格に作られていますから申請書データは活用できると思います。(2022.8.24の「今週までのパレット」に加筆再掲)

マイナンバーは税務事務に使うのが本丸

2022.10.14

「マイナンバーカードは税金に関する事務合理化のために使うのが本丸」だと私は理解しています。老齢年金の申請に出かけた時の窓口担当者の方からも(尋ねもしないのに)同じことを言われましたので、概ね正しいと思っています。各種給付金に使うのは付録のようなものでしょう。

申告時期になると、役所には山のように課税資料が集まってきます。市県民税申告書・確定申告書の他にも、①給与支払報告書、②各種の法定支払調書などがあり、フリーランスの人の場合、①②がそれぞれ5枚前後ある人も珍しくありません。

問題は住所・氏名・生年月日が住民登録と完全一致しない人が少なくない事です。そこに住民登録が無い人もいれば、住所が1番地、生年月日が1日、氏名の漢字が(例えば)「郎」と「朗」のように少し違う人が少なくありません。そのような違いであっても、電算上は別人になります。

それを、役所の担当者が、一枚一枚吟味して、役所の責任で、名寄せしていかなければならず、これが、案外悩ましくて大変な作業なのです。もし、100%マイナンバーが書いてあれば、電算機で自動的かつ正確に名寄せできます。

さらに、金融機関の口座とひもづけすれば、滞納者の財産調査も、当てずっぽうで(あるいは、しらみつぶしに)金融機関を調査しなくても済むので、差押等が効率よくできるメリットがあります。これらがマイナンバー本来の目的だと思います。(2022.8.24の「今週までのパレット」に加筆再掲)

「マイナンバーは1968年から議論している」とも言える

2022.10.14

「インド13億のマイナンバー コロナ禍で貧困層を救ったデジタル技術」

先の総裁選では、総理候補の方が「国民年金ベーシックインカム化」という具体的な年金改革を唱えましたが、(私の知る限り)他の三人の候補の方や、TVのワイドショーは難色を示して盛り上がりませんでした。世論は年金破綻を心配していても、いざ、それを実行しようとする者には冷淡に見えました。

ところで、日本では、国は1968年に「各省庁統一個人コード連絡研究会議」を作り国民総背番号制を目指しました。

その後も、1983年に納税者番号制度(グリーンカード)を導入しようとしました。

しかし、どちらも世論の反対等で出来ませんでした。

さらに、マイナンバーカードでも、取得者の伸び悩みや、銀行口座との紐づけ等が難航しているようです。国は年金改革をしないとか、(電算化しないので)給付金の交付が遅いとかの世論があります。しかし、国がやろうとしている改革の足を引っ張っている力の一つも、世論なのだと思いました。

2022.10.14の今、「マイナンバーの事実上の義務化は問題だ」という世論の声もあるかもしれません。しかし、この話は1968年から議論されて来た事だとも言えると思います。もう50年ほど経ちました。むしろ決断するのは遅いぐらいかもしれません。そして、パンデミックや戦争という有事も考えると、(コロナ過での事務が遅れたように)有事にアナログ的な作業をしていては、国民をケアできないという危機感も高まったのだと思います。(2022.8.24の「今週までのパレット」に加筆再掲)


ベーシックインカムは国民年金から始めてみる 

『 さらに先の総裁選挙では、候補者の一人の方が「国民年金保険料をゼロ円にして、国民年金満額を支給する」と提案していました。事実上の国民年金ベーシックインカム化です。この案では、幸いなことに生活保護制度は継続されるようですので、万一生活に困っても心配ありません。財源は消費税の増税です。増税のリターンを分かりやすい形で国民は受けるわけです。』( 映画「茲山魚譜-チャサンオボ-」の追記より抜粋 )

「国民年金のベーシックインカム化」と言うと、若者には関係のない話だと思うかもしれませんが、そうは言いきれません。

(2022年度・毎月16,590円)の掛け金がゼロになる上に、将来は若者にも満額の国民年金(現在は年間約78万円)が保証されるからです。そして、現状、満額支給でない人も少なくないようですが、その人たちも救済されるはずなのです。

これだけでも安心感が違うのに、若者は浮いた掛け金を公的・民間の個人年金に回せば、より多くの年金額がもらえる事になりませんか(国民年金支給額には掛け金だけでなく税金等も投入されているので、そうではない個人年金の場合には、同じ額の掛け金でも、支給額が減る場合があります)。

