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主婦よ大学院を目指せ

奥さん、大学院、行ってみません?

私は東大の大学院を出ていますが、英文学ということで、入試(院試)で使ったのは、「英語」「英文学」「フランス語和訳」の3つ。開成レベルの数学も灘レベルの理科も不要で、自分の専門を極めればよかったんです。

なんか、そう聞くと、できそうな気がしてきません?

べつに東大行けって言ってるんじゃないですよ。東大じゃなくても大学院はいっぱいありますし、そもそも大学院は、どの研究室の教授の指導を受けるか、が、いちばん大事なので、大学の「ブランド」や「校風」で選ぶべきものではないのです。その師匠が東大にいるんであれば、赤門まで行って弟子入り志願すればいいのだし、違う大学にいるならその大学へ追っかけにいけばいいのです。

大学(学部)で学んでいたことの続きでもいいし、まったく新たに始める研究でもいいし、いまのお仕事のステップアップのための勉強でもいいんだけど、ともかく、奥さん、大学院、行ってみません?

いきなり大学院はハードル高いかもしれないけど、でもたとえば、放送大学だったら、どうです? それなら時間もお金も都合つきやすいんじゃないかなあ。でしょ? 入試はないし、講座もいろいろあって、どれも楽しそう。私はもともと法律に興味あったので、とりあえず一番初めに著作権をやりました。ちゃんと試験も受けて、単位取得しました。こども、ちっちゃっかったけどね、一度に一科目だけなら、家事や育児とも両立できると思う!

それか、聴講生とか、どうです? 調べてみると、地域の社会人にむけて、講座を開いてる大学、けっこうあるもんです。聴講だけなら、期末試験とか受けなくてよくて、ただ単に興味関心のある講義を聴くだけという。もちろんタダじゃないですけどね。まあ、逆に言えば、せっかくお金払って時間もかけて大学に通ってるのに、単位もらえないんだ、、、ってことにもなるけど、べつに単位が学びの目的じゃないしね! 

私も一時期、我が子をベビーカーに乗せて、近くの大学の講座に通いました。講義のあいだは、学内の託児所でお世話していただけたのですが、こどももいつもと全然違う環境で、いい刺激になってたみたいです。

お子さんが小さいうちは、無理に勉強しなくたっていいんです。こどもが小さい時間って、ほんとあっというまですもんね、一緒にいたいじゃないですか。子育てが落ち着いてからで全然いいんです。今すぐ意識高い生活しろ、なんて言ってるわけじゃないんです。でもね、奥さん、大学院、行ってみません?

先立つものがない! って言われちゃうと思うけど、たしかにね、そこは大きな問題です。でも、その気になったら、断捨離ついでに、家じゅうのモノ売っ払ってお金に換えることはできると思うし。困ったときって、知恵と手を尽くせば、不思議とどこからか臨時収入が降ってきたりするんですよね。それに、そんなことしなくったって、大人が借りられる教育ローンもあります。

「研究」って思うから、なんか難しく聞こえるんですよ。困りごと、ありません? 嫌なこと、あるでしょう? それをなんとかできないかしら、くらいの発想でいいんです。井戸端会議やLINEでママ友にぐだぐだ愚痴ってるくらいなら、いっそ論文にしちゃいなよ、って話です。

「論文」って思うから、なんか難しく聞こえるんですよ。自分の推しについてブログで紹介する文章を組み立てる感じでいいんです。あなたの推しが、たとえば歌手だとして、歌手デビューしたきっかけ、売り上げデータや人気っぷりのわかるエピソード、推しのいいところ、これからやってほしい夢のファンサ。小論文の展開でいうと、「これまでのまとめ、歴史 定義、種類わけ 問題提起 解決策提案」っていう流れになります。

たとえば、私の身内なんですけど、地域のえらいひとに頼まれて、民生委員を引き受けたはいいが、後から後からモンダイが出てくるんですよ、どんな仕事もそうでしょうけどね。報酬的なことってどうなってんの、とか、資格やら国のバックアップやらどうなってんの、とか、ちょっと待ってこれ私つぎは誰に引き継げばいいの、みたいな人手不足の件、とか。そのどれ一つとっても、私たちの社会の問題として捉えて論じるに値する話だ、と、私は見てて思うんですけどね。

