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#ネタバレ TV「健康で文化的な最低限度の生活」(ケンカツ)に見る区役所のリアルな空気感

( これは映画「生きる」追記の一部を加筆・移記したものです。引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )


追記12 ( TVドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」
2020/12/19 10:23 by さくらんぼ

TVドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」(ケンカツ)は、現代の映画「生きる」か

映画「生きる」(1952年)は、公務員の安定にあぐらをかいていた市役所の市民課長のお話でもあります。(当時は不治の病と言われていた)ガンになったのをきっかけに、住民から出ていた「公園が欲しい」という要望に全力で取り組むことを通し、あらためて「生きるとは何か」を問い直す作品でした。

1952年当時の公務員の実態を私は知りませんが、これが黒澤監督の公務員観でもあったのでしょう。公務員バッシングのせいか、昨今でも同様のイメージを持っておられる人も少なくないと思います。しかし、古典と言っても良い素晴らしい作品ですが、古典であるがゆえに、現代の公務員象をあの映画から想像することは難しいです。

そんな中、新たなスタンダードと言っても良い作品が、TVドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」(ケンカツ)です。

TVドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」(ケンカツ)は、大学で映画監督になることを諦めたヒロインが、人生の夢を捨て、ただ安定だけを求めて区役所へ就職し、ケースワーカーの担当にされてしまうというお話です。ヒロインは戸惑いますが、自分と同じように、いや、それ以上に「生きる」事につまずいた人たちを無我夢中で支える仕事するなかで、ヒロイン自身も「生きるとは何か」を学んでいくのです。

こうして二つの作品を並べてみると、住民と関わりながら、「安定」と「生きる意味」を問うていました。そういう意味でも、オマージュかどうかはともかく、TVドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」(ケンカツ)は、現代の映画「生きる」であるとも言えると思います。

(ケンカツ)は現代の区役所に自分が就職したような気分にさせる自然な描写で、内容も濃く、映画「生きる」の前に出しても恥ずかしくないクオリティーだと思います(もちろんドラマにするためのデフォルメや省略などはあるでしょうが、それは映画「生きる」とて同じでしょう)。特に公務員志望の方には参考になりそうです。

原作まんがが人気であることも申し添えます。


追記14 ( 幸せそうな!?ブランコの男 )
2020/12/19 14:36 by さくらんぼ


「いのち短し 恋せよ乙女……」の歌から(ケンカツ)のヒロインが生まれたのか


「  いのち短し 恋せよ乙女……  」

(  映画「生きる」チラシより抜粋  )

劇中では、恋する時間の濃密さを謳い、安定する時間の空虚を教える歌だったのかもしれません。映画監督への夢破れ、安定への夢破れたヒロインが活躍する(ケンカツ)が、もし、この歌をうけて誕生したとしたら、素敵な話です。

ちなみに、「風当たりの強さ」の記号であろう雪が舞う中、ゆれるブランコは「不安定」の記号だったのかもしれません。


追記15 ( 連想ゲーム )
2020/12/19 22:10 by さくらんぼ

類似点、例えば映画「生きる」も(ケンカツ)も「死」から始まる

〈 以下、「健康で文化的な最低限度の生活」 (ケンカツ)のネタバレです。 〉

>(当時は不治の病と言われていた)ガンになったのをきっかけに、住民から出ていた「公園が欲しい」という要望に全力で取り組むことを通し、あらためて「生きるとは何か」を問い直す作品でした。

>そういう意味でも、オマージュかどうかはともかく、TVドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」(ケンカツ)は、現代の映画「生きる」であるとも言えると思います。(追記12より)

* (ケンカツ)では、第一話でいきなりヒロインが担当する受給者の一人が自殺します。ヒロインが公務員のイロハも、ケースワーカーとしてのイロハもまだ学んでいない時に、いきなり全編を通してもっとも暗い出来事が起こるのです。ヒロインは法的な責任を免れましたが、「もっと親身になってあげればよかった」との自責の念が残り、一生の十字架を背負うことに。

「第一話が暗いと、以後の視聴率が下がる」、私は内心そう思いました。しかし、映画「生きる」でも主人公の市民課長がガンの宣告を受けるシーンが前半にあり、その十字架をせおって全編のストーリーが展開されるわけです。そう思うと、(ケンカツ)の十字架の必然性が理解できるように思います。