現役サラリーマンの収入には及ばないかもしれませんが、夫婦二人が個人年金も行えば、年金収入はかなり増額となるはずです。

もし、老後の年金が満額保証されるだけでなく、増やすこともできるなら、若者も現在をより楽しめるのではないでしょうか。そして、皆があまり老後の心配をせずに消費できれば、経済も回ろうというものです。

消費税が増税になるのを心配しておられる方もいらっしゃるかもしれません。でも、前述したように国民年金の掛け金がゼロになるのです。さらに、浮いた掛け金を公的・民間の個人年金に回せば、年金額が増えるうえに、掛け金は所得税や住民税の控除にも出来るはずですので、増税分の消費税の一部も回収できるのではないでしょうか。

そして、「国民年金のベーシックインカム化」が成功したら、「若者のベーシックインカム」にも追い風になるように思います。少なくとも行政改革への心理的ハードルは下がるのではないでしょうか。いきなり若者に毎月7万円支給は困難だとしても、とりあえず部分的な行政改革をして毎月1万円でも実行し、それが、うまくいけば、段階的に増額しても良いのです。段階的に行えば「ベーシックインカム実現の問題点」も回避しやすいのではないでしょうか。

( 映画「老後の資金がありません!」の私のレビューの抜粋・加筆再掲 )

選択的夫婦別姓は「呼称上の氏」ではなく「通称」で解決か

(2022.8.26)

(2024.2.1 追記3以降に要約・改訂版がありますので、そちらからお読みいただいてもかまいません。)

まず離婚届の話をします。離婚すると多くの母は、氏が元に戻るので、父・子と母が別氏になるのです。子どもが学校に通っている場合等には、肩身の狭い思いをするかもしれませんし、いじめの原因にもなりかねません。そんな世論が戸籍法77条の2の届を生みました。これを出せば離婚しても氏が元に戻りません。厳密に言えば「民法上の氏」ではなく「呼称上の氏」(「通名」ではありません)ですが、外面上は変わらないのです。ですから、私が知っている30年ぐらい前は、離婚する女性の内、少なくない人が同時にこれを出しています。まるで離婚届とセットになっているがごとくに。

離婚の有無にかかわらず、30年前に30歳前後だった女性、つまり当時の当事者世代は、今60歳前後になります。このあたりのご夫婦が、まだ若い頃と同じ思想を持っているとしたら、現行法を支持するサイレント・マジョリティなのかもしれません。そして、この届書の存在自体も、夫婦同姓支持者の存在証明とみる事も出来そうです。

しかし、現在では逆に選択的夫婦別姓を求める世論が目立ちます。婚姻時から、子どもと別氏になりかねないのを承知で、別氏にして欲しいという声です。どちらも一理ある論理に違いありません。でも、ここから感じられるのは、世論の「子ども為から親の為に」という意識の変化だと思います。

「選択的夫婦別姓制度」を行う上で、一番重要視されているのは、推進派が男女平等問題を挙げているのに対し、反対派は、幼い子供がいた場合、子どもに問題が起こる恐れだと思います。ですから、(もし子どもにメリットの方が多いならば)「子どもにはデメリットどころか、メリットの方が多い」と反対派を説得できれば、77条の2の届出のごとく、実現が早まるのだと思います。この問題の本質は男女平等問題というより、子供の問題のような気がします。

しかし、世論の大多数が賛成しなければ、政治家もこのような大改革は難しいと思います。電車を反対方向に走らせるようなものですし。政治家に要望を出すのも良いでしょうが、希望者は政治家の主である世論を説得する方に力を注いだ方が良いかもしれません。このような話もあります。『選択的夫婦別姓の議論がスルーする、「実は同姓支持多数」という不都合な真実』。

選択的夫婦別姓制度を実現するにあたって問題が予想される戸籍は、戸籍法77条の2の届という(苦肉の策的)前例がありますので、その応用問題として解決できる可能性があります。やはり、「民法上の氏」と「戸籍法上の氏」を使い分ける手法です。ニュースで読んだ記憶ですが、私の誤解でなければ、選択的夫婦別姓制度の推進派の方も、使い分け手法に理解を示しておられたと思います。そして、外国人と結婚する際の戸籍記載方法も参考になります。

