蒼月海里

小説家兼シナリオライター。仙台生まれ千葉育ちの元書店員。2014年08月デビュー。6年…

蒼月海里

小説家兼シナリオライター。仙台生まれ千葉育ちの元書店員。2014年08月デビュー。6年で著作50冊ほどを刊行。 『咎人の刻印』『幽落町おばけ駄菓子屋』『幻想古書店で珈琲を』『稲荷書店きつね堂』『水晶庭園の少年たち』『怪談喫茶ニライカナイ』『怪談物件マヨイガ』など。

マガジン

  • この浜辺でキミを待つ。

    カウントダウン式連載小説。 見知らぬ浜辺で目が覚めた少女の物語。 機能停止まであとXX日。

  • 書き下ろし小説

    蒼月海里のきまぐれ書き下ろし小説。

  • 新刊情報

    蒼月海里の新刊情報など。

  • 筋肉をつけたら家を買っていた

    個人事業主がおうちを買うエッセイです。完結しましたが気まぐれに後日談を書くかもしれません。

  • 作家生活

    小説家としての話題。

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蒼月海里の著作(2024/6/28更新)

■新刊情報『海風デリバリー』(2024/6/7発売) 『星屑鉄道の鉱石カフェ』(2024/8発売予定) ■参加イベント「ミステリカーニバル vol.2」(6/25 第2ターン) ■連載中『夢魔は女子がこわい』(原作担当) ■寄稿『少女文学別館二号』(短編寄稿)(『文学フリマ東京38』にて頒布/通販有り) ◆著書一覧◆■咎人の刻印シリーズ(小学館文庫キャラブン!)吸血鬼/殺人鬼/ダークファンタジー/異能バトル/コミカライズ・舞台化 『咎人の刻印』(2020年04月)

    • この浜辺でキミを待つ。【11日目】

       燦々と降り注ぐ太陽の光が、シロの視界を照らした。 「うう……」 「目が覚めたか。再起動できてよかったよ」  聞き覚えがある低い女性の声が聞こえる。シロのすぐそばには、白衣をまとった壮年の女性が座っていた。 「わ、私、死んじゃったはずじゃあ……!」  シロが飛び起きると、女性は苦笑した。 「そんな大げさなものじゃない。燃料不足でスリープ状態になっただけだ。燃料を詰めて再起動したし、腕も繋いでおいたぞ」  女性に言われ、シロは右腕を見た。ひしゃげた痕は残っているものの、腕はし

      • この浜辺でキミを待つ。【10日目】

         声の主は『ハカセ』といった。  ハカセは明日、シロが目覚めた浜にやってくるという。  つまり、ハカセはシロの境遇を知っているということだ。そうでなければ、シロが浜で目覚めたことも、その浜がどこなのかもわからないだろう。 「私のことがわかる人が来る……!」  シロはそのことが嬉しかった。  だが、それ以上に、話し相手が現れることが嬉しかった。  アクアが沈黙してから、シロは孤独を味わっていた。どんなに空が晴れていても、心の中はずっと暗雲が渦巻いていたのだ。 「ハカセを歓迎

        • この浜辺でキミを待つ。【9日目】

           翌日は快晴だった。  雲一つない青空で、開けた窓から入り込む潮風は爽やかであった。  日差しが射し込む中、アクアの骸は横たわったままだった。毛布を掛けられ、宝物を周りに置かれたままだ。 「これから、どうしようかな」  今までは、アクアとなんとなく目的を決めていた。しかし、今はそれすらできない。  アクアと出会う前はどうしていただろうか。 ひとりだった頃が、ひどく遠く感じられた。 「この島に住んでいる人、探してみようかな。でも、みんな眠っているかも……」  結晶に覆われてい

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        蒼月海里の著作(2024/6/28更新)

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        • この浜辺でキミを待つ。
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        記事