同様に、

* 退職した部下である女性の生命力に癒されて、後を追いかける市民課長。

→ 生活保護からの自立に成功した男が働く飯屋に毎日のように通うヒロインは、好物のとんかつを食べるためだけでなく、男の笑顔を確認することで、仕事の成功体験を思い出し、日々の仕事のエネルギーにしていたのかもしれません。

* ブランコ(不安定の記号)に揺られる市民課長。

→ 自転車(不安定の記号)で仕事をするヒロインたち。

劇中、「自転車に油差しといたよ!」みたいなセリフを同僚(川栄李奈さん)から言われるヒロイン(吉岡里帆さん)。なぜ、そんなセリフが必要なのでしょう。油の切れた重たい自転車での仕事は心まで重くします。でも、軽やかな自転車は、特に仕事帰りに乘る自転車は、どれほど気持ちを解放してくれるのか、私も分かるような気がします。

* 「  いのち短し 恋せよ乙女……  」。( 映画「生きる」チラシより抜粋)

→ 「 健康で文化的な最低限度の生活 」。

誰でも知っている言葉を用いることで、関連性が強調されるように思います。

他にもあると思いますが、とりあえず思いつきましたので。


追記16 ( 連想ゲーム② )
2020/12/20 10:12 by さくらんぼ

(ケンカツ)と映画「生きる」のチラシを解読してみる

あらためて(ケンカツ)と映画「生きる」のチラシを比較してみます。

映画「生きる」では、市民課長が冬の公園で雪に降られながらブランコに揺られています。

→ (ケンカツ)では、ヒロインが夏の公園で汗をかきながら自転車をまたいでいます。

季節(時代)も変わったので、市民課長の願い通り、乙女にバトンタッチしたと感じられます。ちなみに、映画「生きる」は公務員へのメッセージだけでなく、全若者に向けたメッセージなのでしょう。「乙女」とは「若者」の事だと思います。

そして、右わきには飯屋で働くようになった男が座っていますが、浮かぬ顔をしていますから、悩み事が解決する前なのでしょう。彼も苦悩の市民課長を連想するために置かれた可能性があります。

そして左わきの子犬。(ケンカツ)では重要な役目は無かった記憶ですが、それでも置かれたのには理由があるのでしょう。

映画「生きる」のなかで、退職した部下の女性は町工場でウサギの人形を作っていました。そして市民課長に一個渡し「課長も何か作ったら」と励ますのです。重要ですね。

(ケンカツ)であのウサギはどこにあるのかと、ずっと考えていましたが、チラシの子犬がそうなのかもしれません。


追記17 ( ケンカツの再放送を観ました )
2020/12/28 9:41 by さくらんぼ

配属先へ向かう希望と不安に満ちた車内

さっそくTVドラマ(ケンカツ)第1話・第2話を再観しましたが、オリジナルよりも少々カットされているようです。一例をあげると、ヒロインたちが体育館で辞令をもらい、マイクロバスで東区役所へ連れていかれるシーン。バスの中には若者たちがひそひそ話をしていました。希望と不安に満ちたドキドキの車内です。

「生活課って大変なんですか」みたいな吉岡里帆さん。

恋人ではなく母に電話し、周囲から「マザコンか?」と噂される山田 裕貴さん。

車中すでに専門書で勉強を開始しており、「彼女は専門職枠で採用された」と周囲から一目置かれる川栄李奈さんなど、すでに自己紹介的な緊張のドラマがスタートしているのですが、今回の放送ではカットされたように思います(再確認しましたが、もし間違っていたらごめんなさい)。

それでも十分楽しめる放送でしたが、ファンの方は機会を見つけてノーカット版もご覧になると良いと思います。ヒロインも最初観た時はもう少し頼りないと思っていましたが、観直してみると、なかなか健闘しています。でも、後半になるにつれてもっと逞しくなっていきますよ。少々カットされていると言っても、TVドラマを再放送するときには良く行われる手法ですから、TV局の経営上致し方ないことなのでしょう。関係者の方には、再放送と、原作まんがの一部を無料で読めるようにしていただき、ありがとうございました。ファンの一人として御礼申し上げます。