戸籍は個人や身分関係を証明するための、公文書の大元になるもので、キログラム原器のようなものです。ですから、「現在の役人の頭には戸籍を無くすという発想はゼロに近い」と思いますが、「前述したような77の2的な改正することは技術的には可能かも」しれません。しかし、万が一にも戸籍を無くした場合には、同時に新たなキログラム原器が必要になると思います。

(追記)2022.8.28

選択的夫婦別姓制度ですが、「家制度から個人へ」という世の中のベクトルとして、将来的には日本にも改正の時期が来るのだと思います。ただし、現状は世論という機が熟してはいないと思います。改正を求める声が聞こえてきても、多くのサイレント・マジョリティが存在すると思うからです。ある意味、戸籍法77条の2の届がサイレント・マジョリティの存在証明です。

でも、将来に備え、現実的にどのような方法があるのか、私なりに考えてみました。そこで思い出したのが、(「呼称上の氏」を使う)あの戸籍法77条の2の届です。私はこの届を30年以上前から知っています。そして、この応用問題としてなら解決策がありそうだと思ったのです。

その時期に見たニュースか何かで、選択的夫婦別姓を求めている方々も、私と同じような解決策に理解を示していると知りました。

そして、昨日、偶然に見つけたネットの記事では、逆に、選択的夫婦別姓に反対する方たちが、この解決策を警戒しておられるように思いました。警戒をするという事は実現性があるという事だと思います。

どうやら、良し悪しは別として、将来もし行うなら、戸籍法77条の2の届の応用問題として解決するのが、現実的のようです。

そう思っていたら、今朝の新聞で知ったのですが、法務省が主たる担当である世論調査で、「同姓」か「別姓」かの二択ではなく、「旧姓を通称として幅広く使うことも出来るようにする法制度」案を設けたので、これを選択する人が増えたのだそうです。法務省は戸籍法77条の2の届も知っているはずですが、その上で、その届ではなく、「旧姓を通称とする」こと提案したことになります。

私の想像ですが、法務省も、今は時期尚早だが将来的には選択的夫婦別姓を受け入れる事になりそうだと、感じているように思います。その際の方法として、戸籍法77条の2の応用問題として「呼称上の氏」で解決するよりも、「旧姓を通称とする」方が、より障害が少なく現実的だと判断したのではないでしょうか。現在、日本人に通称は認められていないはずです。しかし、通称を幅広く使うことも出来るようにする法制度が出来るということは、将来をみすえて検討に値する事だと思います。もっと言えば、「通称」で皆が合意すれば、わりと早く実現可能かもしれませんね。

(追記2)2022.8.28 

ちなみに、現在、私が考える「旧姓を通称とする」場合の事務処理方法はこうです。婚姻届は現在のものを使用します。氏は「夫」か「妻」の二択から選んでもらいます。選んだ方が夫婦の「民法上の氏」であり「呼称上の氏」になります。又、戸籍の筆頭者になります。今まで通りの新婚の戸籍が出来上がります。

そして、例えば、夫の氏を選択した場合には、同時に、別姓を希望する妻から「旧姓を通称とする届」(仮称)を出してもらいます。すると、夫婦の新戸籍にある妻の身分事項欄に、「〇年〇月〇日『旧姓を通称とする届』あり 妻の通称〇〇」などと記載します。「旧姓を通称とする届」が受理されれば、受領日から通称が正式なものになるので、住民登録・その他の公文書にも通称が記載され、「副あて名」にもそれが入力されます。さらに、その住民票の写し等によって、民間にも通称が正式なものとして証明され、広く通用することになるでしょう。

あるいは、「旧姓を通称とする届」は戸籍の届ではなく住民票の届とする方法も考えられます。戸籍と切り離せば、もっと話はシンプルになりそうです。制度設計の立場になって考えれば、後者の方が良いかもしれません。戸籍に手を付けようとすると、ここに書いてないような法律的、技術的混乱もあると思います。繰り返しますが、これは現時点での私の想像です。

(追記3) 2024.2.1 (上記は長くなりましたので、現時点での考えを入れて要約してみました)