          この浜辺でキミを待つ。【8日目】

           シロは海岸線を歩いていた。  行きは二つだった足跡だが、帰りは一つだった。  アクアのつけたクローラーの跡は、波と潮風ですっかり消えていた。  アクアのボディを抱え、ショットガンを背負い、シロはただひたすら歩を進めた。 「どうすればいいんだろう」  シロは目的を見失っていた。  島に何かがあったらしいということ。  地下室で眠っている人。突然変異したとしか思えない巨大なモンハナシャコ。そして、彼らがまとう不思議な結晶。  新しく明かされた事実はあるのだが、その裏に隠された

          この浜辺でキミを待つ。【8日目】

          この浜辺でキミを待つ。【7日目】

           町の片づけをしていたら、いつの間にか夜になっていた。  没頭しすぎていたらしい。シロは懐中電灯を手にして、すっかり綺麗になった大通りを見渡す。「これでよし、と」 「お陰サマで町はキレイになりマシタ。ご協力感謝しマス」  アクアは器用に頭部を下げる。電子的な声も心なしか嬉しそうだ。そんな様子を見ると、シロもまたココロの中が温かくなる。 「戻ろうか。すっかり遅くなっちゃったし」 「今日もホテルに行くのデスカ?」 「うん。ここからコテージは遠いし」 「アノ場所はお掃除のし甲斐が

          この浜辺でキミを待つ。【7日目】

          この浜辺でキミを待つ。【6日目】

           元のコテージに戻るのはひと手間ということで、シロはアクアとともに港のホテルに泊まった。  ホテルから出ると、今日も曇り空がシロを迎えた。 「ここが第二の家みたいになってるね」 「別荘というものデスネ」 「別荘! それ、いいね!」  シロは目を輝かせる。  そろそろ太陽が恋しくなっていたが、天候はどうにもならない。雲の切れ間から日光が差さないかと期待しながら空を見上げつつ、シロは港町へと戻った。  昨日、大通りや幾つかの店の中を片付けたので、探索はしやすくなっているはずだ。

          この浜辺でキミを待つ。【6日目】

          この浜辺でキミを待つ。【5日目】

           翌朝も、空はどんよりと曇っていた。  雨は止んでいたので、シロはホテルから飛び出した。 「誰もいなかったね」 「生命反応ゼロ、デスネ」  シロの言葉に、アクアもまた頷く。  ホテルには、あらゆるものが揃っていた。  頑張って探せば埃をかぶっていないベッドもあったし、柔らかさを失っていない毛布もあった。倉庫には保存食もあったし、懐中電灯もあった。シロはホテルにあった非常用持ち出し袋にそれらを詰め、その場を後にする。  ホテルの中には誰もいない。電気も通っていない。廃墟だった

          この浜辺でキミを待つ。【5日目】

          この浜辺でキミを待つ。【4日目】

           雨が通り過ぎた翌朝、海岸はいつもよりもキラキラと輝いているように見えた。  シロはヤシの木に朝の挨拶をしてから、アクアとともに海岸線を往く。  干潮の時間を見計らって崖下を超え、昨日残骸を避けた場所を通った。  木材や鉄パイプなどの残骸からは、雨水が滴っていた。積み上がった残骸の上から雫が落ちてくるので、シロの髪はすっかり濡れてしまった。 「うう……。雨じゃないのにびちょびちょ……」 「足元に気をツケテ」  アクアはクローラーで湿った砂利を踏みしめながら、昨日の注意を繰り返

          この浜辺でキミを待つ。【4日目】

          この浜辺でキミを待つ。【3日目】

           翌日、シロは港を目指すことにした。  アクアを引き連れて砂浜を往く。シロの足跡とアクアのクローラーが、水鳥の足跡だらけの砂浜に軌跡を残した。  シロはこの日も、人の姿を見かけなかった。  青い空と白い雲。そして、アクアが掃除してくれている美しい砂浜があるというのに。 「港まで五キロって言ったよね。それって遠いのかな。近いのかな」 「距離は遠くありマセン。しかし、隣の浜は瓦礫が多いのデス」 「へぇ~」  通行するのが難しく、アクアはその瓦礫を片付けるのに苦労しているという。