追記

川栄李奈さんは専門職枠で採用されたので、定年までケースワーカーの仕事を続けるのかもしれませんね。(狭き門ですが)昇進試験を受けて係長になるなどの可能性はあるのでしょうが。ヒロインの師匠に当たる井浦 新さんも新人の時からケースワーカーだったようですから、専門職枠なのでしょう。

でも、ヒロインたちは一般事務職枠ですから、5年前後の人事異動でまったく違った課へも行けます。どこへ行くにせよ、ケースワーカーの仕事は良い経験(勉強)になるでしょう。

では、一般事務職は頼りないのかと言えば、そうではありません。ヒロインたちは5年前後でいろいろな仕事を経験します。その度に違う法律を勉強させられるわけです。住民登録、戸籍、課税、納税、年金、健康保険、選挙、障害者関連など、ある意味「区役所職員としての一般教養」は、ケースワーカーの仕事の中でも生かされることでしょう。専門職とのチームワークで組織はより強くなるのです。


追記18 ( ケンカツを再放送を観ました② )
2020/12/28 10:06 by さくらんぼ

このような苦しい経験のない公務員は皆無だと言っても良いと思う・公務員は誰の味方なのか・映画「シェーン」のセリフ

(ケンカツ)の再放送を観ていますが、場面が展開するときに「無声映画にでてくるような説明文が書かれたボード」が出てきます。

これは「古い映画を思い出してね」という記号だと思います。これも(無声映画ではありませんが)モノクロ映画「生きる」へのオマージュへの記号でしょうか。

ところで(ケンカツ)の第2話にこんなエピソードが描かれています。

ヒロイン・義経えみる(吉岡里帆さん)が担当する受給者に不正受給が発覚したのです。受給者宅の高校生の子どもが親に内緒でバイトをしていました。当然に親は申告はしません。だから生活保護の支給額が規定より多くなってしまったのです。子どもは満足な小遣いがもらえないはずなのでバイトをした心情は分かりますが。

すべてを知った親は義経えみるに温情を期待しますが、悪質な場合は刑事告発もある不正受給です。基本的に過払い分の生活保護費は返還しなければなりません。

しかし「あなたは私たちの味方でしょ。高額で無理です。返還金額は少なくなりませんか。あなたは新人だから法律を知らないんじゃないですか」と、痛いところを突きながら温情を期待するのです。この親の気持ちも分ります。生活保護を受給している親が、よりによって生活保護担当から借金返済を迫られる不条理に陥ってしまったのです。しかも担当者は頼りなさそうな新人。

仮に、ここまでが受給者側の責任だとしたら、ここからは役所側の責任と言っても良いでしょう。

「無意識のうちに、義経えみるは受給者側の味方になってしまった」のです。これは誤りだと少なくとも私は考えます。その無意識から生まれた不公平な判断から、受給者に有利な(この時点で不公平が発芽している)、しかも誤った法律解釈の説明をしてしまう義経えみる。

しかし、あえて言うなら公務員は憲法の味方なのです。

日本国憲法第99条に「憲法尊重擁護の義務」があり、新人公務員は辞令交付時に宣誓の儀式があるのです。ドラマでその辺りが省略されていた(ノーカット版にも)のは残念といえば残念な事です。そして、日本国憲法15条2項に規定されている通り、「公務員はすべて国民全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではない」のです。

ですから、これを今回の事例に当てはめて考えると、「役所内だけでなく、他のすべての生活保護受給者と納税者(非課税・免除者も含む)の前でも、役所として立っていられる正々堂々とした解決方法」を取らなければなりません。

「あなたと、皆のために」と言っても良いでしょう。

( ちなみに「あなたと、皆のために」は、映画「シェーン」でシェーンが言うセリフです。

以下、映画「シェーン」のネタバレです。

クライマックス、決闘に出かけようとする夫を殴り倒し、代わりに決闘に出かけるシェーンに、妻が「私のため?」と言うと、シェーンは「あなたと、皆のために」と答えました(もし「あなただけのため」と言ったら、偏った「一部の奉仕者」になりかねませんし、「不倫」を告白したことにもなりかねません)。 