選択的夫婦別姓制度ですが、「家制度から個人へ」という世の中のベクトルとして、将来的には日本にも改正の時期が来るのだと思います。ただし、現状は世論という機が熟してはいないと思います。改正を求める声が聞こえてきても、多くのサイレント・マジョリティが存在すると思うからです。

でも、将来に備え、現実的にどのような方法があるのか、私なりに考えてみました。

そう思っていたら、今朝の新聞(2022.8.28と思われるが世論調査は2021年に行われた)で知ったのですが、法務省が主たる担当である世論調査で、「同姓」か「別姓」かの二択ではなく、「旧姓を通称として幅広く使うことも出来るようにする法制度」案を設けたので、これを選択する人が増えたのだそうです。これは、法務省が事実上「旧姓を通称とする」ことを提案した事になるのではないでしょうか。

私の想像ですが、法務省も、「今は時期尚早だが将来的には選択的夫婦別姓を受け入れる事になりそうだ」と、感じているように思います。その際の方法として、「旧姓を通称とする」方が、より問題が少なく現実的だとして、検討しているのではないでしょうか。

現在、日本人に通称は認められていないはずです。

しかし、通称を幅広く使うことも出来るようにする法制度は、将来をみすえて検討に値する事だと思います。もっと言えば、「通称」で皆が合意すれば、わりと早く選択的夫婦別姓が実現可能かもしれませんね。

ちなみに、現在、私が考える「旧姓を通称とする」場合の事務処理方法はこうです。

婚姻届は現在のものを使用します。氏は「夫」か「妻」の二択から選んでもらいます。選んだ方が夫婦の戸籍の筆頭者になります。つまり、婚姻届と戸籍は今まで通りという事です。

そして、「旧姓を通称とする届」は戸籍の届ではなく住民票の届とするのです。このように問題を戸籍と切り離せば、もっと話はシンプルになりそうです。制度設計の立場になって考えれば、住民票の届の方が良いかもしれません。

住民票に通称が記載できれば、公的な証明になります。それで代替可能ではないでしょうか。

国民の多くが「氏」を二つ持つと、役所の事務でも、名寄せなど、人物の特定に混乱(誤り)が起きる心配もありますが、マイナカードの利用で、それをカバーできるかもしれません。

もし戸籍にまで手を付けようとすると、ここに書いてないような法律的、技術的問題もあると思います。さらに、役人はそのような(公簿の大元である)戸籍法の大改正は、憲法改正にも匹敵するような大問題だと思っているはず。だからハードルが高いのです。繰り返しますが、これは現時点での私の想像です。

追記4 2024.2.1 ( すでに2019年(平成31年)に法改正が、そして、さらに・・・ )

上記のように、選択的夫婦別姓は、住民票への旧氏の記載で(簡易的に)解決できるのではないかと思いました。

ところが、すでに2019年(平成31年)に法律改正があり、住民票、マイナンバーカード等への旧氏の併記が可能になっていたようです(私が学んだ時代には、この制度はありませんでした)。つまり、すでに法改正は前進しつつあるのです。

でも、これは(簡易的)とも言える方法なので、色々不都合もあるようです。

そんな中、すでに2019年に「旧氏の併記が可能」になったのに、2021年に「旧姓を通称として幅広く使うことも出来るようにする法制度」案を法務省が国民に問うということは、その不都合を解消するために、この路線を、さらに前進させたいという意志の表れでしょうか。

「旧姓を通称として幅広く使うこともできる」というのは、「旧氏の併記」から一歩進んだ、似て非なる概念なのかもしれませんね。

追記5 2024.2.3 ( 本体を変えずに、枝葉で解決する手法 )

戸籍法77条の2の届が、離婚後も夫婦同氏にするために、氏の視点を「民法上の氏」から「呼称上の氏」に動かすことで「見かけ上の同氏」を実現したのに対し、今回の選択的夫婦別姓の路線は「民法上の氏」から住民票等への「旧氏の併記」、さらには「通称」に動かすことで、「見かけ上の別氏」を実現しようとしているのかもしれませんね。ですから、これも戸籍法77条の2の応用問題とも言えるのかもしれません。

このように、本体を変えずに、枝葉で解決する手法は、平和憲法のもとでの自衛隊や、敵地攻撃能力(反撃能力)、そして、非核三原則のもとでの米国の核の傘などにも見られるように思います。(2024.1.31以降の記事の再掲)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?