お隣に外国の方が引っ越してきた、こんなことがあった、あんなことがあった、からの問題提起でもいいし、国の借金ってどうなんっての、ちょっと家計簿つけたげるわよ、とか、なんでこの石鹸こんなに石鹸カス出やすいのよまったくもう、とか、フードコートに糖尿病メニューあったら楽なのになあ、とか、何かしら、言いたいこと、あると思うんですよ、毎日暮らしてたら。ありません? あるなら、それ持って、大学院、行きません?

ご自分の中の、もやもや、焦り、気づき、そこから、その問題を俯瞰してみるのって大切だと思うんですよ。ひょっとして世の中に同じこと感じてる人がいないとも限らないですからね。「私の考えてることなんて」なんて、思うことないですよ。絶対どこかで誰かが聞いてくれます。

個人的なことは政治的なことである」という考え方があります。誰がなんと言おうと、あなたが一度でもお持ちになった問題意識は社会に通じる。だってあなたは社会の一員だから。私たちがつくる社会だから。

正直、もう学生のときの記憶力とか体力とか、ないとは思います。大学院って、すっごいパワーが要りそうですもんね。現実問題、ちょっと無理、ってなる気持ちはよく分かります。でもね、私たち主婦には、若者にはない武器があるんですよ、主婦なりの。経験とか、実践とか、当事者意識とか。キッズにはない、強力な武器ですよ。

下手したら教授にだってない武器かもしれません。教授はずっとお部屋の中の理論派だから、そこに我々の「でも現実は違います!」っていう一言をぶつけたら、そりゃもう最強です。現実に勝てる理論はありません。そして私たちはばっちり現実を生きている。そりゃもうえぐいくらいに。

大学の先生もそうですけど、企業もね、男性が多いじゃないですか。なんかやらかして記者会見で頭下げてるの、おじさま方ばっかりでしょ。公務員さんは女性の管理職さんが増えてますけど、意外と逆に、民間はまだまだ。そこに私たちが論理や最新技術を身につけて入っていくのって、全然ありだと思うんですよね。違う視点をもたらす。違うやり方を導入してみてもらう。そんなきっかけになるんじゃないかと思うんです。

「リーマンショックは、リーマンブラザースじゃなく、リーマンシスターズだったら起こらなかった」という言い方をすることがあります。そろそろ世の中的に、主婦の物の見方を取り入れてみても、いい頃なんじゃないでしょうか。我々の出番ですよ。ね、大学院、行ってみません?

組織の中でしっかりお仕事こなしている女性もいるし、おうちのことを日々きちんとこなしている女性もいる。どっちがどう、って言ってるわけじゃ決してありません。みんな、持ち場持ち場で、スキルを身につけてきている。問題は、往々にして、それが独りよがりなワザになってないか、ってことです。よくありますね、うちの会社だけで通用するノウハウなんじゃないかって心配になって、転職してみようと思った、とか。

これが一人親方のこわいとこだと思うんですけど、たとえば私の業界でいうと、英会話講師ですね、フリーランスで能力さえあれば働ける。だけど、ときどき、本当にときどきですけど、え?そんな説明しちゃう??みたいなワイルドな文法の解説の仕方の人いますからね。自然な英語って、そういうスラング知ってるかどうかがカギなの?みたいなのとかね。

自分のスキルが、独自に走りすぎていないか、確認するのは大事です。教員資格を持ってる持ってない、とかそんなレベルのことじゃなくてね。自分のやってきたことを、体系化できるか、正統の中ではどこに位置づけられるのか、もし教科書として残せるなら、何をどう説明するか、最新技術を取り入れたらどう改善できるのか、そんな謙虚な振り返りが重要だと思うんです。もう充分キャリアやスキルを確立した自負のある人こそ、大学院、行ってみません?

んんんー、ちゃんとした研究成果、出さなきゃいけないんでしょう? 世の中の役に立つようなこと、しなくちゃいけないんでしょう? って、尻込みする気持ちも、分かります。でも、役に立つって、なんでしょう? 研究の成果って、なんでしょう? 