公務員が「あなだけの味方をする」ために働くのは、その時点ですでにアウトの可能性があるのです。

そして案の定、上司や同僚からもアウトの宣言を受けた義経えみるは、自分の味方だと思っている受給者との板挟みに苦しむことになるのです。このような経験は、義経えみるだけでなく、おそらく公務員全般にあることで、落とし穴に落ちた苦しい経験のない公務員は皆無だと言っても良いと思います。

追記

この「ケースワーカーは生活保護受給者の味方なのか」は第2話の主題なのかもしれません。役所内で新人たちがランチで話題にするシーンがありましたから。

ちなみに、(こちらは分かりやすいですが)税金取りも滞納者の味方ではありません。憲法の味方であり、滞納者と納税者(非課税・免除者を含む)全体の味方なのです。そして、「役所内だけでなく、他のすべての滞納者と納税者(非課税・免除者も含む)の前でも、役所として立っていられる正々堂々とした解決方法」を取らなければなりません。

追記2

上司や同僚に突き放され、苦しんだ挙句、義経えみるは電話で親にアポを取り、後日出かけていきます。しかし、「悪い情報は一刻も早く伝えるべきだ」と考えます。とりあえず電話で事情説明し、アポを取って詳しい説明に伺うのが良かったと思います。電話では言いにくいからという気持ちは分かりますが、後まわしにしたのは逆効果だと思います。

そして、事情説明の時に、「過去にはセーフだった法律解釈が、〇年の厚労省からの通達でアウトになった」みたいな説明を、できれば通達の文書(コピー)を見せてした方が良いと思います。「あの~その~」と映画「生きる」の市民課長みたいな不安気な声で話し、やっと口から出た説明が「上司はダメだと…」だけでは、上司の独断だと勘違いされますし、義経えみるも親身になっていないと思われてしまいます。

「判断が覆る可能性のある独断か否か」は住民にとっては重要な事です。「国の公式な方針転換であり判断は覆らない」ことをハッキリ伝えなければなりません。

そして、上司の指示で同行させた同僚を、上司に無断で家の外で待機させたのは、命令違反の疑いがあります。上司の命令を権限のない部下が勝手に変更したのです。もし殴られたりする事件が起こった場合に、責任の所在はどうなるのでしょう。それに、今回はトラブルが予想されるわけですから、「言った言わない」を避けるためにも、担当者は一人で行かない方が良いです。さらに、二人で話をすることで、無言の威圧(いわゆる抑止力)の他に、「これは独断ではない」という重要なメッセージにもなります。

事例によっては、部下を飛び越え、いきなり上司が相手の家に説明に出かけることがありますが、その場合でも、(強く断られない限り)上司を一人で行かせない方が良いです。カバン持ちとして、上司の隣で黙って座っているだけで構いませんので、信頼できる部下が一人同行すべきだと私は考えます。ぜひ手を挙げてください。上司も人の子、普通は感謝してもらえるはずです。

それから、「給料は役所に返してもらいます」みたいな、「懲罰的な給料没収制度」と誤解される説明は感心できません。それでは感情的になります。「過払い分の生活保護費は返していただく事になります」みたいな言い方が良いと思います。必要に応じて、「生活保護費は税金ですから、過払いのままでは納税者に説明出来ません」と付け加えても良いかもしれません。

でも、これらはヒロインたちが未熟であることを強調するシナリオであったことが徐々にわかってくるのです。後半になるにつれて、ヒロインたちも模範的な公務員に成長していきます。

追記3

昔、500円の公金横領でクビになった公務員が新聞に載っていました。市民課の住民票や戸籍の手数料だったと思います。その記事で、私は「500円でクビなんだ」と知りました。ならば60万円もの生活保護の不正受給が発覚したのに刑事告発もなく、返金だけで済めば、気のどくではありますが、有難いのかもしれません。


追記19 ( ケンカツを再放送を観ました③ )
2020/12/28 16:42 by さくらんぼ

嫌われても、怒鳴られても、必要な事はキチンと言う事も、公務員の仕事

>「あの~その~」と映画「生きる」の市民課長みたいな不安気な声で話し、やっと口から出た説明が「上司はダメだと…」だけでは、上司の独断だと勘違いされますし、義経えみるも親身になっていないと思われてしまいます。(追記18より)