          この浜辺でキミを待つ。【3日目】

          この浜辺でキミを待つ。【2日目】

           シロが目覚めると、すっかり日が昇っていた。  カーテンのすき間から射す朝日は眩しい。  シロはベッドからのそのそと這い出て、寝室をのろのろと後にした。 「わぁ……!」  リビングのハイサッシ越しに、朝の海がシロを迎えた。  青い海と空。白い波が白い砂浜へと穏やかに打ち寄せる。ハイサッシで大きく切り取った海の姿は、絵画のように美しかった。  シロは朝食を終え、コテージを飛び出す。 「おはよう!」  シロの挨拶に、ヤシの木がそよぐ音が応える。  コテージの裏手には、ヤシの木が

          この浜辺でキミを待つ。【2日目】

          この浜辺でキミを待つ。【1日目】

          あらすじ1日目 シロが目覚めたのは砂の上であった。  頭上には青空が広がり、太陽が燦々と射している。  すぐ近くから寄せては返す波の音がした。  海だ。 「私、どうしてここに?」  身体を起こすと、自分の肌についた砂がぱらぱらと落ちた。絹糸のように白い髪が海風に揺れる。  自分がいる場所は、穏やかな波が打ち寄せる砂浜だ。陽光を受けてキラキラと輝く浅瀬では、カモメが呑気に浮かんでいた。  疑問に答える者は、いない。  自分が「シロ」と呼ばれていたことは辛うじて思い出せるのだ

          この浜辺でキミを待つ。【1日目】

          「海風デリバリー」発売と今後の展望

          本日6月7日、久々の新刊である「海風デリバリー」が発売となった。 美しすぎるカバーイラストは、蒼月が大変お世話になっている六七質先生が手がけている。 都内某所の風景に架空の建造物を置いた上でアレンジして頂いているのだが、現実と架空を見事に馴染ませてくれた。 実際の場所もまた違った味わいがあるので、本作をお読みの方は是非とも現地にも来訪して頂ければと思う。 本作を執筆したのは、新居に引っ越しをしてからだ。 海の近くに家を買い、自転車を走らせて海に行けることに感動しながら書いた

          「海風デリバリー」発売と今後の展望

          カーテンをさがして三千里

          我が家のクソデカ窓を紹介するぜ! 我が家に、ついにカーテンがやってきた! 断っておくが、引っ越してから約7カ月間、カーテンなしで生きてきたわけではない。 売主さんが残していったものを使わせて頂いていたのだ。 売主さんの粋な計らいに感謝カンゲキ雨嵐なのだが、残していくのにも理由があったことだろう。 なにせ我が家のLDKの掃き出し窓はバキバキのハイサッシで、カーテンの高さは2.4m以上必要なのである。 このクソデカ窓に合わせるには、基本的にオーダーカーテンしかなく、しかも、引

          カーテンをさがして三千里

          筋肉をつけたら家を買っていた⑪【個人事業主、住宅ローンを組む】

          私が住むべき場所はここだ!不動産屋Kさんに案内されて、内覧したい物件に向かった。 家主さんがご在宅なので、人が住んだ時のリアルな感じやマンションや周辺環境の雑感も聞けた。 お部屋自体は、メリットもあればデメリットもある。非常に悩ましいところだった。 一番気になったところは、日当たりが悪いところだ。 お部屋を後にし、日当たりがよければ……とぼやく私に、Kさんは「どうしてもそこが引っかかるのでしたら、やめた方がいいかもしれません」と背中を押さずに冷静なアドバイスをくださった。信

          筋肉をつけたら家を買っていた⑪【個人事業主、住宅ローンを組む】

          舞台『咎人の刻印〜レミニセンス〜』を終えて

          舞台『咎人の刻印』第二弾は、1/28の大千穐楽を以って閉幕となった。 完全オリジナルストーリーでオリジナルキャラクター満載で……というのは初だったため、何が飛び出すかわからない感があったのだが、蓋を開けてみれば、とてもいいエンターテインメントになっていた。 『咎人の刻印』のテーマを、脚本・演出家さん(中島庸介さん)なりに上手く落とし込んでくださっていて、メディアミックスとしての広がりを肌で感じられた。 今回のキーキャラクターである蘭(彩凪翔さん)と謎キャラクターである??(

          舞台『咎人の刻印〜レミニセンス〜』を終えて