仮に、いわゆる理系の研究をしている人が、何かの実験をして、失敗したとします。そしたらそれは失敗じゃなくって、「この方法ではうまくいかない、ってことがわかった」っていう結果が得られた、ってことなんですよ。おかげで、ほかの人はもう、同じ失敗を繰り返さなくて済む。立派な道しるべが立ちました。

研究って、みんなで地図をつくっていくようなもの。アナウンサーだった桝さんもそう言ってました。地図つくるんだったら、大勢でわーっとデータ集めたほうが早いし正確。だったら私たちがそこに参加して悪いってことはないはずです。やっぱり、大学院、行ってみません?

最終学歴が高校でも、入れる大学院はあります。大学院は、専門性が武器だから、五教科まんべんなくできる必要はない。そりゃま、広く教養があるにこしたことはないけど、それは大学院に限らない話だし、ぶっちゃけ理想に過ぎないとも言えますしね。一般的に、小論文と英語は、できたほうがいいけど、それだっていま社会人できてる人なら、今から勉強すれば、乗り越えられる。大学院に偏差値なんざ一切関係ありません。

大学卒業してから何年もたっちゃって、勉強習慣ないし、みたいな不安があるなら、いったん、フリーのオンラインコースとか、試せます。東京外語大の講座とか、ハーバード大学のとか! まずはこういうので準備体操してみる、っていう手もあります。

どうです? 悪くないでしょう、大学院。ちょっと想像してみてくださいよ、ご自身が外国の卒業式みたいな黒いマントと博士帽で立ってるところ。それは理論と実践を融合させた、社会の問題解決への第一歩、を具現化した姿。未来の世界に何かを残すことができた、目に見えない宝の象徴です。

そんなこと家族に話したら、は?何言ってんの、ってバカにされるかもしれない。けど気にしちゃだめです。その人が大学院いくわけじゃないんだから。自分でもバカじゃないかって思うかもしれない。でもそれも気にしちゃだめです。これまでの自分が脳内で現状維持を望んでるだけだから。自分が自分を信じなくて、これから先のハードモード社会、どうします。

身の回りが、社会が、世界情勢が、自分が、いまこういう状態なのは、誰かが、これでいい、と思っちゃってるからです。現状を認めちゃってる。あなたが、そう思ってる。このままでいいシステムも、たくさんあります、軍事独裁政権よりは民主主義のほうがいい、とかね。でも、いっこでも、あーいやだいやだ、と思うことあるなら、抱えてるままじゃだめです。何かしましょう。その一つが、ボランティア活動かもしれない、NPO立ち上げかもしれない、ダイエットかもしれない、習い事かもしれない、大学院進学なのかもしれない。

主婦だのなんだの、男だ女だ、うるせえフェミニストだな、高校だ大学院だって、ただのエリートじゃんかよ、金がねえって言ってんだよ、はいはい東大ねどうせ上級だろ、って、いらっときたあなた。今、そうです、まさに今、あなたの安定していた世界に、新しい未知の異質の他者が入り込んできたのです。またとない止揚の機会、これぞ思考の始まりです。反論したいでしょ? 論破したいでしょ? 大学院、行ってみません?

感情で話しちゃだめだ。自分語りで終わらせてもだめだ。知らんけどで済ませるな。人に勉強しろって言っといて自分は勉強しないだなんて。じゃあどうする。それを教えてもらえるかもしれない。それとも全然教えてもらえないけど、自分で探る時間と環境なら、与えてもらえる。何度でも言います、個人的なことは政治的なこと。あなただけの問題を、一般化、普遍化してみませんか。

主婦が大学院めざすなんて、って言われたとして、それがなんだっていうんです? 主婦の大学院進学率が高いかどうか気にするなんて、そんな国、ないでしょうよ。でも、ありえないことで、前例のないことで、現状の諸々を突破するからこそ、我々の世界は発展していくのです。やってみようよ! どうやらこの国は落ち目のようだ。子供たちに申し訳ない。だけどそこを誰かに任せたままじゃいけません。あなたにもその力がある。

大学院、行ってみません?




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