「住民の要望に応じられず、嫌われても、怒鳴られても、言うべきこと(法律等の説明)は、キチンと言う」という公務員らしさが育ってきます(これは説明責任)。

もちろん和やかな雰囲気の中で会話できれば一番良いのです。公務員も当然それを望んでいるはず。しかし、現実はそうばかりではありません。そんな時、もし言えなければ、相談者が不利益を被った場合に、「わざわざ役所へ行って担当者と相談までしたのに教えてくれなかった」と非難されることになります。

あるいは、怒鳴る住民にひるんだ新人公務員が何も言えなくなり、代わりに応対した上司がキチンと法律の説明をした場合、「あの担当者は教えてくれなかった。説明責任がなってないじゃないか!」と、自分が怒鳴ったのは棚に上げ、その場でさらに叱られることになりかねません。

民間企業では「お客様のご機嫌を損じないことが第一」かもしれませんが、公務員の世界では「法律等を伝えることが第一」だと思います。


追記20 ( ケンカツを再放送を観ました④ )
2020/12/29 10:08 by さくらんぼ

退職 ・ 「とんかつ」の耳 ・ エレキギター

( 退職について )

>(ケンカツ)では、第一話でいきなりヒロインが担当する受給者の一人が自殺します。

>ヒロインが公務員のイロハも、ケースワーカーとしてのイロハもまだ学んでいない時に、いきなり全編を通してもっとも暗い出来事が起こるのです。

>ヒロインは法的な責任を免れましたが、「もっと親身になってあげればよかった」との自責の念が残り、一生の十字架を背負うことに。(追記15より)

さらに、この後も辛い経験ばかりをすることになるヒロインには、一時期、辞めたい気持ちがふくらんできました。

民間と違って公務員(少なくとも区役所の)離職率は大変少ないのですが、ヒロインも悩んだ挙句思いとどまります。

仮にヒロインが公務員を辞めたらその後の人生はどうなったでしょう。もちろんバラ色の人生が待っていたかもしれませんが、あえて反対の場合を考えてみます。

公務員バッシングの世の中、もし民間企業へ転職しようとすれば、面接で「公務員は安定して仕事も楽だと聞いていますが、なぜ辞めたのですか」などと尋ねられるのは必至でしょう。それで無くとも「痛くもない腹を探られる」のに、もし自殺の件が分かれば、企業側のヒロインへのイメージ低下は避けられないでしょう。「何かあるのではないのか」と不必要に警戒される可能性があります。自殺が不可抗力であり、ヒロインに法的責任が無いにせよ、とかく悪い噂は尾ひれをつけて広まるものですし。

でも、区役所で働いている限り、必要な情報は正確に異動先まで伝わりますから、不当な評価をされることは少ないと思います。

( 「とんかつ」の耳について )

「ケンカツ」だから「とんかつ」なのでしょうか。

それはともかく …

ヒロインはとんかつの耳が好物です。それを知ったとんかつ屋に就職した元・受給者が、「特別にとんかつの耳ばかり集めた定食」をヒロインに出すエピソードがありました。

とんかつの耳はそんなに旨いのか。

先日、わが家でもとんかつ弁当を食べたので、そのあたりの疑問を考えてみました。

あらためて、しみじみと、とんかつの耳を味わってみると、「達成感」の味がしたのです。普通、とんかつは中央から食べていきますね。そして最後に、残った耳を食べるのです。小ぶりになった耳を食べると、その小ささと、端っこ特有の硬さがあいまって、「食った食ったという達成感」がわいてくるのです。

あのとんかつ屋は、ヒロインにとっても、元・受給者にとっても、成功体験のパワースポットでした。だからヒロインは足げく通いますし、元・受給者も救世主であるヒロインを心待ちにするようになったのです。だから、元・受給者が「端っこ、美味しいですよね。私も端っこ好きです」と言ったのは、本音だと思います。

( エレキギターについて )

生活保護費の不正受給は、高校生の息子が親に内緒でバイトをしていたのが原因でした。音楽に目覚めた彼は、ステレオが欲しかったし、仲間とロックバンドを作りたかったのです。息子の部屋の押し入れには、わりと立派なステレオと、たくさんのCD,そしてギターアンプとエレキギターが隠してありました。

しかし、ヒロインの説明に怒り、ヒロインの目の前でギターを叩き壊してしまったのです。そして色々もめた後に、問題が解決したので、係長が「自分が若い頃に使っていたギター、もう弾かないから」とプレゼントしたのです。

私はギターをプレゼントすることは感心できないと思いました。他の受給者に知られれば、「彼だけ特別扱いされた」「不公平だ」と言われても仕方ない行為だからです。それに、ギターは不可抗力で壊れたのではなく、本人が床に叩きつけて壊したのです。「短気は損気」ということを教える教育的配慮ためにもギターを与えるべきではないと思いました。

私が趣味のオーディオに恋したのは小学校低学年の頃です。しかし裕福ではなかったので、就職してからやっと自分の給料で買えたのです。それまではトランジスタラジオが友でした。フォークブームでギターにも興味がありましたが、学生時代、最初に買ったのはフォークではなく、8,000円のクラシックギターでした。そのギターはいつも抱いていました。だから息子の哀しみも分かるような気がしますが、少々甘い展開のような気もします。


追記21 ( ケンカツを再放送を観ました⑤ )
2020/12/31 9:34 by さくらんぼ

町工場でウサギの人形を作っている元・部下の女性職員と、気弱な市民課長

>( 「とんかつ」の耳について )

>あのとんかつ屋は、ヒロインにとっても、元・受給者にとっても、成功体験のパワースポットでした。

>だからヒロインは足げく通いますし、元・受給者も救世主であるヒロインを心待ちにするようになったのです。

>だから、元・受給者が「端っこ、美味しいですよね。私も端っこ好きです」と言ったのは、本音だと思います。(追記20より)

とんかつやの女主人(徳永えりさん)は元気な人です。そこの店員になった元・受給者の男(遠藤憲一さん)は几帳面な性格ではありますが、とても気弱な人です。二人は良いコンビになりました。この二人は、映画「生きる」の町工場でウサギの人形を作っている元・部下の女性職員と、気弱な市民課長ですね。

ならばウサギはどこだと考えていました。女主人はいつも頭にハチマキのような髪留めをしています。あれは耳の記号であり、彼女はウサギでもあるのかなと思っていました。あるいは、ウサギ耳を隠すためのハチマキである可能性もあるわけです。いずれにしても、他のドラマではほとんど見られない、個性的すぎるハチマキなので、耳か、耳隠しかはともかく、ウサギの可能性があると思いました。

すると、とんかつの端っこ(耳)も、ウサギの耳でもあった可能性が強まりますね。

このドラマは何話もありますが、これは前半の一部のレビューです。他の部位分も、一つ二つ、過去ログのどこかにありそうですが、見つかりましたら、また、いつか追記をしたいと思います。


追記23 2022.6.4 ( 映画「ハケンアニメ!」 )

映画「ハケンアニメ!」は対になる作品か

映画「ハケンアニメ!」は、TV「健康で文化的な最低限度の生活」(ケンカツ)と対になるような、しかも、志の高い作品だと思います。詳細はあちらをご覧ください。


追記24 2022.8.22 ( 区役所のガードマンの話など )

残業時間・区役所のガードマンの話など

業務時間外に来た若い女性を、診察せずに追い返した女医が、翌日、彼女が事件に巻き込まれて死亡したことを知る映画がありました。良心の呵責に悩んだ女医は、一人で事件の捜査を始めるのですが…。

(追記)極めて良質な作品であるにもかかわらず、(失礼ながら)地上波では視聴率がパッとしなかったTVドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」(ケンカツ)ですが、BSの日本映画専門チャンネルでは何回も再放送されており、やはり良い作品は評価されるのだと喜んでおります。

ところで、その(ケンカツ)後半のエピソードにも、保護家庭の小学生の少女が、一人、時間外に区役所を訪ね、ガードマンに門前払いされてしまう話がありました。偶然、残業で残っていたヒロインたちは、直後にガードマンからの連絡を受け、胸騒ぎを感じて緊急出動します。

私の知る限り、リアルなガードマンなら、少女を待たせたまま残業状況を調べ、担当係が残業中であれば、内線電話で知らせ、指示を受けます。通常、担当係は「とりあえず話を聞きます」と返事をすると思います。担当係が話を聞いた上で、来庁者に出直してもらう事はありますが、担当係がいるのに、ガードマンの独断で門前払いにすることは、特別な指示が無い限り、普通は無いと思います。

(追記2)ちなみに、残業している職員がいても、住民票や戸籍、各種照明書などは発行できません。なぜなら、時間外はメインコンピューターが止まっているので、職員が自席の端末をONにしても動かないのです。停電時みたいな状況になります。簡単なデータ照会すらできませんので行政相談も困難です。ですから、残業時間の職員は、紙の書類整理や会議をしています。

(追記3)「残業時間の職員は、紙の書類整理や会議をしています」と言うと、この電算化時代、遊んでいるように聞こえるかもしれませんが、そうだとしたら誤解です。レストランでも「仕込み」という地味な作業が欠かせないのはご存じでしょう。時間外の「仕込み」があってこその営業時間なのです。

役所でも、例えば市民税係の繁忙期には、確定申告書の控や明細書、市県民税申告書、給与支払調書、法定支払調書など、紙の書類が山ほど集まります。職員が入力していては追いつかないので、(税金の知識が無い)プロのキーパンチャーに入力依頼します。そのパンチャーが正しく入力できるよう、残業時間に紙の書類の内容点検をし、必要ならば訂正や補記をしたり、コード化して転記しなければなりません。この「仕込み」が残業時間の主な仕事です。もちろん、入力後の点検は職員がします。

会議の件を言えば、来客や電話のある日中は会議が出来ません。しかし、(担当替えや、繁忙期前における事務手順の打ち合わせ、大きな法改正・マニュアル改正時の説明等)係全員でしなければならない会議もありますので、やむをえず残業時間に行うのです。超勤手当削減が厳しいご時世です。サービス残業があったとしても、余分な会議をすることはありません。


追記25 2022.8.31 ( 京極係長、愛の告白 )

「俺の女に何するんだ」という怒りが裏打ちされて・・・

TVドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」の第6話あたりの話です。

係長・京極(田中圭さん)が、仕事に疲れたヒロイン・義経(吉岡里帆さん)を昼休みに誘い、喫茶店で二人きりのランチタイムをすごすエピソードがありました。

上司があのような形で部下をフォローする事は実際にあって、若い頃の私もしてもらったことがあります。今でもあの時の(若い二人の)情景は覚えていて、感謝しています。

しかし、ドラマの京極係長は、仕事なのに、まるで愛の告白をする様に緊張していたのです。

私はこれがひっかかっていましたが、先ほど観なおして、さらに、その疑念を強くしました。やはり、係長は義経さんに惚れているようなのです。だから、「もっと私に頼っても良いんだよ」というセリフが愛の告白になってしまうので、言えなかったわけです。

その上で、ドラマを俯瞰すると、保護の申請者に①「父親の顔で息子に接近するLGBTの近親相姦」や、②「幼い頃に育児放棄された経験から母の扶養を放棄する息子の揺れる思い」がありました。

両者とも「秘めたる思い」があったのです。

ドラマにおいてヒロインの恋愛は重要課題ですが、だとすると、この第6話の「ヒロインと係長のランチ」はドラマ最大の見どころの一つであり、①②はその伏線として置かれた可能性があると思います。

だから、クライマックスで、①の父親がヒロインに暴力をふるうエピソードでは、京極の怒りはドラマの最大値に達しており、「俺の女に何するんだ」という怒りが裏打ちされていたのだと思います。

ちなみにヒロインは事務指導と告白のダブルミーニングだった事に気がついておらず、ドラマ冒頭の辞令交付式で語られていた通りの性格が証明されたようです。

ちなみに、区役所では職場結婚は多いです。結婚すると夫か妻は別の区役所等に人事異動されるのが普通ですから目立ちませんが。

しかし、上司が直属の部下と恋愛関係になったという話は聞いたことがありません。私が京極係長だったとしても、少なくとも直属の上司でいる間は告白できないと思います。でも、仕事でつまづいた彼女が退職でもしたら困るので、それだけは引き止めたいと思うでしょう。


追記26 2022.12.30 ( お借りした画像は )

お借りした画像は


キーワード「公園」でご縁がありました。映画「生きる」からの言葉です。春にチューリップが咲いている公園は、幸せの象徴のようですね。少し上下しました。ありがとうございました。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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